「レッドスカーフ・ジンジャーガール」第2話

◯西の森・小さな広場(夜)
  消えた焚き火を挟んで対峙するゴライアス(以下ゴラ)&巨大犬、バージニア&ヒューイ。
ゴラ「どうした? 怖気づいたか?」
  ヒューイ、敵をにらみ、
ヒューイ(奴らを倒す方法は二つ。一つは語り部と魔獣、両者の心臓を同時に破壊すること)
  ヒューイ、バージニアの腰の後ろの銃を見て、
ヒューイ(もしくは魂命弾を使って、どちらかの心臓を撃ち抜くこと)
  両チームの対比。小柄なバージニア&ヒューイ。モーニングスター(以下MS)を担ぐ巨漢のゴラ&巨大犬。
ヒューイ(おそらく前者は不可能だ。力の差は歴然。体格が違いすぎる)
  ヒューイ、バージニアの横顔を見て、
ヒューイ(チャンスがあるとすれば銃を使う方法だが……。バージニアは嫌がるだろうな)
  魂命弾とジェイコブ&ミンディの関係図。
ヒューイ(魂命弾は人の命同然。使えばジェイコブかミンディ、どちらかの寿命が犠牲になる)
  ヒューイ、敵をにらみ、
ヒューイ(いずれにせよ、語り部と魔獣、両者の繋がりを断たなければ奴らは何度でも蘇るのだ)
  ヒューイ、小声で、
ヒューイ「いいか。自分たちの命が優先だ。だから今回は……」
バージニア「(敵を見たまま)わかってる」
ヒューイ「オレがデカブツを引き受ける。銀弾一発でケリをつけろ。それがベストな方法だ」
バージニア「爺さんとの約束がある」
ヒューイ「あの鎧を見ろ。鉛じゃ通らねえよ」
バージニア「(ヒューイを見て)だけど!」
ヒューイ「それにミンディだって爺さんと暮らしたいはずだ。たとえ寿命が減ったとしてもな」
バージニア「……わかった(再び敵を見る)」
ゴラ「何をゴチャゴチャと……。来ないならこっちから行くぞ。(巨大犬に)行け!」
  巨大犬、バージニアに飛びかかるが、ヒューイがタックル。
ヒューイ「お前の相手はオレだ!」
ゴラ「タイマンか。いいだろう」
  とゴラ、バージニアの前に来て、
ゴラ「まずは小手調べだ!」
  とMSをバージニアに振り下ろす。だが空振り。地面が砕ける。
ゴラ「!?」
  バージニア、素早く跳躍し、ゴラの頭上に回避していた。鉄兜を刀で斬りつける。しかし無傷。
ゴラ「いい動きだ。だがそんなヒョロイ刃物じゃ傷一つ付かねえぞ」
  一方ヒューイ、少し離れた所で巨大犬と対峙。両者にらみ合う。ヒューイ、体を回転させ、後ろ足で焚き火の燃えカスを蹴り飛ばす。26の目を持つ巨大犬、沢山の目に当たり怯む。
ヒューイ「それだけ目があると瞑るのも大変だな」
巨大犬「グルルル」
ヒューイ「ほら、もういっちょ」
  と再び回転。すかさず巨大犬が飛びかかる。
ヒューイ(かかった!)
  ヒューイ、身を翻し、高く飛ぶ。巨大犬の顔をかみちぎり、敵の背後に着地。巨大犬、ヒューイの方を向く。顔の肉が削げ、目が三つない。
ヒューイ「返してほしいか?」
  と舌を出す。舌の上に目玉が二つ。
ヒューイ「(地面に目玉を吐き出し)ほらよっと。あ、いけね」
  と目玉を一つ前足で踏み潰す。
ヒューイ「わりぃ。わざとじゃないんだ。ほれ、もう一つ」
  ともう一方の目玉も踏み潰す。
ヒューイ「今のはわざとだ(ニヤリ)」
  激怒する巨大犬。
ヒューイ「オイ、冗談だって! マジに取んなよ!」
  とヒューイ、森の中に逃走。後を追う巨大犬。

