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【ライブレポート】梅田サイファー『トラボルタカスタム』&『Never Get Old』東阪福 RELEASE TOUR 2019 at 渋谷WWW

全文公開の投げ銭スタイルです

2020年、日本語ラップシーンにおいて梅田サイファーの存在を無視できるだろうか?
2019年1月にリリースされた『Never Get Old』は既に完売し”マジでハイ”のyoutube再生回数は現在460万回を超える爆発的HITとなり日本のHIPHOPシーンに衝撃を与えた。8月にリリースされた『トラボルタカスタム』に関しても現在入手困難となっており、2019年の梅田サイファーのライブ活動は大阪だけでなく日本各地で積極的に行われた。梅田のあの歩道橋でサイファーを始めた日から約12年が経った、一人一人が積み上げてきたものの結果として手に入れた2019年の躍進であり、日本全国にその名と実力を知らしめた1年となった。
その締めくくりとも言える東阪福 RELEASE TOUR 2019 at 渋谷WWWでの模様をレポートする。なお、2020年2月8日UMEDA CLUB QUATTROでの追加公演も決定している。


一曲目は”トラボルタカスタム”全身黒づくめのKennyDoes、ふぁんく、KZ、KBD a.k.a. 古武道、テークエム、KOPERU、peko、R-指定、コーラ、鉄兵、OSCA、tella、ラード、DJ SPI-Kがステージを埋める「渋谷調子どうだ!一緒に行こうぜ」とKennyDoesが会場を煽りWWWの盛り上がりは1曲目から沸点越えの状態となる。

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歓声は更に大きくなり「脳天HEADSHOTしてやるよ」 とテークエムの声を皮切りに”HEADSHOT”、止まる事なくKZとふぁんくの”Runnin’”へ。勢いはそのまま「行くぞ渋谷!」と沸き立たせるKZを、KOPERUとR-指定が止めに入る。
KOPERU「上がるのはわかります」
R-指定「わかるよ」
KOPERU「はじめてやん、こんなに、梅田サイファーでこんなおっきいとこでやるの」
R-指定「しかも大阪の俺らが、東京や…渋谷や…、こんだけ集まってパンパンなってんねん、そらあもうお客さんもめちゃくちゃ盛り上がってもらって、俺らも気持ちが高ぶってRunnin’、ガンガン走ってしまう気持ちもわかるけど」
KZ「そうよ?走り続けようや!」
KOPERU「でもラップも走っちゃダメじゃないですか」
KZ「あ~リズムよくみたいな?」
KOPERU「うん、リズムよくやっていかないと」
R-指定「年末、事故多いんでね」
KZ「結構こっちの方ではあおり運転がなんだって聞くけど…」
R-指定「聞くところによると関東はドリフトが多いって聞くな…でも我々大阪は安全運転でいきましょうか…俺らは安全運転で大阪からきたけど渋谷のお客さんは思いっきり危険な盛り上がり方してください!3、2、1、GO!」”OSAKA ANZEN UNTEN”

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梅田サイファーのエンジニアリングや、サウンドを手掛けるCosaquが警察官役で登場。「いやいや、それはわかってんねんけど君ら免許見してもらっていいかな」と楽曲の中にもある梅田サイファー仕込みのショートコントが始まる。KennyDoes、KOPERU、R-指定が「いや…あの…別に…」と尻込むがCosaquは「安全運転してたんでしょ、免許見してもらっていいかな」とKennyDoes、KOPERU、R-指定を順番にいじり、会場が笑いに包まれる。そして、Cosaquによる車内点検でDJブースの奥底から見つかったのは──────ILL SWAG GAGA

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Cosaqu「ちょっとこれ、みんなにちゃんと説明しなさい、えらいもん積んどるのう」
R-指定「あの…東京でだめって知らなくて積んできたんすけど、もう一人おったんすけどね。簡単に言うとね…これ薬物なんですよ…人の形してますけど。俺ら大阪から車飛ばしてせっかく運んできたんで、後で罰でもお叱りでもお巡りさんから受けるんで、今日だけはみんなで、この極上のネタWWWの皆さんと一緒に一服したいと思うんですけど大丈夫ですか?」続いて吸い方を説明する「光が当たってるところよりも、真っ暗な方が効能が出ます、ちょっと照明さん、真っ暗にしてください。そして皆さんが持ってる携帯のライトで照らしてください。光を吸収して、聴いたことのないような音、言葉をこいつが吐き出します。みなさんは思いっきり何も考えずに深~く肺の奥まで吸い込んでください、そしてゆっくり吐き出してください。コレが大阪名産ILL SWAG GAGA」"New Basic Case.2”
「吸って〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」一人一人の光が大阪名産の危険なブツ ILL SWAG GAGAを照らした。

