「堕天追放、魔具バトル!!」第2話

◯森の中・着地点
  マーゴット、ジョバンニに木箱の口を向け、
マーゴット「あなたにはこの森で犯した罪を償ってもらいます!」
ジョバンニ「何の話スか?」
マーゴット「とぼけないで。動物たちを傷つけたでしょ?」
ジョバンニ(なんかすげー誤解を受けてるけど……。まずは異国で言葉が通じてよかった。これが神の恩恵か)
マーゴット「いずれあなたには神の裁きが下るわ。でも私と教会へ行けば、まだ救いのチャンスはあります」
ジョバンニ(追放早々、宗教の勧誘かよ。……いや、まてよ。ここは一か八か)
  と片手の木の棒を投げ捨て、
ジョバンニ「フッ、神なんぞ怖くないね」
マーゴット「なんて罰当たりな!」
ジョバンニ「罰当たり? とんでもない。なぜならオレは、神の国より降臨せし者!」
  とスマホを操作。カミチューブにアクセス。
マーゴット「?」
ジョバンニ「我は天使ジョバンニ。そして刮目せよ。この方こそ、この世界の女神様その人である!」
  とスマホをマーゴットに突きつける。画面にはタリンちゃんねるの動画。動画内のタリンが動き出す。
タリン『イエーイ! ハローカミチューブ! わしはタリンちゃんねるの~タリンちゃんどぅえ~す!』
マーゴット「!?」
タリン『今からこのコーラにメン◯スを入れて、耳に差し込み、反対側の耳からブシューと吹き出すのじゃ! それではレッツゴー!』
  とメン◯スコーラを作り、ペットボトルを右の耳穴に差し込む。そしてガタガタと震えだし、
タリン『ギャー!(両目からコーラを噴射)』
マーゴット「え、え、えっ?」
  ジョバンニ、焦る。
ジョバンニ(何だこれ? 神の威厳もクソもねえ! これじゃ余計に怪しまれるかも……)
マーゴット「絵が動いてるー!!」
ジョバンニ(ん~結果オーライ!)

◯同・小道
  森の道を歩く二人。マーゴット、スマホを片手に、
マーゴット「不思議な板ですね。でも本当は、中に小人さんが入っているのでは?」
  とスマホをブン回す。
ジョバンニ(小人入ってる前提でその扱い……。意外と荒っぽいぞ、この人)
ジョバンニ「で、信じてもらえましたか? オレが天使ってこと」
マーゴット「ええ。この奇妙な道具といい、空の上から落ちてきたという話にも納得できました」
  と立ち止まり、スマホをジョバンニに返す。
ジョバンニ「じゃあ、オレの疑いは晴れたかな?」
マーゴット「もちろんです(ニッコリ)」
ジョバンニ「よかったー」
マーゴット「ですが、天使様も地上での悪事は見逃せないはず。共にこの森で起きている怪事件を解決しましょう」
  マーゴット、胸に手を当て、
マーゴット「私はシスター・マーゴット。この美しいクリスタル島の自然を愛する、女神様の信徒です」
ジョバンニ「オレは天使ジョバンニ。よろしくっス」
  と握手し、また歩き出す。
ジョバンニ「で、この森で起きている事件ってのは?」
マーゴット「はい。最近この森では、小鳥さん中心に小動物を狙った襲撃事件が相次いでいます。ですが最近、動物の被害がいくつか場所に集中してることに気づいたのです」
ジョバンニ「つまり犯人は、特定の犯行現場を周回してる?」
マーゴット「そうです。その場所を警戒して、私は定期的に見回りを……」
  と小鳥の悲鳴「ピー!」。
マーゴット「!?」
ジョバンニ「今のは?」
マーゴット「こっちです!」
  と走り出す。

◯同・広場
  マーゴットとジョバンニ、藪をかき分け、森の広場に出る。地面に傷ついた小鳥が一羽。周りには血が点々。
マーゴット「まあ、大変!」
  と駆け寄る二人。マーゴット、小鳥の側にしゃがみ、
マーゴット「よかった。まだ息がある」
  と木箱の蓋を開け、傷ついた小鳥を手ですくい上げる。
ジョバンニ「いったい何を?」
マーゴット「これは――」
  と木箱の中に小鳥を寝かせ、
マーゴット「魔具と呼ばれる、魔法の道具です」
ジョバンニ(やはりこれが……)
マーゴット「この箱は【時忘れの小箱】。別名をタイム・パラボックスといいます。こうして鳥さんを寝かせて、ダイヤルを回すと」
  と木箱の蓋を閉じ、側面のダイヤルを左に回す。
マーゴット「傷ついた生き物を――」
  と木箱の蓋を開ける。中には元気になった小鳥の姿。
マーゴット「傷つく前の姿に戻すことができる。私の魔具は、癒やしの力を持った特別な授かり物なんです」
  と背後で拍手の音。その音で小鳥が飛び立つ。ふり返る二人。後ろにはチンピラ三人組。ボスのお河童頭、手下のチビとデブ(背中に籠を背負っている)。
  お河童、三人組の中央で拍手。
お河童「ブラボー! ようやく会えたぜ、シスター魔具使い」
デブ「い、い、意外と可愛いんダナ」
チビ「男連れだぜ。諦めな」
  ジョバンニ、三人を見て、
ジョバンニ(厄介なのが来たな)
  マーゴット、困惑して、
マーゴット「あの……あなた達はいったい?」
  お河童、腰に差したパチンコを取り出し、
お河童「これ見てわかんね~?」
マーゴット「ま、まさか! あなたたちが!」
お河童「大変だったぜ。アンタ探すの」

