ワンピースFILM RED なぜウタはあの結末を迎えたのか考察 ※ネタバレ

鑑賞動機


まず、自分はワンピース本誌までは未履修(魚人島以降はざっくりとしか知らない)。映画はほぼ毎作見てる。ベポは癒し。

なぜ見に行ったのかだが、歌ものの作品が好きだったり、話題の映像作品を押さえておきたいのも勿論あるが、何より、「逆光」のMVを聴いて、彼女(ウタ)は、“一体何に対して、激情の怒りを抱いているのか”。
それが気になった。
浴びたい...劇場でそれを浴びたい....。
そうして映画館に足を運んだ。

※補足※
インフレ云々の制作上のメタいのは一旦置いといて、作品をスルメのように噛み噛みするための考察。
まだ1回しか見てないので荒い。異論は認める。

テーマ

具体的には誰の何のせいで、ウタはあの結末を迎えたのか。



今作FILM RED、ノベルゲームでいう選択肢があったとすれば、ぶっちゃけ、ウタ周辺の誰も彼もが何もかもの選択肢をやらかした可能性がある。

やらかしが大きすぎて、あの結末に成るべくして成ったのだと裏付けが出来てしまい、納得がいってしまう。結末が腑に落ちて、受け入れるしかなくなった。

やらかし先生① 赤髪海賊団シャンクス


まさかのシャンクスの娘というトンデモ情報に、オタクは興奮し、夢女子が阿鼻叫喚の後に倒れ、世界中が尾田先生の掌でコロコロ転がされ、おもしろ沸いたに違いない。

そんな彼の圧倒的やらかしポイント、「ウタを単身離島に置いていく」

ノベルゲーで言うルート分岐があるとすれば、この瞬間、ルート確定に大きく近づいた違いない。

そして、新世界や苦しみのない世界を創るといった彼女の奥底にあった本当の思い、激情は、「シャンクスに置いて行かれた事への怒り」だ。

言い換えれば、シャンクスは、彼女の一番の心の拠り所だった赤髪海賊団を奪ってしまった。
これが、ウタの破滅へのトリガーとなる。

勿論、ウタを追われる身にせず自由に歌ってもらう為、国を壊滅させ国民を殲滅した罪を背負わせない為、という動機もわかる。
....わかるのだが、ちょっとウタ主観で考えてみてほしい。

慕っていた家族に急に置いていかれ、外界から閉ざされた離島で、赤の他人とたった2人、12年間、あるのは歌だけ。

いやシンプルにきっっっっっっっっっつ。

どうあがいても闇堕ちするにきまっとる。
ウタは、墜ちるべくして墜ちていった。

12年の間に、彼女と彼女の歌は成長したかもしれないが、その成長の糧となり突き動かしたのは、怒りや絶望、どうして私を置いていったの???、許さない!!、嘘吐き!!!!、そんな激しいドロッドロの感情だったのだろう。

また、映像でんでんちゃんを拾ったのが2年前なら、彼女が新時代、救済を目指し始めたのはここからと言うことになる。
たった2年の救済心と、積み重なってドロドロにこじれた10年分の増悪

以上から自分は、彼女の歌と血肉は、憎悪と怒りの中で育まれたのだと解釈した。しんどすぎる...。純粋無垢な願いとは...。

だからこそ、救済の方は終始独りよがりになってしまう。
ゴードンの嘘に気付きたった1人の同居人にも裏切られたウタは、ずっと独りで葛藤を抱えていた結果の、至極当然の、独りよがりだった。

もしも、シャンクスがウタの罪に寄り添い、共に支え合い、赤髪海賊団の音楽隊として生きていたなら....。
彼女にとって、どうするのが最も幸福だったのか。


子育てと海賊って、難しいね....。
その点どう思いますか、ヤソップさん。


ちなみに余談だが、ウタの能力が(寝なければ)あまりに最強すぎるので、音楽隊ルートだった場合、私が最強どころか、赤髪海賊団さいつよになっていた。


やらかし先生② 迫真の演技ゴードン


ごめんなゴードンさん...どうしても言わせてくれや...

