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贅沢な傷
" 生きたいと願うには
この世界は心に痛くて
消えたいと願うには
私の世界は優しすぎた
希望は持てない
だけど絶望もできない
何処へも行けない
贅沢な傷まで愛せたなら"
住むところがある。明日の食べ物がある。爆弾は降ってこない。家族がいる。殴られない。罵倒されない。友人がいる。好きなものがある。生まれた環境には随分と恵まれたと思う。
そんなわたしもここまで人生を歩んできたわけで、それなりに傷もあれば苦しいこともある。死にたいだとか言ったことはないけれど、正直生きていたいかと聞かれたらはいとは言えない。
それでも恵まれた環境にあるわたしだから、生きなきゃいけないと思った。わたし程度の傷も苦しさも嘆くほどのことではない、こんなに恵まれているのに消えたいなんて言ってはいけない、と。
自分の人生に希望が持てなかった。これから先も生きていくということを考えたくなかった。未来の話を嫌った。それでも死ねない理由が幾つもあった。絶望はしきれなかった。
希望は持てない。けれど絶望もできない。狭間は驚くほどに苦しかった。未来に夢を抱いて生きる友人。苦しいと、死にたいと吐き出す人々。その何方にもなれず行き場がなかった。
何処へも行けない中途半端な自分を嫌った。自分程度の傷を傷と呼ぶ事すら贅沢なことに思えた。そんな中途半端を、この贅沢な傷を、愛することができたなら。そう、思った。