見出し画像

整理して体系別にまとめた調剤・介護報酬改定2024(薬局向け。答申)

はじめに

〇当記事においては、2024年2月14日答申資料をもとに作成しているため、今後、内容や解釈が変わる可能性があります。
〇当記事は、今までは改定のたびに、一部の方を対象に著者が作成して配布していましたが、ご要望にお応えするため今回から一般公開することとしました。元の資料は、紙面100ページ以上にのぼる内容となっており、重要ポイントを可能な限り当記事に反映させています。そのため、当記事の内容も膨大なものとなりますが、調剤報酬点数表の流れに沿ってまとめてあります。
〇元の資料はフルカラーですが、サイト機能の制限のため、できる限り工夫して掲載しました。
  1.調剤報酬点数表の一覧は、記事の最後に載せています。
  2.改定前後の比較については、「◆」は改定後の文章、「◇」は改定前(現行の報酬制度)となっています。
  3.記事内容について、理解しやすいように著者が注釈・語句説明等を入れています。「■」で始まる文章が注釈となります。
〇著者が当サイトの初心者のため、機能をフルに生かし切れていないこともありますが、ご了承下さい。

〇ご参考までに当記事内の「調剤報酬点数表の一覧」および「調剤基本料のフローチャート」を公開します。



目 次


第1章 報酬改定の基本事項

  1-1.改定スケジュール       
  1-2.長期収載品の保険給付の在り方    
  1-3.リフィル処方箋・長期処方について 
  参考(診療報酬改定):生活習慣病管理料の見直し 
  参考(診療報酬改定):特定疾患処方管理加算の見直し  
  1-4.医療制度・調剤医療費 
  【使用薬剤料の見直し】 

第2章 調剤技術料(調剤基本料 関連)

  【調剤基本料の見直し①】 ~特別調剤基本料の範囲拡大~ 
  【調剤基本料の見直し②】 ~調剤基本料2の施設基準の変更~ 
  【調剤基本料の見直し③】 ~同一敷地内薬局への対応~ 
    参考(診療報酬改定):【処方箋料の見直し】 ~同一敷地内薬局への対応~ 
  【調剤基本料の見直し④】 ~医薬品取引状況に係る報告の見直し~ 
  【地域支援体制加算の見直し】 
  【連携強化加算の見直し】 
  【在宅薬学総合体制加算の新設】
    ~多様な在宅ニーズに対応した薬局の高度な薬学的管理に係る体制の評価~ 
  【医療DX推進体制整備加算の新設】 

第3章 調剤技術料(薬剤調製料 関連)

  【嚥下困難者製剤加算等】
    ~嚥下困難者製剤加算および自家製剤加算の薬剤調製に係る評価の見直し~ 
  【無菌製剤処理加算】~医療用麻薬における無菌製剤処理加算の要件の見直し~ 
  【時間外等加算】 ~夜間休日対応における要件の見直し~ 

第4章 服薬管理料(調剤管理料 関連)

  【敷地内薬局の調剤管理利用の見直し】 
  【重複投薬・相互作用等防止加算の見直し】
    ~薬局薬剤師の業務実態および多職種連携のニーズに応じた薬学管理料の見直し~ 
  【医療情報取得加算の新設】
    ~医療情報・システム基盤整備体制充実加算の名称変更および評価の見直し~ 

第5章 服薬管理料(服薬管理指導等 関連)

  【服薬管理指導料の見直し①】~高齢者施設における薬学的管理に係る評価の見直し~ 
  【服薬管理指導料の見直し②】 ~同一敷地内薬局に関する評価の見直し~ 
  【服薬管理指導料の見直し③:麻薬管理指導加算、特定薬剤管理指導加算3】
    ~薬局薬剤師の業務実態および多職種連携のニーズに応じた薬学管理料の見直し~ 
  【調剤後薬剤管理指導料の新設】 ~薬学的なフォローアップに関する評価~ 
  【服薬管理指導料の見直し④】
    ~特例(=かかりつけ薬剤師と連携する他の薬剤師が対応した場合)の見直し~ 
  【かかりつけ薬剤師指導料の見直し:吸入薬指導加算】 
  【服薬情報等提供料の見直し】
    ~薬局薬剤師の業務実態および多職種連携のニーズに応じた薬学管理料の見直し~ 
   参考(診療報酬改定):【診療情報等連携共有料の新設】 ~医歯薬連携の推進~ 
       【施設連携加算(新設)】~高齢者施設における薬学的管理に係る評価の見直し~ 

第6章 服薬管理料(在宅関連)

