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【餅】逆噴射プラクティス&自作創作物のまとめ

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自作の創作佛のまとめです。 逆噴射プラクティス参加作品とZINE的なヤツや一次創作、二次創作、Webサービス及び名状しがたい何かを収蔵します。
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2021年10月の記事一覧

【逆噴射ピックアップ】自作ライナーノーツ&前半戦のお気に入り22作品[10.8-10.20]

よく来たな。今年は「もはや逆噴射小説大賞に参加する動機は尽きた。すでに弾丸を撃つ習慣を身に着けるという目的は達し、10月以外でも常に書き続けている状態にある。また新たなステージに向かうプロ志向のインクスリンガーも多く、不純な動機で参加するのも、企画の純粋性を損ねて、他の参加者に悪影響を与えるのではないか。だから、参加しないほうが良いかもしれない」と思っていたのに、結局、今年も三作品で参加したお望月さんだよ。 今年も、お気に入りの作品を紹介したり、自作の紹介をやっていこうと

『一寸の虫』

その牢獄に扉は存在しなかった。 一切継ぎ目のない【破壊不能】な木材によって構成された、物理的にも魔術的にも脱出不可能な獄舎であった。 囚人は1名。その名をダヤンと言う。悪人からしか盗まない老義賊とも、ゴブリンの至宝を盗み、小鬼戦争の引き金を引いた大悪党とも呼ばれていた。 彼の行動原理は単純である。 『不可能であるほど燃える』 『できたからやった』 元より善悪に頓着する男ではない。だから、この牢獄が小鬼大隊と連合王国の報復から彼を守るためのものであったとしても、大悪党は脱獄

『杉田君にはサスティナビリティが足りない』

「サスティナブルという思想は、人類に対して負担をかけすぎていると思う!」 杉田が旧校舎の杉板を踏み鳴らして立ち上がり、いつものように大上段からぶちかました。未来同好会の連中は、一瞬だけ杉田を眺めて各々の作業に戻る。 「さっきの授業で学んだ『持続可能性』とかいうやつか。自然資源を長期間維持して環境に負担をかけないようにするとか。良いことづくめなんじゃないか?」 僕が合いの手を入れると、杉田はグズグズと鼻を鳴らしながら答える。 「お前らは全く何もわかっていない。計画的な植

『垂乳根(タラ・チネ)』

戸塚区原宿、国道に挟まれた小さな森に有名な大木がある。"岩田家の垂乳根"と呼ばれる大銀杏だ。 その大銀杏の前に、紋付道着を襷掛け、後退した頭部に鉢を巻き、時代劇から抜け出してきたかのような姿をした男が陣取っていた。感染防止の不織布マスクをした男の口元は窺い知れないが、吊り上がったまなじりの角度が怒りのボルテージを示している。 「岩田さん……何をしてるんですか?」 「何って、決まってるじゃないですか! この木を切り倒されたら、私の奉公が終わってしまうんですよ!」 岩田と