白い夏


ずっと、だまって、生きている、カメがいた。


「おはようございます、いいお天気ですね。」

魚や、鳥たちがはなしかけると、にっこりと、しずかに、わらいかける。


たいていは、しあわせそうに。

ときおり、くもった顔をして。

カメは、そこに、いた。


カメは、ずっと長い間、地球の声をきいていた。


あるお祭りの、前の日のこと。

カメは、むっくりと、顔をあげた。

そして、『を――――――――――――』と、口から、声にならない声を、はきだした。


その息は、地球上をおおいつくし、やがて、すべてが、消えてしまった。


「けふっ」

カメが、小さくげっぷをしたところに、白い花がさいた。





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