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とある夫婦の会話

夫 ハリー
どこの家庭にもよくいるタイプの投資家

妻 ヘンリエッタ
ビジネスやお金には音痴と言われている

ハリーはある朝、何か値下がりのリスクが少なく上がる可能性の高い銘柄はないかと探すため、年間250ドルで購入している株式情報ニュースレターを読んでいた。
そして新聞とニュースレターの両方に、小型株ながら将来性がありそうなディスクドライブの会社が面白そうに書かれているのに気づいた。
ハリーはディスクドライブが何のことやらちっともわからないので、とにかく証券マンに電話し、メリル・リンチ証券の”積極的な買い推奨銘柄”になっていると教えてもらった。
「これが単なる偶然とは思えないな」と彼は考え、一生懸命稼いだ3000ドルをディスクドライブの株に投資するのはたいそうよい考えだと思った。
実際に自分で調べてもいるではないか。

ちょうど妻のヘンリエッタが買い物から帰り、とある女性服店がすごいと話す。

ヘンリエッタ
「お店は大混乱で、販売員は親切でしかもバーゲンで安いんだから。秋用の服をみんな買っちゃったわ。たった275ドルでね」

ハリー
「275ドルだと?お前が浪費してる間に、僕は投資をどうするか家にこもって考えていたんだ。そして絶対確実な話を見つけ3000ドルを投資したよ」

ヘンリエッタ
「自分が何をしているのかをよくわかっているのかしら。過去に買った株のこと覚えてる?あなたの言っていた”確実”な株は半値に下がったのよ。1500ドルも損したじゃない」

ハリー
「ああ、あれは確かに失敗だったな。でも今度は違うよ。『ウォール・ストリート・ジャーナル』は抜群の成長性と言っているし、買わずに見てる手はないよ・・・・・・」

この話の続きは簡単に想像がつくだろう。
ディスクドライブの株は業界の競争が予想以上に激化したため、株価は10ドルから5ドルに下がってしまった。
この一家の投資の責任者であるハリーは、どうしてうまくいかなかったのかがわからないながら賢明な策は売ってしまうことだと考え、損金が1500ドルで済んでよかったと胸をなでおろす。
一方、ヘンリエッタが感激した洋服店の株価は堅調に上昇トレンドを歩み、50セントから9ドルにまで上がった。
さてハリーはディスクドライブの株で損した後でも、まだ例の洋服屋の株で儲けられる時間はたっぷりあったはずなのに、妻の助言を無視し続けた。
ハリーは忙しすぎて気がつかなかった。
彼は石油会社を追いかけるのに忙しかったのだ。

ハリーはついに例の洋服屋の会社が証券会社の推奨株に入っているのを見つける。
その株は3つの経済誌にもよく書かれており、その株は機関投資家のお気に入り銘柄になり、アナリスト30人以上がフォローするようになった。
その時点でハリーはやっとこの株を評価し、これこそ手堅い絶好の銘柄と気がついた。

ある日ハリーは妻につぶやく。

ハリー
「お前の好きだった洋服店の事覚えてるかい。面白いことに、あれは上場している会社だったよ。という事はあの株は買えるんだ。ちょうどテレビ特集で見たんだけど、かなりいい会社みたいだね。雑誌にも取り上げられたらしいよ。退職金のうち、数千ドルくらい投資してみても面白いかもしれないね」

ヘンリエッタ
「でも私はあの店での買い物はやめたわ。最近はどうも高めだし、昔ほどユニークな品物がないのよ。他のお店でも同じようなもの売るようになってるしね」

ハリー
「それがどうしたんだ。僕はくだらん買い物のことを言ってるんじゃなくて、投資のことを話してるんだよ」
とハリーは不愉快そうに答える。

ハリーは結局ほぼ高値の50ドルで買い、その後株価は一気に16ドルまで下がる。
ハリーはなんとか30ドル近辺で売り抜けられたので、大損せずに済ませられたことに満足しなければならなかった。

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