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芝中学の合格発表が当日に変更した影響について考える

 2020年10月14日、芝中学のHPに来年の入試の募集要項が発表されました。
https://www.shiba.ac.jp/admissions/recruitment.html

 これまでの合格発表は翌日の10時に校内掲示でしたが、来年の入試は2月1日入試が当日の20時、4日入試が当日の2月1日21時のweb発表に変更となりました。
 これにより受験戦略がどのように変わる可能性があるか、考えてみたいと思います。


1, 合格発表が変更できた理由を考える

 芝中学は元々合格発表を翌日の10時に芝中学の講堂で行っていました。それが今回のコロナウイルスの影響とは思いますがweb発表に変更となりました。そしてweb発表だけでなく当日の夜の発表に変わりました。なぜ変更できたのでしょう。学校説明会でその理由を語って頂けるかもしれませんが、ここでは私なりの推測を述べたいと思います。私が考える理由は以下の通りです。

① 元々当日発表できる状態だった
② Webの導入により効率性が高まった
③ 受験生の動向(減少を推測?)
④ 出題傾向の変更

 ①は採点自体が当日に終わっていて、翌朝に講堂での合格発表の準備をしていた可能性が考えられます。それがweb発表に変わり、講堂に掲示する手間が省けたことで当日発表に変更したことが考えられます。
 ②は2点考えられます。1つは出願から合格発表までwebで一元化したことで効率化が図れたこと、もう1つは手書き採点から電子採点への変更が考えられます。電子採点は採点作業の効率化が図れます。事前に配点を設定しておけば、全ての採点が終わったときに点数まで自動的に出ます。ほとんどの模試で採用されている電子採点を利用することで効率化を図った可能性があります。
 ③は可能性としては考えられます。2020年入試は2019年入試に比べてそれぞれで100人程度実受験者が減少しています。そして2021年入試もコロナウイルスの影響でさらなる減少が考えられます。しかし、今後も当日発表を続けるなら受験生の増減を理由に変更することは考えにくいと思います。
④も考えにくいと思います。学校説明会で変更を発表する可能性はありますが、今のところそうした話は聞いていません。念のため11月予定の学校説明会で変更があるか確かめる必要はあります。
 こうしたことから、当日発表に変更できたのは電子採点の導入などで採点・合格発表の効率化を図ることで出来たのが理由だと考えられます。
 いずれにしても、受験生にとっては出題形式が変わらずこれまで通りの採点の質が保たれていれば問題ないことです。
では次に、実際に当日発表に変わったことでの受験戦略について考えてみたいと思います。

2,当日発表のメリットとデメリット

 これまでの芝中の合格発表は翌日に行っていたため、受験生は結果を知らないまま翌日の入試に臨んでいました。しかし、当日に変更したことで様々な影響が考えられます。

 当日発表に変更するメリットは以下の通りです。

①翌日の入試戦略が立てやすくなる
②受験生のメンタルケアがしやすくなる

 ①は当日の夜に結果が出ることで翌日どこを受けるかを選ぶことが出来ます。これまでは午後入試を受けていなければ翌日まで受験校が決まっていましたが、夜に受験校を選ぶことが出来るため、より選択肢の広い受験が可能になります。
 ②は結果が事前に分かることで受験生のメンタルケアがしやすくなります。これまでであれば翌日の試験中に結果が出ます。そのため結果が気になって力が発揮できない受験生もいたと思います。それが結果が分かった上で翌日の入試に臨むことになるので、力が発揮しやすくなると思います。
 しかし、反対に当日に結果が分かることで受験生のケアが難しくなることも考えられます。合格していれば気を楽にして翌日の試験に臨むことが出来ますが、もし不合格だった場合受験生の精神が不安定になるおそれがあります。特に後述しますが、4日入試まで上手くいっていない中で4日の結果も悪かった場合、5日の入試は精神的に追い詰められた状態で受けることになると思います。
 メンタルケアについては受験生のキャラクターが大きく関係します。それぞれのキャラクターを踏まえ(利用し)て対応をして頂ければと思います。

3,当日の合格発表の影響を考える①~2月1日入試~

 では実際にどのような受験が考えられるでしょう。まずは2月1日入試で考えたいと思います。
 芝中の偏差値は四谷大塚で56(50%)です。ただ、多くの塾関係者が言っていることですが、偏差値が高ければ合格するわけでも低ければ不合格になるわけではありません。入試問題は学校によって個性が出ます。安全圏と考えられる学校でも相性の悪い問題が出れば不合格になるおそれがあります。反対にチャレンジ校でも相性のよい問題が出ればいわゆる逆転現象を起こすことも出来ます。
ただ、ここではそうした点まで考えずに偏差値の高下で話を進めていきたいと思います。

四谷大塚の2月2日の各学校(50%)の偏差値は以下の通りです。

 そして、ここでは80%偏差値の59以上の学校を挑戦校、50%偏差値の56以下が80%偏差値になる学校を安全圏、その間を適正校と便宜的に分けてみました。1つずつ見ていこうと思います。
 ただ、その前に芝中を受験する子の併願ケースを考えたいと思います。芝中は6年制の進学校で大学附属ではありません。また、芝中は港区にあり都内の中心に住んでいる受験生が受験する可能性が高いです。以上のことから、以下のケースの学校を併願する可能性は低いと思います。

