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アマチュア8耐ロングインタビューvol.1 基本のキ

好き物だけが集まる気が触れたパーティー・アマチュア8耐──。
8時間ぶっ通しで、DJ pekoが日本語ラップでフロアを踊らせ続け、サイドMCを務めるKZがフロアを肯定し続ける。

時は来た、待ちに待った一度限りの復活。
2019年11月23日恵比寿Baticaでは、一体どんな8時間が生み出されるのか。伝説のパーティーに先駆けてpeko、KZへのロングインタビューを敢行。
アマチュアナイトが始まったきっかけや名前の由来、良いDJ悪いDJとは何か、サイドMCの役割とは何か。梅田サイファーが積み重ねて来た蜜月の時間を振り返り、アマチュア8耐の意味を知る。日本語ラップへの愛と誇りが詰まった貴重なロングインタビューをお届けします。

アマチュアナイト、名前の由来は?

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──アマチュア8耐の名前の由来はなんですか?

peko「そんなに具体的には覚えてないですけど、俺がやってる黒衣ってグループが主催で始めたのがアマチュアナイト。そもそもアマチュアナイトを始めたキッカケから話すと、アメ村でデモ配ってライブさせてくれって活動してたんですけど、ライブ出るたびにもれなく10枚くらいノルマつくんですよ。でもね、正味、俺ら以外全員ダサいなって思ってて。全員ダサいのにノルマ渡されて…ばりだるい………で(笑)じゃあもう自分らだけでやったらいいんちゃう?って感じで、当時のNOONの店長に相談して」

──もともと店長とはお知り合いだったんですか?

peko「そう、ここには高校生くらいの時から来てたから、知ってもらってて。当時の店長にこうゆうことやりたいんすけどって言ったら「うちで平日やったらええよ」ってとんとん拍子で決まって、俺らも、何からやったらいいかわからんかったから、とりあえず相方と集まってイベント名決めようって、お互い20個ずつくらい案を持ち寄って。ばりダサい名前もあったなぁ」

──どんな案があったんですか?

peko「RIP SLYMEのSTEPPER'S DELIGHTから取ろうとか、ビルドアップみたいな「こっから行くで」みたいな(笑)
そういうめっちゃダサい名前がたくさんあった中で、1時間くらいに及ぶ話し合いで全部ないなぁってなって。
で、いきなり相方が「アマチュアナイトで」って俺もそれ聞いて「それめっちゃいいやん」ってなって。まぁそれはRHYMESTERのザ・グレート・アマチュアリズムっていう曲の一節でMummy-Dが歌ってるんすけど。
大元はアポロシアターのアマチュアナイトからきてるんすけど、逆に当時の俺はそれは知らんくて、Mummy-D用語やと思ってたんすよ。Mummy-Dめっちゃかっこいい言葉知ってるやんって(笑)でもなんか、それをいただいて始めたのがアマチュアナイト。
2007年の九月から始まってる…から2007年の6、7月くらいに話し合ったんやろなあ。」

KZ「昔はノルマ地獄。今は個人レベルのオーガナイザーがやるイベントでもほぼノルマってなくなったんですけど、昔は絶対ノルマ5~20枚あって、すごい大きなアーティスト来るとかやったら40枚とかもざらにありました。そこで結構、第一関門がくる。ほんまにラップしたくても友達がいないラッパーたちはドロップアウトして行くんすよ。だから早めに『ラップで食う』に半年くらいで見切りつけました。ニコラップとかネット版のラップが発展した背景にこれがあるんやと思うんですけどね。東京でいうとアメ村って渋谷みたいな感じかな」

peko「渋谷よりひどい感じやと思うんすよね。渋谷って多分まだかっこいい奴がやってたと思うから。もちろん大阪にもかっこいい人もおったけど、ぶっちゃけほんまに、当時ノルマ振ってくるやつはほぼダサかったっすね。今でこそ、若い子もギャラの話普通にしてくるけど、俺らなんか絶対になかったし、まずノルマ10枚売って、11枚目から1枚につき200円くらいバック、30人呼んでも6000円。どうやってこれで食うねん、っていう地獄。でも、そういうのに困ってるやつを呼んできたんですよ、自分らのアマチュアナイトに。」

梅田サイファーのお父さんとお母さん

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KZ「歩道橋は梅田サイファーにとってお母さんみたいな場所で、アマチュアナイトはお父さんみたいな場所です。多分、アマチュアナイトがなかったら何人かはラッパーの道をもっと早く断絶されてたと思うくらい、サイファーやバトルしかしてなかった自分らがギリギリラッパーって言えたのはアマチュアナイトがあったから。そういうすごい大事な場所。…ただお客さんスカスカやったな、最初の頃(笑)」

peko「1番きつい時お客さん15人とかでしたね、平日月曜の深夜やったから。逆にみんなよう来てたな、今やったら考えられへん(笑)そんときの赤字何万やったんやろ…」

──その赤字ってどうしてたんですか?

peko「俺が決めてたルールは絶対にノルマを振らないこと、その代わりタダで出てもらうこと。で、赤字が出た時は絶対に自分でケツ拭くこと。だからその点では誰にも一回も頼ったことないっすね。その分、自分はばり苦しかったっす。赤出まくってる時期は、心荒んでました、リハーサルから一生イライラしてて。でもみんな楽しそうなんすよ、俺だけずっとピリついてて…あの時は心身ともに終わってたっすね(笑)」