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ステージ照明がつくとpekoのビートボックスがはじまる
テークエム「全然あきまへんわ、そもそもね、薬物に頼る奴は弱いんです、フィジカルが。」
KZ「鍛えなあきまへんわ」
テークエム「渋谷のお客さん、大阪の僕らのノリに乗り切れてない」
KZ「ライブは汗かいてなんぼやと思ってるから、俺。みんな年末やからボディライン気にし出したんjdsbcvcjsbvk」
R-指定「…KZさん吸いすぎたんすか?」
KZ「吸いすぎたわ!(笑)」
R-指定「確かに今変なもんを東京のお客さんに吸わせてしまった。一回、思い切り動いて汗でその毒素発散してください」
テークエム「ボディーライン気にして痩せたい女子どんくらいおるんすか!」
KZ「体シェイプアップしてマッチョになりたい男子どれくらいいますか!」
テークエム「じゃあ梅田流で教えてあげましょう」
KZ「Kenny軍曹に…ブートキャンプで…!」
KennyDoes「声出す準備できてっか!」
”Kenny’s Boot Camp”

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熱気で会場丸ごと揺さぶられたまま"ゼンボーレノン”へ。「いい風吹いてきてるんで、その風乗って、風向きって感じでいきましょう」(KennyDoes)"風向き”、「風向きが変われど、変わらねど、俺たちの音楽は死なねえデスプルーフだぜ」(KZ)"デスプルーフ”

「昔、梅田でスタートした時はこんなに大勢の前でライブするなんて思ってませんでした。でも、ずっと変わらないこと、それはラップがただ好きで、やり続けてる。それを突き動かすのが俺たちの衝動」(peko)"衝動”、規模が大きくなり続ける中でも、彼らの根本にあるHIPHOPに対する想いやラップへの姿勢が変わらない事を実感させた。

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ステージ上はまた表情を変え「クラシッククラシッククラシック…」(テークエム)”THIS IS CLASSIC”

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続いて鳴り響くは"Black Pepper Mill"
テークエム「Japidiotだぜ!…………Japidiotってな~に?」
OSCA「まぁ…」
テークエム「Japidiotは概念!!!」
OSCA「え、何?大喜利?」
テークエム「Japidiotはtella、OSCA、テークエム、teppei、で、そこの変な髪色のデザイナーHATCH!この5人組でやってるグループです。マジでハイのリミックス、ジャピでハイってものを作ってるんで期待しててください、ということで2020年もJapidiotよろしくお願いします!」Japidiotが見れて嬉しかったとの声はとても多かった。

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「ハタチの頃、正解ばっか選ぼうとしてたんすよね。右行くか左行くか真っ直ぐ行くか戻るか、どっちが正解なんか不正解なんかずっと考えてて、最近ちょっと年とって変わってきて、何選んでも正解やったって胸張って生きれるようにせなあかんなって思うんすよね。今日も多分、東京大きい街なんでいいパーティーやってると思うんすよね、大好きなラッパーが追加公演やってるのだって俺ら知ってるし、でもこんな年末のクソ忙しい時に遠い町から来た俺らを選んでくれて本当に俺ら嬉しいなって話してました。会えてよかったです、ほんま会えてよかったです。遅くないっすね、ほんま遅くないっす。今はもうみんな忙しくなってなかなかサイファーできないっすけど、10年近く歩道橋に毎週毎週行ってて、色んなラッパーがきたけど、今でこそ思うんすよね、どの夜もどの夜も選択やったって。ラップしてる時間選んでよかったなって、今日めっちゃ思ってるっす。今日はちょっと全員とは言えないっすけど、東京で、この曲やりたいなと思って。今日のこの夜も俺らにとっての分岐点なんで、聴いてください。」(KZ)"分岐点”

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そして一度全員袖口へ履ける、真っ暗なステージの真ん中にピンスポットライト。《憤る事なんて筋違いでしょう きっと引き止める事なんて出来なかったあの夜を》"エピソード" 梅田サイファーの一人一人にとって特別な曲であることだけは間違いない。次の曲を控え袖口で待っていたKBDが「一緒に来たかったな」と小さく呟いたのも印象的であった、それは梅田サイファーの総意なのだろうと思った。

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そして”決意”に続く。歌う彼らの感情は声色から充分に伝わったことだろう。

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決意のビートの中KZは語る「俺らは決意した。2、3年前俺らは決意した、梅田サイファーってほとんど誰も知らねえR-指定しかいねえって言われてた、あそこから俺たちは決意した。今年1月マジでハイをだして、8月にトラボルタカスタムだして全国のみんなと出会うって決めて、俺たちはライブし尽くした、来年2月8日俺たちの大好きな土曜日、場所はUMEDA CLUB QUATTRO。新曲も持ってくから、よかったら一緒に遊んでくれると思ってるんだけど渋谷どうすか!」惜しみない歓声が飛ぶ。
「俺らは決意したんだよ、この道の先にある高みに行くって」(KZ)”道の先にある高み”
彼らの過去、彼らの決意、彼らの今この瞬間が梅田サイファーの力強さを物語っていたように思う。

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一人一人の手にグラスが運ばれる。一人分ドリンクが足りないトラブルもあったが「みんなもドリンクないし、俺とエア乾杯しよ」とKennyDoesが気を利かせ、乾杯へ「まとめますと、ラップし続けて喉乾いてます、ここで出会えたみんなと俺らは今日、乾杯したいと思います。そして今日という日に、出会いに、そして梅田サイファーの次の飛躍に向けて…みなさん本当に集まって頂いてありがとうございます」(peko)と乾杯。
そしてスーッと前にでるKOPERU「コレがね………………Glassです。」”Glass”

