第十三回 柳田選手の隠れたテクニック (2021年1月22日)

今回は、ソフトバンクホークスの柳田選手のパワフルなバッティングとスパイクの底について、例によって「捻りモデル」の立場から考えていこうと思います。

柳田選手は、非常に華があり見ていて応援したくなる楽しい選手です。
しかも打撃フォームが、「捻りモデル」に則っていると見えるので、応援には更に力が入ります。それでは昨年(2020年)のバッティングフォームを見ながら、ポイントについて見ていきましょう。

スライド1

これはシーズン終盤に、楽天イーグルスと対戦した時の映像です。高く構えたところから、幾分低めの内角球をホームランにした時のものです。

スライド2

前足のつま先を、レフトの方向に向けてClosedにステップしたのがわかります。また最初高く構えた位置からバットを下げて寝かせて構えました。
ここから上体がバットを引っ張って体幹に力を溜めていきます。

スライド3

内角の球に対して、バットを寝かせて構えた位置から球の高さに対して、イメージした「仮想面」上をバットが通っているのがわかります。
「上から叩く」とか、「バットのヘッドが下がらないように」などという意識は微塵もなく、すくい上げる軌道で打っています。これは第七回で説明した理想的なバットの軌道である通りで、実に痛快です。
前足に体重はしっかりと移動され、つま先はまだレフト方向を向いています。

スライド5

ボールを打った後に上体が前を向いています。前足のつま先は前を向き始めています。
ここが凄いとこですが、前足に体重を乗せて強い打球を打ったにも関わらず、直後に前足のかかとを中心につま先を開くことで、股関節や膝を捻る動きを回避し力を逃しています。このように一瞬体が宙に浮いているような状態に見えるのは柳田選手の特徴ですが、それはしっかり体重移動し、上体を前に向けて打つ際に、前足つま先をずらすことで膝や股関節の負担をやわらげているからと思います。

スライド6

更に前足のつま先は外に向き力を逃しています。

スライド7

Josh Hamiltonに、この様な力を逃す技術があれば、膝の負担はもっと軽く故障を防げたかもしれません。

打った直後に、体重移動した前足をずらしながら、膝や股関節の負担を減らす動作は、故障を回避しながら強打を維持するのに有効であると考えます。その様な動作をするには、スパイクの歯は余り深くない方がいいでしょう。いっそのこと、スニーカーのような底でも良いのではないかと私には思えます。

上の写真では、柳田選手の前足の裏が少し見えています。どの様なスパイクを履いているのでしょうか。

柳田選手は、特別に股関節可動域が大きい様にも見えないので、膝や足首、アキレス腱などを捻らないように、いかに力を逃すか気をつける必要があるのではないかと思います。室内のエポキシやウレタン床などグリップの強い場所で、足首を痛めなければと思います。

スライド8

打った直後にホームランとわかる当たりでした。ピッチャーには受難です。しかし「捻りモデル」に則った打ち方をする選手が増えることで、強打の選手も増えていくと予想します。

柳田選手は、時折レフトポール際に「こんなスイングで」と言われながらホームランを打つことがあります。そのような場合は、第六回で説明した大谷選手の大ファールと同様にヘソの方向に打っているので、「捻りモデル」から見ると理に適っています。

ところで私は柳田選手とは面識もありませんし、柳田選手が意識して「捻りモデル」を取り入れているのかどうかも私にはわかりません。「捻りモデル」についてコメントしたという事も聞いたことはありません。
しかし客観的な観察に基づいて、その動作が「捻りモデル」に則った動作であり、選手が結果を出せているというのであれば、6年前には仮説であった「捻りモデル」の有効性は、NPBにおいても実証されたと考えても良いでしょう。

全ての例は紹介できませんが、特にパリーグのホームランバッターは、概ね「捻りモデル」の動作を取り入れて打っているものと思われます。
第四回の説明を見てから確認してみてください。

次回は、昨年のMLBホームランキングのLuke Voitの打撃を見ていこうと思いましたが、Hank Aaron逝去の報に接し、急遽Hank Aaronについて書くことにしました。


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