第十八回 前を向き始めた大谷選手(2021年2月26日)
「第六回 大谷選手のスランプと回転モデルの罠」で説明した通り「捻りモデル」の立場から見ると、昨年の大谷選手の不信は、ヘソベクトルの方向と打球方向がずれている事から説明できました。また解決策としては、特に苦手として攻められている内角低めに当てはまりますが、少しオープンにステップし、上体が前を向くことでヘソベクトルと打球方向を合わせることであるとも説明しました。
キャンプでのフリーバッティング映像で見る限り、大谷選手は、大胆にバッティングフォームを、良い方向(「捻りモデルの理想形」に近い方向)に変えているようです。
Yonekuraさんの映像からご紹介しましょう。リンクは下記の通りです。(大谷翔平フリー打撃30スイング中 6本柵越え!)
幾つかの映像から、上体でバットを引っ張って体幹にエネルギー(以下「力」とします。)溜めて、ヘソベクトルを前に向けて打っているのがわかりやすいところを見てみましょう。
グリップについては、この映像では昨年と変わっていません。
ユニフォームのしわから、体幹に捻りが入っているのがわかります。
上体が前を向きバットを引っ張って体幹に「力」が溜められているのがわかります。黄色の矢印の通り、ヘソベクトルも前を向いています。従来の「回転モデル」理論に基づいて、「上体が開いている」と言う人がいるかもしれませんが、言わせておきましょう。前足に体重がかかって地面から外れてなければ、体幹の「力」は抜けません。
ヘソベクトルが前を向いて打ったので力負けしていません。第九回で説明した通り、Top hand(右手)は従来と変わらず「力」の伝わらない持ち方ですが、Bottom handは手首が曲がっていないので良いと思います。
上体でバットを後ろから前に引っ張って体幹に溜めた「力」をボールに伝える直線的な動作を組み入れた結果、両腕が前に真っ直ぐ伸びています。
大谷選手が両腕を伸ばして打つイメージはなかったのですが、これはとても良い形だと思います。
他の画像でも、比較的インステップではありますが、上体がバットを引っ張りながらリードし前を向いて打っているのがわかります。
フィニッシュの状態では、体重を右足に乗せたまま、つま先がずれて前を向いて膝などへの力を逃しているのがみて取れ、良いと思います。
別の画像を見てみましょう。これはインサイド低めを想定してスイングしたところでしょうか。
左足に体重を乗せてボールを待っているイメージでしょうか。「第八回 体重移動とStay Back」で紹介した、バリー・ボンズの打ち方をイメージしているのであれば、いっその事、低く構えるところまで真似して欲しいところです。
意識して右足を少しオープンにステップしているのがわかります。
日本刀を握るようにバットを握り、「第七回」で説明した通り立てたバットを大胆に寝かせて引っ張ればと思ってしまいます。バットの軌道については、まだ試行錯誤が続いているようにも見えますが、まずは体重移動をしっかりしているか、上体がバットを引っ張ってヘソベクトルが前を向いているかどうかが大切です。
体重は前足にしっかりと移動しています。上体は前を向いてバットを引っ張り体幹に力を溜めているようです。
内角低めの直球をすくい上げて打つ軌道を意識しているのでしょう。内角低めには、爪先が開きながらでもいいから、上体をもう少し前に向けて打ってはと思います。
しかしヘソベクトルも、概ね前の方を向いているので、昨年より全然良いと思います。
他の映像では、グリップや、打つ方向によっては、ステップの角度などを模索しているように見えるところもあります。とにかく昨年と打ち方を大胆に変えてきているので、開幕が楽しみになってきました。好調を維持したままシーズンに入って欲しいです。
次回は、いつの間にかMLBが決めていた低反発のボールへの変更について、例によって「捻りモデル」の立場から考察したいと思います。
(追記 2023年4月25日/ April 25, 2023)
For those who came this site from overseas, I uploaded summary PDF of the Twisting model study I wrote in 2017 as below.
Happy baseball
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