KZ「自分とpekoの大きな違いがあって、自分は結構リアリストで現実的な人間なんで、赤字出たらみんなで割ろうみたいなタイプなんですけど、pekoは男気あるタイプというか、ロマンチストで理想的なんですよね。俺やったらやり切れんとおもう。pekoの元で自由に遊ばせてもらった時期が数年あって、それは梅田サイファーが保たれた大きな理由ですね」

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──アマチュア8耐のツアーを始めようとした時はキャラクターが逆ですよね。KZさんがロマンチストで、pekoさんがリアリストじゃないですか?

peko「俺は逆ににそういう過去の失敗があるから、いまは結構慎重なんすよね。10年という年月で人間かなり入れ替わっちゃった。それこそ最初アマチュアナイトにきてたお客さんって今誰もきてないし…」

KZ「そやな、ほんま身内やったか、スタッフとかやな」

peko「ラッパーなったか、DJなったか、だいたいそんなんすね。そんだけ移り変わりがあると、ホームですらそれなのに見知らぬ所に人が集まる事は考えにくいなって。
後はある程度、自分を疑ってるんすよね、常に。
実際フリースタイルダンジョンとかMCバトルって知名度は上がるんですけど、集客力が上がるわけではないでんすよ。それを1番わかってるからこそ、DJやることには自信はあっても、集客できるかどうかは全く別の話。しかも見知らぬ土地で俺がDJを8時間するから見たいってやつどんだけおんねんっていう視点でしか見てないんで…割と現実的な話をKZにはしてましたね。」

KZ「自分はいろんな角度から考えて勝算あると思ってたんですよね。それは、まず一個はこんなにハッピーなもんやのに人が来えへんわけないっていう(笑)自分がpekoのDJタイムで遊んできた時間を振り返って、身内ノリとかではなくてちゃんとDJとして幸せな時間を提供できるDJなのを体感してきたから、こんな幸せな時間なら、みんなPAYするはずやって。
後は、日本語ラップって体系立てられた何かがあるわけではないから難しいと思うんすよ。今、自分らは日本語ラップっていう森の中を平気でコンパスなしに歩けるけど、初めて森に辿り着いた人はそこが入り口かさえも分かれへんと思う。キュレーターがいないというか、情報を編集する人がいないというか。そういう意味でDJってその役割であるべきですけど、自分が見てきた多くのDJ達ってキュレーターとして役割を果たせてるかって言ったら、果たせていないと自分は思ってて。今日本で1番キュレーターとして果たせるのは誰ってなったらpekoやと思ってるんです。そのDJが8時間パーティーするってなった時に、全部の都市で勝てるとは思わんかったけど、ツアートータルで見た時には絶対人が入って、尚且つお客さんの満足度も高いパーティーになるやろなって、そういう勝算が自分にはあったから。」

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──pekoさんはキュレーターとしての役割を果たしてくれるDJ、だと?

KZ「そう。自分らはRHYMESTER好きになりました、そこにラッパ我リヤがfeaturingされてラッパ我リヤ好きになります…みたいな感じでどんどん回っていけた時期なんですけど、今はあまりにも情報も楽曲も多すぎてなかなか回り切れへんというか。もしくは綺麗な星というか北極星を見つけるまでにすごい時間かかるっていうか、そういう意味でDJってそれをできる人やないとあかんと思うし、それをできるのはpekoやと思う」

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──こんなに幸せで、こんなに良いものないんだから、絶対に勝てると。

KZ「そう」

peko「ほんまにだから…最初なに言うてんねやろって思いましたよ。」

KZ「(爆笑)」

peko「まず一つは勘弁してくれって」

KZ「(爆笑)」

peko「4箇所8時間、物理的に結構えぐいなって言うのもあったし」

──体力的にも結構削られますか?

peko「僕もまだまだ若いんで、8時間DJするのって体力的には楽勝のレベルでいけるんすけど。やっぱそれってフロアがどうなってるかにもよるんです。例えばガラガラで一人しかお客さんおらんかったら心折れると思うんですよ。その精神的な疲弊で8時間続けられへんかもっていう不安もあったし、そう意味でいうと北海道とか福岡とかほんま考えられへんかったな…」

KZ「今年のツアー回る前に、一回NOONで8耐やったんですけど、その時はパンパンまではいかんやろと思ってたら、結構パンパンなったんですよ」

peko「俺は集客想定30人くらいだと思ってたから…22時代とかお葬式みたいな時間あるかなと思ってたんすけど、オープンして間も無く人がパンパンになって…どうしよう(笑)みたいな」

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KZ「2018年の時に日本語ラップが再燃してきてて、再燃する前もリリースってたくさんあって、でもその当時もpekoが長く回すってなっても50分とかで、もう追えへんというかこっちが満足できなくなってきてた。だから自分は一晩中聞きたいなって、あの曲もこの曲も聴ける夜があったらいいなってやっぱり思ってて。
いうてもお互い大阪のシーンじゃ10何年間やってきて、2人がパーティーするってなったら来てくれるお客さんとかプレーヤーがいるから、赤字はないやろって思ってたら、pekoが思ってた30人、俺が思ってた100人弱よりも2倍くらいの集客でした」

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