考える。
エッセイが止まっている。
描くのが不安になっている。
どうしてか。
この先の展開で当時のわたしは
「親との全てのことを水に流そう」とする。
その心とは裏腹に
親への憎しみは膨張していく。
そして、「全ては親のせいだ」と
考えるようになる。
◆
作中で「毒親」という表現を避けてきた。
たった2文字で端的に伝わる言葉だから
省略のために使うこともあったが
なるべく避けてきた。
わたしのエッセイを読んで下さっている方の中には
親御さんもいる。
実家暮らしの学生の方もいる。
こんな話を選んで読まれるくらいだから
「今までに何かあった人」や
「いま現在何かあってる人」が多いだろう。
いろんな事情を持った方々が
わたしのエッセイを読んで下さっていると思う。
わたしが両親を
「毒親」とすることで傷つく人もいれば、
わたしが両親を
「毒親」としないことで傷つく人もいると思う。
今後の展開で読む人を
どういう気持ちにさせてしまうのか
不安で手を動かせなくなっている。
◆
**エッセイを描く目的は2つ **
過去の感情と向き合い、整理、浄化し、しずかな心で創作に打ち込めるようになること
読む人に当時の出来事を追体験してもらい、最終的に一緒に立ち上がってもらうこと
どちらも達成するためには
最後まで描ききることが必須だ。
その過程で読む人を不快にさせてしまったとしても
ありのままを描いていくべきだ。
脚色はしても美化はしない。
わたしは自分の描きものの
一番の読み手に
かつての自分を見据えている。
何にも心が動かなくなってしまった きみに、
ただ天井を見つめて死ぬときを待っている きみに、
響かない話なんて描く意味がない。
今後どんなに創作活動を続けて
どれだけの人に認めてもらえたとしても
きみに振り向いてもらえないなら
わたしの作るものに価値などありはしない。
◆
わたしは昔から少年漫画が好きだ。
どんなに苦しんでも
最後には必ず勝ってくれるから。
不幸に苦しむ姿が見たくて物語を観るんじゃない。
不幸の中でも何かを勝ち取る姿が見たくて
物語を観るんだ。
自分のことのように思って応援するから、
自分のための物語だと思うから感動できるんだ。
◆
でも、きみはじぶんのことが嫌いだね。
世の中の、全ての人に向けられた
どんな素晴らしい言葉も、
自分だけは除かれているような気持ちがするだろ。
だんだんと文字が読めなくなってきて、
人の言葉も聞き取れなくなってきたね。
自分の頭の中の声ばかりが
大きく大きくなっていくね。
みんな口を揃えて
きみに「死ね」って言う。
誰からの連絡も絶って
広いベッドの脇に縮こまって泣いている。
床の上に弁当の空き容器が増えていく。
通帳の数字は減る一方だ。
夜中、さみしくて誰かと一緒に死のうと
家の鍵をかけない、不用心な女性を探してはメモして回ったね。
殺さずに済んだのは理性が残っていたからじゃない。
自分が嫌いすぎて、誰かに近づくことすら
申し訳なく感じたからだ。
どこにも居場所がないと思ってるだろ。
自分のためのものが世の中には無いと思ってるだろ。
涙で乾いた目の周りの皮膚は恐竜だ。
心臓が痛い、
心臓が痛い、心臓が痛い、
心臓が痛い、心臓が痛い、心臓が痛い
そうだろ!
わたしだけ は きみの気持ちが分かる。
そして、きみだけ は わたしの気持ちが分かる。
だからどうか わたしに耳を貸してほしい。
わたしが語るすべては
きみのための物語。
きみがわたしになっていく過程を
みんなに見せたいと思っているんだ。
忘れているようなことも細かく細かく思い出すよ。
どんな醜い感情も拾うよ。
でも、約束する。
必ず魅力的に描くよ。
描けるはずだ。
きみがずっと
漫画を描いてきてくれたから。
必ず最後まで描く。
きみは消したい過去なんかじゃない。
わたしに、ずっと
死ぬまでついてきてほしい。
きみがいてくれないと
わたしは何も描けなくなっちゃうんだ。
◆
わたしは他人を優先しすぎる
でも、自分のことを疎かにしているうちに
他人のことも疎かになっていくものだ。
考える、考える。
きみのことを考える。
きみのおかげで描けるのだから。
きみのことを描く。
きみに向けて描く。
考える。
きみのことを考える。
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