この卑怯者!!よわむし!!千両役者!!!!(しんどい)


ツイートでも見かけたが、正味な話、もしもウタが、ゴードンと2人きりではなく、ブルックと2人きりだったら、恐らく闇堕ちはしてないのではなかろうか。
パパセコムがあるのでセクハラの度にブルックの首は危ないかもしれんけど。


さておき、ウタとゴードン、驚くほど噛み合わない

いや、むしろ、最悪のバッドエンドへ向けて、驚異の噛み合いをみせてはいた。なんでや....。

着眼すべき始まりは楽譜うんぬんではない。国はもうトットムジカのせいなのでしゃーないとして(しゃーなくはない)、問題は、赤髪海賊団が去った後の事だ。

ゴードン、迫真の演技。

おいおいおい、めっちゃ話盛るじゃん。シャンクスもビックリだわ(わからん)。ほんとに音楽家??もしかしてミュージカル舞台俳優だった????

シャンクスは言った。
俺たちのせいにすれば良いと。

そしてゴードンは言った。
全部赤髪海賊団のせいだ。奴らはお前(ウタ)を利用し、全てを奪ったと。

なに勝手にトッピング足しとんねん。
多分ですけど、自分の勝手な感覚ではあるんですけど、幼子の心に、このトッピングは劇薬すぎやしないか.....?

置いていかれたどころか、国を滅ぼし国民を殺し全てを奪った、それらを、ウタを利用して行った。ゴードンは会心の演技でそう言ったのだ。

え.........???つまり..............私のせい........ってコト????私、この国の人達から命も何もかも全部奪う為の道具にされた............????(ウタの心境を勝手に意訳、当社比)

絶望、絶望、絶望.....。
果てしないショックを受けたに違いない。

挙げ句、漂着でんでんちゃんによる、ゴードンの嘘と真実の発覚。

もう情緒めちゃくちゃ、最悪ですよ。

初手の、道具として使い捨て置いていかれた絶望が深ければ深いほど、この漂着真実が致命傷になる。
恐らく彼女を次に襲ったのは、深い絶望へのカウンターの虚無感と、何もかもに裏切られた事への激しい憎悪、怒りだ。

皆さんは、国を滅ぼしてしまった罪悪感と、全てに裏切られる絶望、どっちの方がいいですか?

はたまた、どっちを自分の子供に背負わせますか?




多分どのみち地獄行きなんですが、地獄に寄り添ってくれる人が居るのと居ないのでは大きく違かったのではないかと思います。

独りで寂しかっただろう....苦しかっただろう....。
そんな彼女に、誰も気付かなかった。


結末へ


かくして、成るべくしてウタは破滅への道を進み始める。

キノコの副作用でもトットムジカのリミットなどでもなく、12年間苦しみ、積み重ねてきたあらゆる想いから、ぶっ壊れたまま導き出した結論。
とっくにそれが出ていて、ライブが開幕した時点で既に手遅れだった。

彼女の性根は、確かに純粋無垢だったが、故に、歪んだまま突き進んでしまった。
たくさん人を殺してしまった。もう戻れないし、戻る資格は自身には無いのだと。

ルフィーは勿論、シャンクスにももう止められないところまで到達していたのだ。

そして、救いを求めながらも現実を生きて行くという矛盾を抱えた観客達に、一瞬で消費され燃え尽きていく。

あまりに残酷な話だ....。
一番救われたかったのは彼女自身だったというのに。


まとめ

総じて言うと、それはもうめちゃくちゃ面白かった。

なんだかんだ言ってるが、これはこれで1つのまとまったストーリーだったし、シリアスから急に生き返る様な、死を軽んじる作品が苦手なのもあったので、当作はケジメをしっかりとつけ、観た人に多方面から問いかける様な終わりだったのが自分がすごく好きな終わり方だ。

映像の作りも攻め攻めで、ライブカットに挟まる作画と撮影処理、Adoさんによる歌唱や音響が最強すぎた。お前が最強。浴びた私も最強。ブチ上がった。
いままでの映画ワンピースとは大きく違った、挑戦的な作品だった。

ネタバレ読んでから映画を見る人も、配信を待つんじゃなく劇場のバカ良い音響で音を浴びてほしい。音楽は五臓六腑で感じろ。

多分あと2回くらいは、答え合わせと音を浴びに見に行くと思う。

ワンピースFILM RED、すごく良かったです。
U.T.A!!!!!!! U.T.A!!!!!!! U.T.A!!!!!!! U.T.A!!!!!!!

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