【2020何を考えていたフェア】感染症──広がり方と防ぎ方 増補版(中公新書) コメント:図書新聞 須藤巧さん

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井上栄 著
ISBN 9784121918772 本体価格820円+税 2020年4月 発行

これ以上に時宜を得た増補版の出版があるだろうか。オビに「正しい予防法とは何か」とある。新型コロナウイルスに罹患してから「どうしよう」と考えるのではなく、あくまでその「前」にどうするか。個人としての行動のみならず、社会として、国家として、もっと言えば「文化」としてどう対応するか。そこが重要なのは、何も今回の「災禍」に始まったことではない。いま、心の平静が乱されている人に、特に本書を推薦したい。著者も「心を静める」目的で本書を書いたという。また、ウイルスや感染症への対策は「公衆衛生」という言葉もあるように、文字通りの「国家事業」であるが、「国立感染症研究所名誉所員」の肩書きを持つ著者の行間からは「国家」の威光が明滅する。そして何より、二〇〇六年段階での著者の提案が、「新型インフルエンザ発生時には、政府が無料マスクを国民全員に配る」であることに瞠目する。
(図書新聞 須藤巧さん)

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