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【餅】逆噴射プラクティス&自作創作物のまとめ

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自作の創作佛のまとめです。 逆噴射プラクティス参加作品とZINE的なヤツや一次創作、二次創作、Webサービス及び名状しがたい何かを収蔵します。
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#日記

『本を焼く』 #風景画杯

 僕は森の中の縦穴に火を投じる。メラメラ、パチパチと小気味の良い音を立てて本が燃えていく。炎の舌に舐められた本がパタパタと身をよじり、最後の悪あがきをしている。僕の顔は、炎の照り返しを受けて赤く染まる。  切り株に腰かけながら、木の枝で黒く燃え尽きた表紙をつつくと無傷の頁が露わになる。僕は丁寧に頁をめくり、真新しい紙面を451度の炎に晒していく。  全ての本が燃え尽きたのを見届けて、僕は焚書場を後にする。  森のけもの道を歩く。この島は、どこにいても潮騒と念仏が聞こえて

「ブロッコリーが毎食30日連続で続いた朝」 #同じテーマで小説を書こう

さっき企画に気づいたので20分タイムアタックでテキストライブしました。 「ブロッコリーが毎食30日連続で続いた朝」政府の緊急事態宣言から二週間が過ぎ、不要不急の買い出しは控えめになり食生活がワンパターンになってきた。特に生鮮食品、野菜のたぐいの入手や保管に気を遣うようになり主力は「冷凍ブロッコリー」になりつつあった。 冷凍ブロッコリーは無敵の冷凍野菜だ。食べ応えがあり、オイルやスープとの相性が良い。一部のベジタリアンはブロッコリーをこねてブロッコリーライスにする人々もいる

スレイトオブなんか(ロイナルホームセンター汲沢店)

VAL社マルチアーム更新システムへようこそ! AIオペレーターのVAL切子です。*OJIGI* *PR* 当社の八連装マルチアーム"スレイプニル"は、生体電気により作動、肘部から侵襲させたバイオ電極によって思念マニュピレーションを可能にします。搭載アタッチメントを多数ご用意。フラッシュライト、カッター、ドライバー、ハウスキーに自動車キーの収納も可能。最新モデルではRFIDチップによりSUICAの履歴も読み取れます。USB接続ニューロ入力支援機能のご利用には脳幹バイパス手術が

スレイトオブなんか(異世界転生社OP部)

「センパァイ!!」 「どうした」 「指令通りあいつを農場世界へ転生させたんだけど」 「まあ、農業シミュレーターなら大丈夫だろうという元老院の判断だったな」 「ハマったのよ」 「は?」 「あいつトラクターを降りてダッシュジャンプを繰り返してさ、電波塔へ体当たりよ」 「なんで農業シミュレーターにダッシュとジャンプがついてるんだよ」 「こっちが知りたいですよ!!」 「今どうなってる?」 「金具の隙間にハマってグルグルしているわ」 「うわっめちゃくちゃ楽しそう」 「やはり俺の見込んだ

『《全知図書館/Lyceum》炎上』

その異変はまず異国の破片世界《シャード》で発見された。 ボランティア司書自称者の書籍蒐集編集魔術師が全知図書館(Lyceum/ライキューム)へ訪れたところ、これまで図書館へ収蔵され書棚にロックされていた書籍類が全て地面へ落下しており、高度魔術地の特性(書籍やアイテムを風化させ糧とする)により全てが塵と化していた様子を目撃した。この魔術師は恐怖のあまり発狂して辺り構わず放火。異国地の図書館は燃え墜ちた。この魔術師の墓は全知図書館の裏手に現存する。 この異国地の全知図書館炎上

『君、本を盗みにいかないか』

「君、本を盗みにいかないか」 そう誘ってきたのは、いかつい黒ドレスでキメた私設図書館の女あるじである。反り返るほど背筋を伸ばしながら煙管を燻らせ肘を張るポーズは威圧的で「どこに?」「なんで」という質問を許さない強さがある。 あるじは戸惑う私を本棚へ押し付けるとナイトシェイドの紫煙を吐きかけて何らかの蠱惑的な魔力を用い同意を得ると、今夜決行。厚着で来いと通告して遮光カーテンの裏に姿を消した。 ◆◆◆ 同日夜。紅い魔力ポータルを超えて到着した先は殺人者が徘徊する雪原の孤島

『僕と妻は幼なじみ』④

承前 「そんなわけで僕の前腕マルチアームには、アイスクリームディッシャーが2本も搭載されているんです」 僕は"スレイプニル"をカショカショさせながら顧客に打ち明けた。 ロイホでの激闘(説得)の結果、妻の両腕を生身に戻してもらうことに成功したが、妻が”しもべ達”との別れを惜しんだため、アイスクリームディッシャーを僕の八連装前腕マルチアームに移植するという条件で落着した。 仕事中にマルチアームから飛び出すアイスクリームディッシャー(2本も!)は客ウケもよく話のネタと"愛妻

『僕と妻は幼なじみ』③

承前 妻が両腕を"スレイプニル"と"オーディンがらす"に換装して初めての週末。僕らはロイナルホームセンター汲沢店へ足を運んだ。実演販売員の高橋さんと話をつけて妻の両腕を元通りに戻してもらわないといけない。 「はいっ!この油汚れがですね シュッ!とスチームだけで一気に!」 左腕をスチームクリーナー、右脚をスティック掃除機に置き換えた高橋さんはロイホのエース販売員だ。 「あっ奥様!調子はいかがですか?」 「アイスだけじゃなくてポテサラにも使えて便利ですねー」 「そうで

『僕と妻は幼なじみ』②

承前 例のブツの名は【ディッシャー】というらしい。 バニラアイスを食べ終わり上機嫌で皿を洗い始めた妻に話をむける。 その【ディッシャー】なんだけどさ。 「え?なに?」 そのアイスを掬うやつのこと。 「カショカショのこと?」 それでいいや。 「いいでしょ」 うん。 「右が"スレイプニル"で左が"オーディンがらす"といいます」 『ヨロシク』『ヨロシク』 両手をカショカショさせながら腹話術をする妻に吹きだしてしまった。 えっと、そのカショカショなんだけど。

『僕と妻は幼なじみ』

帰宅すると妻の両腕がアイスクリームを掬うやつになっていた。 両腕? 「うん!」 せめて片腕にはしなかったの? 「高橋さんが片腕と同じ費用で換装できるって言うからつい」 そうか。それはよかった。 「ちょっと待っててね」 妻は器用にカショカショしながら冷蔵からアイスクリーム(1Lのバニラだ)を取り出すと器用にフタを外してアイスを掬い始める。 「ちょっと!」 どうしたの。 「助けて!お皿が取れない!」 すでに両腕をアイスクリームに突っ込んでしまった妻が助けを求