◯西の森・ヒューイ側(夜)
  ヒューイ、逃げながら、
ヒューイ(これでバージニアが戦いに専念できる。問題はこいつをどうするか、だ)

◯同・バージニア側(夜)
  バージニアとゴラ、小さな広場から移動。森の中で戦闘中。
ゴラ「逃げてもムダだ」
  とゴラ、MSをなぎ払う。バージニア、しゃがんで回避。MSが木にめり込む。その隙にバージニア、ゴラの右の籠手を攻撃。
ゴラ「だから効かないと言っている」
  ゴラ、木からMSを抜き取る。バージニア、別の木の陰に隠れる。
ゴラ「今なら許してやる。大人しく神話の断片を置いていけ」
  とゴラ、バージニアの隠れた木の裏に回る。すると木の根元に一枚の紙を発見。
ゴラ「お、ようやく観念したか」
  と紙を拾い上げて裏返す。そこには「バーカ」の文字。
  と木の上から大きな石が落下。ゴラの頭に直撃。木の上ではバージニアがアッカンベー。
ゴラ「テ、テメエ!」
  ゴラ、渾身の力で木をなぎ倒す。バージニア、見事に着地。
ゴラ「やっぱり許さねえ。ぶっ殺してやる!」

◯同・ヒューイ側(夜)
  ヒューイ、巨大犬から逃走中。
ヒューイ「しつこいな。だが、あと少しだ。あと少しで……ここだ!」
  と大きく跳ぶ。着地し、後ろの巨大犬の方を向く。
ヒューイ「さあ来い、バカ犬!」
  巨大犬、ヒューイの少し手前でピタッと止まる。
ヒューイ(感づかれたか? いや、もう一押し)
  とヒューイ、ベーと舌を出す。舌の上には目玉がひとつ。巨大犬、激怒し飛びかかる。だがそこには、ジェイコブのしかけた跳ね上げ式の捕獲網が。巨大犬、網に吊り上げられ、もがく。
ヒューイ「サンキュー爺さん。アンタの罠、役に立ったぜ」

