20240708/2336

【救う】力を貸して悪い環境、困難、危険、苦痛な状態から逃れさせる。助ける。

わたしは書くことに救われていると思う。人はそれぞれ、自分を救う術を持っている。持っている、と断定したのは、すべての人にこども時代があったからだ。自分を救うもの、それはこどものとき楽しかったことだ。楽しさという感情とその経験が、そのあと何年にもわかって自分を救うものになっていく。こどものときは、それがわたしを救う術だとわからないが、大人になると術になっている。触れにいかないとその存在に気づかないくらいにとても静かに、しかし平然と寄り添っている。

わたしは高校から大学にかけて、よく人に宛てた文章を書いた。書くことに拍車をかけたのは、教室に話せる人がいなかったことだ。書くことはどうすれば相手に伝わるのか、というあそびのようにわたしには感じられた。話しことばで経験するのが難しいことを、書き言葉で経験しているという感覚もあった。

文章にすると、相手にわたしの考えが伝わるというのがふしぎでたまらなかった。魔法みたいだと思った。もちろんうまく伝わらないときもある。しかし、伝わらないから、より考えた。それができたのは、伝わるときの楽しい経験がわたしを支えてくれたからだと思う。少しあとになって、伝わるという認識は誤解や妄想にすぎないと知るが、楽しい感じはずっと生き続けていた。

言葉に対して、いつもありがとうと思う。あるいは、ありがとうと思いながら言葉を使っている。それぞれに、自分に力を貸してくれる対象がある。人は救われたいというが、すでに救われている。楽しかった経験を思い出すことができれば、それだけで救われている。月のことを思い出した。

こども時代が、自分で自分を自分を救う技を身につける期間であると考える時、こども時代にこどもでいられることがどれほど大事なことなのかを思う。幼くして競争社会にのせることがどれほど大事な機会をうばっているのかを思う。

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