「乗車拒否問題」について

 


「乗車拒否問題」のような激しい論争になると、人は大抵「障害者」と「健常者」の論争のように捉えてしまう。けれども上記2つの記事を読むと、車椅子ユーザーの二人の視点から別々の景色が見えていることがよくわかる。過去のバリアフリー化を求めた闘争との関係性、実際の車椅子ユーザーを取り巻く環境、そしてこれからの日本社会への影響。どの言動がネガティブ/ポジティブな影響となるか、それは当然ながら個々人によりけりである。

一つの現象を善か悪の二分法で捉えることほど貧しくかつ簡単なことはない。人間は一人一人が固有の人生を過ごしている。見た目も意見も感情も、その人それぞれが過ごしてきた固有の人生と共にある。そんな当たり前の事実こそ、「障害者」や「健常者」というカテゴリーなんかよりも、全ての人に当てはまる現実なのではないだろうか。

同じカテゴリーに属している(と一般的に判断される)二人が、一つの出来事に対し、違った感触と思いを抱いていることを記事は伝えてくれている。それぞれの意見を言葉にして、メディアを通して発表されている。こうしたメディア環境こそが、過剰で一面的な言葉の流れに巻き込まれないために、維持しなければならない「場」であると私は思う。

障害者と障害者の意見が合わず、障害者と健常者の意見が食い違う。その視点の落差によって流れ出した言葉の一つ一つを、対話という「場」を満たすよう導いていく。そんな成熟した社会に生きてみたいと願う私個人の小さな意見を、今日ここに記しておきたい。




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