  【在宅患者訪問薬剤管理指導料の見直し】
    ~多様な在宅ニーズに対応した薬局の高度な薬学的管理に係る体制評価の見直し~ 
  【在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料の見直し①】
    ~多様な在宅ニーズに対応した薬局の高度な薬学的管理に係る体制評価の見直し~ 
  【在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料の見直し②】~新興感染症等への対応を評価~ 
  【在宅移行初期管理料の新設】~在宅医療における薬学的管理に係る評価の新設~ 
  【在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料の見直し】
    ~処方箋発行前に行った処方提案に対する評価~ 

第7章 介護報酬改定 

  居宅療養管理指導① ~基本報酬の見直し~ 
  居宅療養管理指導② ~薬剤師による情報通信機器を用いた服薬指導の評価の見直し~ 
  居宅療養管理指導③
    ~高齢者虐待防止措置および業務継続計画の策定等に係る経過措置期間の延長~ 
  居宅療養管理指導④ ~患者の状態に応じた在宅薬学管理の推進~ 

第8章 その他 

  投薬用の容器に関する取扱い 
  書面掲示事項のウェブサイトへの掲載 
  医療機関・薬局における事務等の簡素化・効率化 
  医薬品の安定供給に資する取組 
  参考(診療報酬改定):【一般名処方加算の見直し】 
  参考(診療報酬改定):【湿布薬の投与枚数制限における対象品の見直し】 
  介護保険施設および障害者支援施設における医療保険で給付できる医療サービスの範囲の見直し 

調剤報酬点数一覧表



第1章 報酬改定の基本事項


1-1.改定スケジュール

 今回の調剤報酬改定では、従来の改定スケジュールと異なります。従来の「4月改定」では、「3月に改定の詳細が決定し、そこから急ピッチでレセコンのプログラム変更を実施する」ことで、医療従事者のみならずレセコン業者等にも大きな負担となっていました。そこで、今回の改定からは、「3月に改定内容が決定した後、それが実施するのは6月から」と改定準備に時間的余裕をもたせることにしました。ただし、単に価格変更を行うだけの「薬価改定」に関しては、従来通り4月からの改定となります。

 介護報酬改定においては、「診療・調剤報酬と密接に関わる4分野(居宅療養管理指導費、訪問看護、訪問リハ、通所リハ)は6月施行」、「その他の分野は従来通りの4月施行」と2段階に分けて行われます。つまり、薬剤師が関わる「居宅療養管理指導費」については6月から改定となります。

【改定スケジュール】

■短冊・・・報酬点数が記載されていない改定項目の概要
■答申・・・諮問機関(中央社会保険医療協議会)が、諮問を受けた事項について行政官庁(厚                     生労働大臣)に意見を具申すること。




1-2.長期収載品の保険給付の在り方

 2024年10月から「長期収載品にかかる患者自費負担制度」という新しい選定療養が導入されます。これは、「同じ成分、効能効果で価格の安い後発品」を使用できる機会があるにもかかわらず、「あえて高額な長期収載品(=先発品)」を選択する患者に対し、相応の負担(特別負担)をしてもらうという考えに立ち、「長期収載品と後発品との価格差の一部」を保険給付から除外して患者負担となる仕組みです。

1.改定に向けてこれまでの議論

 「改定率の公示」内で、以下の内容が記載されています。

④ 医療制度改革
長期収載品の保険給付の在り方の見直しとして、選定療養の仕組みを導入し、後発医薬品の上市後5年以上経過したものまたは後発医薬品の置換率が 50%以上となったものを対象に、後発医薬品の最高価格帯との価格差の4分の3までを保険給付の対象とすることとし、令和6年10月より施行する。
また、薬剤自己負担の見直し項目である「薬剤定額一部負担」「薬剤の種類に応じた自己負担の設定」「市販品類似の医薬品の保険給付の在り方の見直し」について、引き続き検討を行う。

【「令和6年度診療報酬改定の改定率等について (中央社会保険医療協議会 総会第574回)」より抜粋】


これを踏まえて課題が挙がり、議論されています。

課題①:保険給付と選定療養の適用場面について
〇 医療上の必要性が認められる場合に関して、例えば医療上の必要性により医師が銘柄名処方(後発品への変更不可)をした場合が考えられるが、次のケースについては、どのように考えるか。
  ① 銘柄名処方の場合であって、患者希望により先発医薬品を処方・調剤した場合
  ② 一般名処方の場合
〇 上記に際して、後発医薬品の供給不安を踏まえ、選定療養の適用場面について、どのように考えるか。
〇 院外処方のほか、院内処方、入院時についてどのように考えるか。