◯同・バージニア側(夜)
  刀を構えるバージニア。だいぶ疲れている。
ゴラ「そろそろ終わりにしようぜ」
  とゴラ、MSを振り下ろす。バージニア、左にかわし、再び右の籠手を狙う。だがゴラ、MSからパッと手を離し、バージニアの刀を、右の籠手で受け止める(籠手にヒビが入る)
バージニア「!?」
  怯むバージニア。すかさずゴラが彼女の腹を蹴り飛ばす。
バージニア「ぐっ!」
  バージニア、木に叩きつけられ、刀を落とす。木の根元に寄りかかるように倒れ込む。
ゴラ「勝負ありだな」
  とMSを拾い、振り上げるが、バージニアが腰の後ろから銃を取り出し、ゴラに向ける。
ゴラ「なっ!?」
  だがバージニア、撃たずに銃を投げつける。ゴラが怯んだ隙に刀を拾い、倒れた姿勢のままゴラの右手を斬りつける。刃が籠手のヒビに食い込み、血が噴き出す。だが手首の3分の1ほどしか斬れず、止まってしまう。
ゴラ「ったく、何なんだよテメエ。何がしたい?」
  と左手で刀を奪い、投げ捨てる。
ゴラ「スッキリしねえが負けは負けだ。素直におっ死ね」
  と拾ったMSを振り上げる。そのとき遠くからヒューイが走ってきて、
ヒューイ「バージニア! 逃げろ!」
  だがゴラのMS、バージニアの頭を打ち砕く。
ヒューイ「貴様ァ!」
  飛びかかるヒューイ。ゴラ、これを返り討ちにする。
ヒューイ「グハッ」
  横っ腹に打撃を食らい、地面に転がるヒューイ。
ゴラ「忠犬だな、狼。ますます欲しくなったぞ。お前に残された選択肢は二つ」
  ゴラ、ヒューイの前でしゃがみ、彼の胸にMSをあてがう。
ゴラ「俺様と契約するか、もしくは小娘と共に心臓をすり潰されるか。好きな方を選べ」
  荒い呼吸のヒューイ、顔が潰れて悲惨な状態のバージニアを見る。
ゴラ「さあ答えろ!」
ヒューイ「……すべての記憶を失ったあとでも」
ゴラ「?」
ヒューイ「その子は諦めませんでした。たとえ行き着く先が地獄の底であろうとも」
ゴラ「お前、何を……」
ヒューイ「彼女は歩き続けるでしょう。真実を知る、その日まで」
  ゴラ、ヒューイの荷物入れから漏れる光に気づく。
ゴラ(あれはグルム神話の紙片が放つ光? ということは、この狼が語り部! じゃあ、あの娘は……)
  ゴラの背後に立つ人影。刀が振り下ろされ、ゴラの右籠手を切断する。
ゴラ「があああ!」
  ゴラ、右手ごとMSを失う。MSを拾い上げる人影。それは復活したバージニア(顔は血まみれ、額に亀裂)
ゴラ「バカな、あり得ない! 神話上の魔獣が人間だと! そんな話は聞いたことが……」
  とバージニア、ゴラの側頭部をMSで強打。ゴラ、吹っ飛ぶ。
  ヒューイ、立ち上がり、落ちていた銃をくわえ、
ヒューイ「まったく、ヒヤヒヤしたぜ。さあ、バージニア。トドメを」
バージニア「嫌だ!」
ヒューイ「何だって?」
バージニア「魂命弾は使わない。ミンディと爺さんは末永く幸せに暮らすんだ」
ヒューイ「正気かよ!」
  と遠くで巨大犬の遠吠え。
バージニア「私とヒューイならやれる。あの怪物を二人で倒せる」
ヒューイ(議論してる暇はねえか)
ヒューイ「クソッ、この甘ったれが!」
  とヒューイ、仰向けで倒れているゴラのプレートアーマーにかみつき、緩んでいる胸部パーツを引き剥がす。露出した胸を爪で引っかき、
ヒューイ「これで文句ねえだろ。オレが時間を稼ぐ。早くケリをつけろ!」
  と後方から迫り来る巨大犬に立ち向かう。
  バージニア、腰に下げた革袋から鉛玉を取り出し、
バージニア「爺さん。借りるぞ」
  とゴラの胸の傷に弾を押し込み、刀を構える。朦朧としたゴラ、割れた鉄兜から怯えた目で、
ゴラ「な、何を……」
バージニア「ミンディとジェイコブからの伝言だ」
  ヒューイ、巨大犬と取っ組み合うが力負けし、弾き飛ばされる。巨大犬、バージニアに飛びかかる。
バージニア「くたばれ野良犬、地獄に落ちろ!」
  と刀の先端で鉛玉を胸に押し込む。魂命弾が心臓に到達。バージニアの背後で、巨大犬が紙吹雪のように霧散し消える。
  ヒューイ、大の字で寝転ぶバージニアに近づく。バージニア、サムズアップして、
バージニア「余裕だったな」
ヒューイ「ボロボロじゃねーか」
バージニア「爺さん生きてるかな?」
ヒューイ「たぶんな。多少弾が溶けたかもしれんが平気だろ」
バージニア「そうか。……少し寝るわ」
ヒューイ「そうしろ。あとで運んでやる」
バージニア「ん(うなずく)」
  ヒューイ、即座に寝入るバージニアを見て、
ヒューイ「まったく。手のかかる妹だぜ」
ヒューイ(しかしこんなやり方だと身が持たねえ。オレたちには仲間が必要だ)

◯魔女の山・リズの家(夜)
  森に立つ家。窓にはシャワーを浴びる魔女リズの影が。
リズ「フンフフーン♪」
ヒューイN『死者の魂から魂命弾を作り出せる、特別な力を持った仲間が……』

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