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『日曜日が待ち遠しい!/Vivement dimanche!』
「じゃあ、もう一度計画を確認するね」
我々は、《豊王ハーヴェスト》が25年間保持する《秘石ゴルモアストーン》を奪取する。潜入担当はアタシ、運び屋はカトウ、海外サーバーへの密輸はハウスマンが担当する。
「おk」「Oui」
まずアタシが、ソーシャルハックで《豊王》を操作して、堂々とギルドハウスの外に出る。ブツを地面に置いたらカトウが確保。
「任せた」
カトウはギルドハウス付近で隠匿待機。部外者がハウス圏内に入ると《暗殺者の自動双刃》がすっ飛んでくるから気を付けて。
「りょ」
ブツを受け取ったらハウスマンは、キャラクターごと《MONDAYサーバー》へ転移、ブツを地面に置いたらキャラクターを削除して、別キャラで回収。一時的に所有権が外れるから注意して。
「了解」
作戦開始は次の日曜日 午前8時。
《夫》が唯一自室を離れるニチアサにパソコンを乗っ取る。パスワードがアタシの誕生日なのは確認済み。
「ちょっといいかな」
「はい、カトウ」
「次のニチアサは、見逃せない展開が多いんだ。特に『ふたりはハルピュイア』には三人目の戦士ケライノーが登場するから、8時30分からにしない?」
「絶対見逃せないからこそ決行するのよ」
「俺もいいですカ?」
「ハウスマン」
「ついに『火炎ライター バズ』が新フォームに覚醒するんデスよ。炎上しつくした果てにたどり着く、熾火フォームがお披露目されるデス、9時スタートにしまセンカ?」
「それじゃあ、猶予は30分しか残らないわ。我慢して」
「大丈夫だろ」「デスヨ」
「でも、それだと『色即戦隊ゼクウジャー』の最終回に間に合わないじゃない」
「テメェもか!」「録画シロ!」
その時、秘匿酒場の扉が押し開かれ、《豊王》が姿を現した。
「お、楽しそうだな」
「豊さん」「ユタカ」
「何の話か分からないけど、揉めるくらいならウチに来て一緒に見ようよ」
アタシは静かにキレた。
(お前を外へ連れ出すためにやってんだよ!)
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