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「宴もたけなわですが、最後の曲です。」KennyDoesが浜田省吾のモノマネを披露しつつ、浜田省吾=エヴァンゲリオンという独特の方程式も生まれたところで「エヴァンゲリオンと浜省に捧げます、Never Get Old」(KennyDoes)"Never Get Old"

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最後の曲が終わり、鳴り止まないアンコールの中、スクリーンが静かに降りる。“梅田ナイトフィーバー’19”のMVが先行公開され、会場は興奮で揺れていた。MVが終わりスクリーンが上がると、MVの中で着ていた野球のユニフォームに身を包んで現れた。

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MVの裏話や、梅田サイファーはmixiとモバゲー産という話、現在のたまこぅについて、KZの最新MV"that’s it”の見所、ILL SWAG GAGAの新曲MVでの裏話などに触れたあと”梅田ナイトフィーバー’19” 会場の熱気も上り詰め、hookでは会場にいた全員が笑顔と共に大きく手を降っていた。

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KZ「梅田サイファーはライムが好きなんですよ。韻好きな人どれくらいいます?」会場からは大きく声が上がった
KZ「お前ら最高やな!」
KennyDoes「お客さんみんな韻好きでしょ、そういう所からインスピレーションもらってるんですけどね」
KZ「韻の良いところはありえない言葉が繋がって行くところ。俺とdoikenが2人で奈良のdiojさんのところでアルバムを作っててdoikenが『コンビネーション』で韻踏みたいってなって、diojさんは全くラップしない人やけど、たまには韻踏んでくださいよって言ったら『コンビニのジョン』って言ったんですよ。」
KennyDoes「誰やねん、ほんま」
KZ「それでRと曲作りたいってなった時に、3人で熱いこと言ったりスキルフルなラップしたりするのも良いけど日本語ラップ優等生の俺らからしたらスチャダラパーとか、RHYMESTERのプリズナーNo.1,2,3とか、グッド・オールド・デイズとか好きなんですよね。」
R-指定「ストーリーテリングな、で俺ら3人でも作ってみましょって話になって、コンビニのジョンっていう人間を主役にして曲作ったんですよ。だから本来なら存在しないような人間・コンビニのジョンのバックボーンを俺たちが勝手に考えて、ジョンと俺たちが友達やったという作り話を。ストーリーテリングというのはそういうこともできるんです」
KZ「人と人との出会い、そして別れを歌っためっちゃハートフルな曲になってるんで」
R-指定「聞いたら、ジョンのこと微塵も知らないけどなんか懐かしく思うと思う」
“コンビニのジョン”

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合間のMCではそれぞれの学歴の話になり、各々の過去を振り返りつつ「10何年やってここまで来てるんすよ、なんやかんや。急にポーンって行ったって思われるかもしれんけど言っても頑張ってるんす。頑張ってるっていうか、とにかく好きでい続けたんです、僕ら。好きこそ物の上手なれなんです、まじ。だから好きの気持ちを続けて行こうって。梅田サイファーで初めて好きの気持ちを共有する仲間を見つけました。そんな仲間と作った曲があるんですね、今ここはまだ途中のストーリーです、中盤戦です。僕らの始まりのストーリー聞いてください。」(ふぁんく) ”始まりのストーリー”

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そしてJapidiot”Nighthawks”体調不良によってteppeiが不在となってしまったが、その想いまで組んだようにtella、OSCA、テークエムでの”Nighthawks”はとても力強く、会場を魅了していた。

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衣装は、真っ赤なつなぎにチェンジされた。「渋谷まだ終われへんぞ!最後の最後、マジでハイになれますか!」(R-指定)”マジでハイ”《ステージとスピーカーペン先とペーパー マイクロフォンとビーツでどこまでもHigher ステータス、フェイマス 札束のジェンガ、金ピカの王冠 無くたって王者 トレンドセッター ミスターファッショニスタ メリケンラップの翻訳はいいや メリケンサックなライムでビックペイバック I’m a レペゼン 梅田No'1 player》シンガロングが巻き起こり、WWWの興奮を最高潮へと導き、最後の最後まで熱狂させ続けた。

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RELEASE TOUR 2019.12.28 at 渋谷WWWは、2020年さらに加速していく梅田サイファーの実力と存在意義を知らしめた分厚いライブとなった。

photos by Hiroya Brian Nakano

【セットリスト】
1.トラボルタカスタム
2.HEADSHOT
3.Runnin’
4.OSAKA ANZEN UNTEN
5.New Basic Case.2
6.Kenny’s Boot Camp
7.ゼンボーレノン
8.風向き
9.デスプルーフ
10.衝動
11.THIS IS CLASSIC
12.Black Pepper Mill
13.分岐点
14.エピソード
15.決意
16.道の先にある高み
17.Glass
18.Never Get Old

(アンコール)
1.梅田ナイトフィーバー’19
2.コンビニのジョン
3.始まりのストーリー
4.Nighthawks
5.マジでハイ

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