◯(回想)街中
  人通りの多い道。マーゴット、足を引きずる犬に気づく。
お河童N『最初に街でアンタを見かけたときは驚いたぜ』
  マーゴット、箱の口を犬の足に押し当てる。
お河童N『アンタはその箱で、足の悪い犬を治しちまった』
  嬉しそうに駆けていく犬。お河童、驚いた顔で犬を見る。
お河童N『魔具について噂では聞いたことあるけど、見るのは初めてでよ』
  お河童、マーゴットのいた場所に視線を戻すと彼女がいない。
お河童N『あの箱がほしい。そう思ったときには、アンタは人混みに消えちまった』

◯元の広場
お河童「だが俺は諦めなかった。考えたぜ。アンタを見つけるために頭を絞って」
  と指パッチン。
お河童「この方法を思いついた。森の動物を傷つけて、街に噂を流したらイイんじゃね?ってな。まさか本当に引っかかるとはね~」
チビ「さすがボス!」
デブ「あ、あ、頭イイ!」
  マーゴット、立ち上がり、
マーゴット「なんて真似を! あなたたち、許しません! 自分の犯した罪をよ~く反省してもらいます!」
  と木箱に丸い粒をそっと放り込み、箱の口を三人に向ける。
ジョバンニ(なんだあれ? 粒?)
お河童「ヒョ~怖い。だけどそんな口利いていいの~?」
  とお河童、デブを見る。デブ、背負っていた籠を下ろし、中から網袋を出す。袋の中には震えるウサギたち。
お河童「ほ~らね」
マーゴット「……人質ですか。最低ですね」
  お河童、網袋を掲げて、
お河童「さあ、その魔具をこっちによこせ。そしたらこいつらを返してやる」
マーゴット「くっ……」
ジョバンニ「……(マーゴットを見る)」
  マーゴット、肩から紐を外し、箱を手に持つ。
お河童「投げろ」
  マーゴット、お河童の前に箱を投げる。
  お河童、魔具を拾い上げ、
お河童「へへ、やった。ほら持ってけよ」
  と網袋を地面に放り投げる。
  マーゴット、慌てて網袋まで走り、しゃがみ込み、
マーゴット「本当にひどい人!(にらむ)」
お河童「行こうぜ。こりゃ高く売れるぞ」
  と三人組、広場を出ていこうとする。
ジョバンニ「ちょっと待ったー!」
マーゴット「!?」
お河童「あぁん?」
  ジョバンニ、三人組の方へ歩き出す。マーゴットの横を通り過ぎるとき、そっと彼女にウインク。
マーゴット「?」
  ジョバンニ、お河童の前に立つ。
チビ「なんだテメー。さっきまで黙ってたくせに」
ジョバンニ「その魔具には、まだ秘密がある」
お河童「秘密? 何だそりゃ?」
ジョバンニ「知りたいか? なら条件がある」
お河童「条件?」
ジョバンニ「オレを街まで連れて行ってくれ」
お河童「ハァ?」
ジョバンニ「(小声で)実はオレ、あの女に付きまとわれて困ってんだよ。オレのことを犯人扱いして、森の中まで追いかけてきやがった」
お河童「マジか? きめえな」
デブ「あ、あ、あんなに可愛いのに」
チビ「人は見かけによらねえのさ」
ジョバンニ「オレ、この土地に来たばかりでさ。一人じゃ街まで行けないし助けてくれよ」
お河童「チッ、しょうがねえ。だが魔具の秘密が先だ。じゃないと案内はできない」
ジョバンニ「そうか。じゃあ、それ(魔具を指し)ちょっと借りていい?」
お河童「ダメだ。口で説明しろ」
ジョバンニ「実物触らなきゃムリだよ。オレあんたみたい頭良くないし。説明とか苦手でさ~」
  お河童、まんざらでもなさそうに、
お河童「ったく、バカはこれだから。ほら、説明してみろ」
  と木箱をジョバンニに渡す。
ジョバンニ「ありがとう。オレ、あの女を見て気づいたことがあるんだ」
  と木箱のダイヤルを指し、
ジョバンニ「このダイヤル。左に回すと、箱の中の傷ついた動物が回復する。まるで時を戻すみたいに」
  と今度は手に隠し持った木の実を三つ見せ、
ジョバンニ「さて、ここで問題です。この木の実を中に入れて、ダイヤルを右に回すと」
  と木箱に木の実を入れ、箱の口を三人に向け、
ジョバンニ「果たしてどうなるでしょうか?」
お河童「……!?」
チビ「なんだ? 何がどうなるんだ?」
お河童「お、おい、やめろ!」
チビ、デブ「?」
  ジョバンニ、ニヤリ。
ジョバンニ「どうなるかって? バカがひでえ目に遭うのさ。じゃあな!」
  とダイヤルを右に。魔具の力で木の実が一気に成長。木箱の口から螺旋状に絡まった三本の樹木が飛び出し、三人組を撃退。
三人組「ギャー!」
  ジョバンニ、唖然。
ジョバンニ「……これが魔具の力か(ゴクリ)」
  と空を見上げて、
ジョバンニ(おもしれえ……。やってやんよ、クソ女神!)

◯天界・タリンの書斎
  タリン、イカの帽子を被りながらス◯ラトゥーンに熱中。
タリン「クソー! な~んでわしの弾だけ当たらんのじゃ~!」
ジョバンニN『テメーの望み通り、この世界の頂点に立ってやる! 堕天上等、魔具バトルの開幕だ!』

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