ルララ宇宙の風に乗った

新型ウイルスの蔓延からこちら、たくさんの当たり前が崩れた中でそれでも日常生活を送ってきました。
多かれ少なかれ誰もが影響を受けていることと思いますが、幸いにしてわたしの働いているところはその影響が少ないほうであるため勤務体制の変化等はあったものの自分の生活が困窮することもなく暮らしてきました。
旅行は好きだけど日常ではインドア体質だから家にいることは全然苦ではないし、自分が食べていける程度の糧を得られていることはまだ幸せなんだから。
もっと大変な人はたくさんいるから。仕方ないことだから。
そうやってじっと、気づかないうちに色々なことを我慢していたような気がします。

何かを諦めることにもう慣れちゃったのかな、なんて思っていた頃、わたしがこよなく愛するスピッツ(バンドの方)が中止になったツアーに替えて新たなツアーを決行することを発表しました。
アリーナとはいえ観客数を減らしての開催となるとチケット取るのは難しいかな…と半ば諦めつつ先行抽選申し込みをしました。
取れました。
まじか。
まじだ。。。
2021年6月18日金曜日は、記念すべき「わたしが再び直にスピッツの音楽を聴くことが出来た日」となったのです。

心待ちにしながらも実感は薄かったその日をついに迎え、早退をキメて華麗に退社し会場であるぴあアリーナMMへ向かいます。
来場者登録、検温&消毒というこれまでのライブにはなかった手順を踏んでから入場、その際に初めて席が分かる仕組みです。
スタッフのおねえさんにバーコードを読み込んでもらってペラッペラの座席券を受け取りました。
「アリーナ5列〇〇番」
…?
……!?

ごれつ

ご、ごれつ…??

ちょっと何おっしゃってんのか分かんない、状態で席に着きました。
え、良すぎるんですが…一生分の運使い果たしたか…?と思いつつ開演を待ちます。
自分の席にはフライヤーの入ったビニール袋が、両隣の席には「この座席は使用できません」の紙が貼られています。
このライブを開催するのにどんだけの人が関わってどんかけの労力を割いてくれたんだろう。
これまでのライブだって全席にフライヤーは配布されていましたが、金を払ってやってくる観客に配布するフライヤーを置くのと、誰も座らない座席に貼り紙をするのでは実際にかかる労力に大差はないとしても、それでも根本から違う作業であるとわたしは思っています。
開演前から全方位にまじ感謝。
することもないので本を開きましたが、文字は上滑りするばかりでまったく内容が頭に入ってきません。
こんな時にミステリ小説を読もうとするもんではないという学びを得ました。
え、5人組でスノボ行ってうち4人が遭難、で他殺体で見つかったのが後藤で…え、下村は見つかってないんだっけ?ハァーまったくわかんね、と思いつつとりあえず文字列を眺めて開演を待ちます。

非常灯が消え、開演の兆しです。
前だったらこの時点で観客たちが拍手しながらバーッと立ち上がっていたけれど、あれ、立っていいのか…?みたいな周りを伺う気配が蔓延しました。
が、1曲目の前奏が響いた瞬間にワーッて喜んで人々が立ち上がりました。
ここでいう「ワーッ」は歓声ではなく雰囲気です。
なぜなら声を出すのはだめだから。でもめっちゃ人々が喜んでるのが分かった。
最初の1曲目は本当に、まあなんて今日この日にお誂え向きな。響き方が尋常ではなかったです。
はわわ、スピッツだぁ…と思っているうちにツアーのメインであるアルバム『見っけ』からの曲を中心に、ちょっと前の曲も織り込みつつ次から次へとステージからは音楽が降り注いできます。
初めて直に聴く曲はちょっとびっくりして嬉しかったし、ひとりでオフィスに残ってるときによく歌ってる曲なんかは本物を聴いて泣けてきてしまった。

曲間に口を開けばいつものスピッツで、
「乗ってみたいロープウェイがドイツにあって、畑の上をずっと通ってる…」(みなとみらいにロープウェイが出来たことから派生して)
だの
「チリにね、南米にチリってあるでしょ、いいホテルがあるんですよ…大きな窓があってね、パタゴニアの風景が…」
とか国境を越えた情報を発信いただき最高でした。
またベーシストが
「もしかしたら完全に元通りにはならないこともあるのかもしれないけど、でも方法を模索してスピッツはライブを続けていきます」
とかめちゃくちゃいいこと言ってんのに
「セットに穴があってね、いつもその穴から出てくるんだけど、サバンナのミーアキャットみたいな…穴から出てきてまた穴に帰っていくのがね、ミーアキャットみたいだなって思ってました」
とか自分たちをミーアキャットに例え始める炎のドラマーが本当に最&高でした。

今回チケットを取れたのは「行きたいけど行けない」と申し込みをしなかった人が多く通常に比べて倍率が低かったことも大きいかと思います。
そんな人たちにも思いを馳せた
「来たいけど来られなかった人たちが来られるようになるまで頑張って続けるから、みんなも頑張って、生きてね」
という言葉がほんとにスピッツだった。

いつになるのか分かりませんがまた次の機会を楽しみにしているし、そのころには今回を諦めた人たちも心置きなく楽しみに待つことが出来るようになってればいいなと思います。
生きる力を得た。
スピッツは宗教。

おわり

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