→現状:議論中

課題②:選定療養の対象品目について
後発医薬品の上市後5年以上経過したものまたは後発医薬品の置換率が50%以上のもの。
令和6年度薬価改定では、試行的な導入として最小限のものから適用することとし、具体的には、別添3に基づきA区分と評価された企業の品目について、価格帯増加の影響を最小限とするため、以下の対象医薬品のうち、以下の適用条件のすべてに該当する品目に限定して、現行の後発品の改定時の価格帯集約(原則3価格帯)とは別に、該当する品目のみを集約することとする。
<対象医薬品>
  ・ 最初の後発品収載から5年以内の後発品
  ・ 安定確保医薬品AまたはBに該当する後発品(基礎的医薬品を除く。)
<適用条件>
  ・ 後発品全体の平均乖離率以内の品目であること
  ・ 仮に現行ルールにより価格帯集約を行った場合、後発品のうち最も高い価格帯となる品目であること
  ・ 自社理由による限定出荷、供給停止を来している品目でないこと

■ 長期収載品の薬価ルールにおいては、後発品上市後5年から段階的に薬価を引き下げる仕組みになっています。この点を参考に、「後発品上市後5年を経過した長期収載品」を対象品としました。また、後発品上市後5年を経過していなくても、置換率が50%に達している場合には、「後発品の選択が一般的に可能な状態となっている」とみなします。
■ 長期収載品のうち、「後発品上市後5年以上経過または後発品置換率50%以上」を満たす対象成分数は700余りとなっています。(満たさない成分は約30です)
■ 「置換率」とは、「後発医薬品へ置き換え可能な市場における後発医薬品の数量割合」のことで、後発医薬品への置き換え状況を把握する指標となります。計算式は、〔後発医薬品の数量〕/(〔後発医薬品のある先発医薬品の数量〕+〔後発医薬品の数量〕)となります。

課題③:保険給付と選定療養の負担に係る範囲について
保険給付と選定療養の負担に係る範囲について、以下の視点を踏まえ、どのように考えるか。
  ① 患者が長期収載品を選好する場合における患者の負担の水準
  ② メーカーによる薬剤工夫など、付加価値等への評価
  ③ 医療保険財政の中で、イノベーションを推進する観点や、従来とは異なる
    アプローチで更なる後発医薬品への置換を進めていく観点
  ④ 選定療養化に伴い、一定程度、後発医薬品への置換えが進むことが想定さ
             れる中で、現下の後発医薬品の供給状況

→現状:議論中



課題④:長期収載品の選定療養の前提となる後発医薬品の価格について
後発医薬品の最高価格帯との価格差の4分の3までを保険給付の対象とすることとし、令和6年10月より施行する。
長期収載品の保険給付の在り方の見直しとして、選定療養の仕組みを導入し、後発医薬品の上市後5年以上経過したものまたは後発医薬品の置換率が50%以上となったものを対象に、後発医薬品の最高価格帯との価格差の4分の3までを保険給付の対象とすることとし、令和6年10月より施行する。
また、薬剤自己負担の見直し項目である「薬剤定額一部負担」「薬剤の種類に応じた自己負担の設定」「市販品類似の医薬品の保険給付の在り方の見直し」について、引き続き検討を行う。

長期収載品の選定療養において、計算の仕組みが次のように告示されました。

保険外併用療養費に係る療養についての費用の額の算定方法(平成18年厚生労働省告示第496号)

(別表第二)
上欄:
厚生労働大臣の定める評価療養、患者申出療養および選定療養(平成18年厚生労働省告示第495号)第二条第15号に規定する後発医薬品のある新医薬品等(下欄において単に『先発医薬品』という。)の処方等または調剤に係る療養

下欄:
『上欄の療養に係る所定点数(※1)から当該療養に係る診療報酬の算定方法別表第一区分番号F200に掲げる薬剤その他の診療報酬の算定方法に掲げる厚生労働大臣が定める区分に定める点数(※2)を控除した点数(※3)』に、『当該療養に係る医薬品の薬価(※4)から、先発医薬品の薬価から当該先発医薬品の後発医薬品の薬価を控除して得た価格に四分の一を乗じて得た価格を控除して得た価格(※5)を用いて当該各区分の例により算定した点数(※6)』を加えた点数(※7)

【中央社会保険医療協議会第584回総会(別紙8 保険外併用療養費に係る療養についての費用の額の算定方法)】

  ■ この通達の解釈および具体的な計算方法ですが、まず解釈として、

ここから先は

76,589字 / 17画像

¥ 550

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?