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加害者心理 私の体験(2)正義の味方の私が裁きを下した瞬間

「Qちゃんってマジウザいよね」



私が小学校6年生だった頃のある日

Zちゃんが私たちの前でQちゃんの悪口を言ってきた


もちろんZちゃんが突然言い始めたわけではない


当時、私と一番仲のよかったYちゃんがQちゃんの悪口を語っていたときに

「わかる。私も。Qちゃんって本当ウザいよね」

とZちゃんが話の輪の中に入ってきたのだ


一見すると

YちゃんもZちゃんも同意見で

その輪の中にいた私も

同じ意見の持ち主のように見える


でも違う


なにが違ったのか


私とYちゃんは

Qちゃんのこと以上に

Zちゃんのことが嫌いだった


どこがといえば


たいして「嫌い」とも思ってないくせに

Yちゃんに便乗して

「Qちゃんってウザいよね」と言ってしまうZちゃんの軽率で他人に流されやすい部分なんて特に

私とYちゃんは大嫌いだった


だから当然

ZちゃんがQちゃんの悪口を言ってきたその後は

Zちゃんが去った瞬間に

Zちゃんの悪口で

私とYちゃんは盛り上がった


そして

私たちはある計画を立て始めた


多分、提案したのは私の方だったと思う


それが「Zちゃん置いてきぼり作戦」だ


まずZちゃんに

「ねぇ、Qちゃんってムカつくよね。みんなで罠に嵌めない」

と私たちは声を掛けた


すると

Zちゃんは「なにをするの」と聞いてきた


そこで私たちは

Zちゃんに作戦を打ち明けた


「4人でゲームセンターに遊びに行って、Qちゃんだけ置いてきぼりにしちゃおうよ。Qちゃんがゲームに夢中になっているうちに、私たち3人はこっそり駅まで帰っちゃうっていう作戦。どう、一緒にやってみない」


するとZちゃんは少し迷って

「でもQちゃんがかわいそうじゃない」

と言ってきた


私たちは

Zちゃんの率直な意見に対して

こんな理屈で応えた


「でもさあ、Qちゃんってムカつくじゃん。たまにはお仕置きして、分からせることも大事なんじゃないかな」


私たちがこんな滅茶苦茶な理屈で説得を始めると

他人に流されやすい傾向があるZちゃんはすぐに乗ってきた


「そうだね。いいよ」


Zちゃんが私たちの作戦に加わった


この瞬間

私たちの中で

Zちゃんの「罪」が確定した


そう、お仕置きという裁きが下されるのは

Qちゃんではなく

Zちゃんだ


どういうことかというと


Zちゃんがお仕置きしようとしているQちゃんこそが

私たちの仲間だったのだ


だから

作戦当日

置いてきぼりをくらったのは

Zちゃんだった


Zちゃんは

Qちゃんを置いてきぼりにしようとして

ゲームセンターをこっそり抜け出したあと

待ち合わせ場所に指定された最寄り駅で

置いてきぼりをくらったのだ


これこそが私たちからZちゃんへの「罰」

たいした悪意もないくせにQちゃんのことを置いてきぼりにしようとしたZちゃんが悪い


Zちゃんが駅で待ちぼうけをくらっている頃


Zちゃんが仲間だと思っている私たちを探しにゲームセンターに戻ってきたとしても絶対に見つからないように

私たちはZちゃんが一度も足を運んだことのない近くの喫茶店に集まり

作戦の大成功を祝っていた


自分が「罰」を受ける側だとは知らずに

楽しそうに作戦に参加していたZちゃんのことを思い出しながら

私たちは自分たちの正義を語り合った


直前になって

「やっぱりやめない」と言いながらも

駅まで走っていったZちゃんは

やっぱり「悪」だったと

私たちは確認し合い

自分たちの正しさに酔いしれた


このときの私たちは

Zちゃんの気持ちなんて

微塵も考えていなかった


自分たちが思う正義が

貫かれてさえいれば

それで

なにかもがいいのだと

私たちは思い込んでいた

この記事は2015年12月1日に下記のサイトで投稿した記事の転載です
https://izimedarake.hatenablog.com/entry/20151201

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