①大学付属中
②都心から大きく離れた(東京都以外)の学校

 これを踏まえてみていきます。

 まずチャレンジ校です。先の条件を考えると、午前は渋谷教育学園渋谷、午後は広尾学園(医進)の受験になると思います。栄光学園・聖光学院といった神奈川御三家も地理的に難しいところはありますが、受験校の選択肢として考えられます。
 当日発表のメリットが大きいのは、こうした難関校に挑みやすくなることです。これまでの翌日発表だと、芝中にかなりの自信のある受験生でなければ難関校の受験はためらいがちになります。しかし、芝中の合格が分かっていれば何の気負いもなく最難関校を受験できます。そのメリットは大きいです。

 次に適正校です。適正校を受験するケースは芝中に不合格の上で、A「午後入試で合格している」B「志望しているレベルが既に決まっている」のいずれかが考えられます。
 Aに当てはまるケースは、芝中より少し偏差値が高めの学校、例えば桐朋・本郷の受験が考えられます。午後入試は広尾学園になると思います。一方Bに当てはまるケースは芝中の偏差値と大差ない攻玉社・城北・世田谷学園・巣鴨が考えられます。午後入試は東農大第一・高輪(算数)東京都市大等々力・三田国際が考えられると思います。ただ、これはこれまでの翌日発表のケースとそれほど変わらない戦略になると思います。

 そして安全圏です。安全圏の学校を選択するケースは、2月1日の午前・午後のいずれも不合格で、2日に何としても合格を勝ち取りたいケースだと思います。
 そこで考えられるのは学習院・暁星です。学習院は大学附属ですが大学受験で外に出るケースが多いため受験校としても扱います。午後入試は青陵が考えられると思います。
 以上からも、当日の合格発表に変更することで安全志向に舵を取りやすくなったといえます。

 以上のことから当日の合格発表の影響として以下のことが考えられます。


①芝中の合格が取れれば2日は難関校への強気受験がしやすくなる
②午前・午後が不合格の場合、安全志向に切り替えやすくなる


 芝中が適正校の受験生にとっては大きなメリットといえます。
 では次に2月4日の場合を考えてみたいと思います。

4,当日の合格発表の影響を考える②~2月4日入試~

 まず2月4日に芝中を受験するケースを考えたいと思います。考えられるのは以下の通りです。

①進学予定校があり、さらなる高望みを狙う受験生
②2月3日までに望んだ結果が出ていない受験

 ②でもさらに以下のケースに分けられます
②-1:合格校はあるが望んだ結果になっていない
②-2:どこも受かっていない

 ②-2もしくはそれに近いケースでの4日の芝受験は十分に考えられます。以前私の生徒でも2月4日までに埼玉・千葉受験しか合格していない、押さえの学校しか受かっていない子がいました(いずれも満足できる学校に受かったので話せることですが・・・)。ここではそれまでの受験状況を基にみていきたいと思います。

四谷大塚の2月5日の各学校(50%)の偏差値は以下の通りです。

 まず①は結果が翌日の入試に大きく影響することはないでしょう。そのまま受験を終わらせるか、渋谷教育学園渋谷・本郷・攻玉社(算数選抜)・広尾学園といった芝中と同レベルかそれ以上の難易度の学校にチャレンジするかでしょう。
 次に②です。こちらは結果によって翌日の受験校が大きく変わります。ただ、芝中に合格すれば翌日は①と同じです。
 問題は芝中が不合格だった場合です。こちらは②-1と②-2で大きく変わります。②-1であれば合格している学校との縁が強いのかなと考え、その学校に進学することを前提とした①で挙げた学校を受験すると思います。
 一方②-2の場合、公立も選択肢に入れているのであれば①で挙げた学校を受験するかもしれません。しかし、私立に入りたいのであれば、偏差値的に低い学校を受験することになりそうです。例えば2月5日に國學院久我山、2/6に東京都市大付属が考えられます。ただこれも当日の発表に変わったから考えることができるのであり、大きなメリットといえます。
 以上のように、当日発表を利用して2月5日の受験校が選択しやすくなったと思います。

5,まとめに変えて


 以上のことから芝中の合格発表が当日に変わった利点は以下の通りです。
①芝中の合格が取れれば2日以降難関校の強気受験がしやすくなる
②2月1日の午前・午後が不合格の場合、安全志向に切り替えやすくなる
③2月4日の結果によってより安全圏の学校に切り替えやすくなる。

 正直、今回の当日発表の影響が大きいのは2月4日だと思っていました。しかし、2月5日に芝中の受験生が受けそうな学校が少ないため思ったよりも影響は小さそうです。むしろ、2月1日の受験生の方が、結果次第で翌日の選択の幅が広がるといったメリットが大きいようです。
 以上のように、受験スケジュールは綿密に考える必要があります。それは受験生の子どもが算数で学習する樹形図と変わりありません。もう少しで残り100日を切る中、塾の先生と受験スケジュールについてしっかりと相談して下さい。

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