北半球と濁点
キャップのてっぺんに生えている、あの帽子のへそが羨ましい。あそこは太陽に1番近い場所。気ままに昼寝をした後は、雀に啄まれてどっかに行ってしまえば良いのに。あんなに目立つへそなのに、カミナリ様はどうして攻撃対象から外しているのだろう。
「こちらは無料の音声合成ソフトです。なんかもうすっごく腹が立った。こちらは無料の音声合成ソフトです。」
無料の音声合成ソフトに怒りを吐き出させるとお腹が空いたので、近くのコンビニエンスストアへ歩いた。ハムとカツとハムカツを購入し、「もう最新号出てたんだ」と何気なくファッション雑誌を開くと、そこにはキャップでびしっと決めたカミナリ様の姿があった。
キャップにはヨガをしているナカムラくんの缶バッチが隙間無く付けられている。あれはきっと商店街の福引きで貰った缶バッチメーカーで作ったやつだ!あのホビーが未だ現役、そうか、物持ちの良さがカミナリ様の若さの秘訣だったのか!
「こちらは無料の音声合成ソフトです。 Aボタンは角砂糖、Bボタンは塩飴だから、甘いとしょっぱいでバランスが良い。十字キーはプラスチックにするのが風水的におすすめ。こちらは無料の音声合成ソフトです。」
合点がいった後に入力する文章は、キャップのつばのように、どこか前を向いているのだった。有料版買おう。
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