20240710/2335

リュックからイヤホンを取り出して、ねじれをなおす。わたしは何年もこうしている気がする。あの時は何人もの人がそうしてた。だが、今では見かけない。ものはそんなふうに、当たり前ものものからかつてのものへと姿を変えていく。関わるものはいつも消えかかっている。そこには生死がある。ものに対して、死ぬという感じを抱く人がいる。死にはそこから永遠にいられるという意味がふくまれる。ものには心臓がない。しかし、人はそれに心臓を与えることができる。ものと通っているうちに、ものはその人の一部になる。そのとき、ものは人のように触れられ、撫でられ、よごれを拭われ、声をかけられる。人と同じように扱われるようになっている。友を人だけにしないことで、わたしは生きのびている。

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