パンコメ対談20200117「『ポスト・サブカル 焼け跡派』発売直前です!」

パンス 『ポスト・サブカル焼け跡派』発売が近づいております!いろんな方に会うたびに、「もう本屋にある?」「まだ?」と問い合わせ頂けてうれしいです。そして分かりづらくてスミマセン。1/31に発売です!何卒宜しくお願いします〜。コメカ君はどうですか。発売に向けて所信表明など……。やっぱ年始だし、首相も所信表明するし。

コメカ 首相所信表明。「全力を尽してこの大任に当るかたい覚悟と決意」、岸信介(笑)。まあ『ポスト・サブカル焼け跡派』って、一体何の本なんだろう?って思ってる人もいるかなあと思ってて。そのあたりについて、こういう本です!っていう表明をね、したいですね今回は。

パンス 正月に実家で「本出すんだってな。どんな本なんだ!」って問い詰められて答えに窮しました。著者なのに(笑)。日本のサブカルチャーの歴史を取り上げているのですが、取り上げている時代の範囲がやたら長い、というのが本書の特徴になるかと。1970年くらいから現在まで。で、その間に何があったのか、人々の精神がどう変わっていったのか(もしくはどこが変わっていないのか)、といったことを、その時代を彩ったミュージシャンを軸に据えながら話しています。

コメカ 日本では70年代にプレ・サブカルチャー的なものが勃興し、80年代に日本的サブカルとして形になり、90年代からゼロ年代にかけてそれが前景化、しかし2010年代に入ってから徐々に状況が綻んでいく…みたいな歴史認識をぼくらはしていて。その流れを、個々のアーティストが時代のなかでどんなキャラクターとして機能していたのか、ということを確認しながら浮き彫りにしていこう、という試み。大きく言ってしまうと、70年代以降の日本的サブカルチャーの終わりを確認する、みたいな作業だったとぼくは思ってる。

パンス で、そのサブカルチャーの成長と終わりというのは、日本史上でいうならば「ポスト戦後社会」の始まりから現在、という流れにほぼ一致している。おおまかにはそんな社会の動向を僕、そこで機能していた「キャラクター」への分析をコメカ君、という役割分担で進めていったね。と書くとややこしい内容っぽいですが、2人の会話でじわりじわりと進めているので読みやすいと思います! アーティストの振る舞いと社会の動向がぶつかって何かしら物議を醸す、というのはここ数年のネット上などでよく見られるけど、それを歴史を遡って徹底的にやってみた!という部分もあると思います。これをきっかけにより議論が進んだら幸いです……。

コメカ うっす。コメカが国分寺駅そばで営む本屋、早春書店でももちろん販売します。早春書店限定の購入特典についても、まもなく発表しますのでよろしくお願いします!で、あと内容についてだけど、特定の音楽ジャンルとかコミュニティに依存した語り方はしたくなかった、っていうのがあるのよね。矢沢永吉も江戸アケミもX JAPANも大森靖子も同時に俎上に乗せたかったんだよね。それらのアーティストやその周辺状況をガーッと縦の線で語っていくことで、戦後サブカルチャーの大きな流れ・精神史を自分たちなりに書いてみたかった。そのために、個々のアーティストそれぞれに対する各論述も、持ってるアイデアは全部投入したつもり。で、まあ読んでいってもらうと、「焼け跡化」していく日本サブカルのプロセスというのは実感してもらえるんじゃないかと思ってる。

パンス 目次に取り上げたアーティスト名が載っていますが、このような並びはいままでの音楽関連の書籍や雑誌にはなかったと思います。一見するとなんでだ!? って思うだろうけど、読んだら合点がいくはずです! 「特定の音楽ジャンルやコミュニティ」という話でいえば、こんどコメカ君がゲストで出るイベントのテーマ「たりない音楽」というのは新鮮な切り口だなと思った。まさに特定のものに依存していない……! 面白そうだね。

コメカ そうそう、1月26日(日)に下北沢HALFで行われる4×4=16さんの企画「4×4=¥1,600(ドリンク込) vol.2」に、コメカがトークゲストで出ます。それのテーマが「たりない音楽」で。4×4=16カンノさんとSOMEOFTHEMオノウエさんによるイベントイントロダクションがコチラで読めますので是非。面白いです。でまあ、ぼくにとっての「たりない音楽」ってのは、演者がビジョンとして思い描いている形に、様々な理由で到達していない音楽ってことなんだよね、ざっくり言うと。それはかつての日本においてはそれこそアメリカやヨーロッパを眺める視線と、それを参考にしつつも追いつかない自分たちの技術性や身体性みたいなものとしてあったわけで。ただ、そういう「内と外」みたいな関係性そのものがあらゆる意味で崩壊してきている現状では、そういう「たりなさ」はどうなっていくのか……みたいなことを考えたりお話したりしたいな~と思ってます。

パンス 崩壊というか、身体性が海外のレベルに追いついてしまっているという部分があるかもね。しかし、そんないまだからこそ、ドメスティックな音楽を分析してみることが重要になるかもしれず、興味深いです。みなさんぜひ!

コメカ よろしくお願いします!というわけで、では今週のおススメ曲を。ぼくはこれ、

SLIME CITY「YOU AND EVERYBODY THAT YOU LOVE WILL ONE DAY DIE」。これは本当に単なる自分の好みでしかない選曲なんだけど(笑)。ゼロ年代に活動していたグラスゴーのWe Are the Physicsというバンドの元メンバーたちがいま現在やってるバンド。ポップなポストパンクサウンドって感じで。個人的音楽の好みとしてはこういうのがどうしても好きなんですよね。

パンス じゃ、僕は去年のベストから一曲。カナダのアーティストです。


ジャンル問わず脱力した音楽が好き。こういうのもっと聴きたいので、おすすめあったら教えて下さい! それではまた。

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