GW ヒッチハイク帰省②


福島にて

福島に到着したのは18:30頃で、日没直後でまだ空が明るい時間帯だった。最悪の場合南福島のネットカフェに滞在するつもりでお店の場所を確認する。その後、どこまで南下できるか把握するため福島南部や栃木県の他のネットカフェを検索すると、栃木県には埼玉県との県境付近にしかネットカフェがないことが判明した。そのため、1日目は行けても郡山までにして、もし車が捕まらなかったらそのまま南福島の快活クラブで一夜を明かすことを決めた。

降ろしていただいた場所は幹線道路の交差点付近で、飲食店やスーパーが立ち並び、車通りも人通りもかなり多い。しかし、道路交通法に違反せず、周囲のお店や歩行者にも邪魔にならないように停車できるスペースがなかなかないため、30分歩いたところにあるセブンイレブンの前に移動した。

ご夫婦とお別れした後、次の予定と福島でのヒッチハイク場所をうじうじ考えていたために時刻はすでに午後8時前。辺りはすっかり暗くなりノートに書いた文字はかなり見えづらくなっている。とりわけ、自分が陣取っていたセブンの前は川や丘のすぐそばということもあり、先ほどの場所よりも街明かりがかなり少ない。しかも、19:00頃は郡山ナンバーをはじめ福島ナンバー以外の車もまだ多く走っていたが、20:00にもなると通り過ぎる車のほとんどが福島ナンバー。お出かけやお仕事から地元である福島に帰ってきた車がほとんどなのだろう。ネットカフェに向かう時間も考えて21時には引き上げようと決めてセブンの前に立ち始めた。

道路に向かってボードを掲げているが、50kmほどの速度を出している車にはほとんど気が付かれないだろう。どちらかというとガソリンスタンドやコンビニに入った車を狙っていた。昼間に比べて暗く、しかもヘッドライトで照らされて逆光状態だから、車の中にいる方の表情は全く見えない。それでも、口角を上げて歯を見せて笑顔を作ることだけは怠らずに立っていた。

30分ほどした頃、若い男性から「すみません、どうされたんですか?」と声を掛けられた。ヒッチハイクをしている旨を伝えたところ、見知らぬ人で怖いが、条件付きでなら乗せても良いと言ってくださった。その条件は、乗車中は荷物を預かることと助手席に乗ること。後で聞いたところ、ボディチェックをすることも考えていたらしいがさすがにそれはやめたと仰っていた。しかし考えてみれば確かに、明るい時間帯ならまだしも暗くなった頃にヒッチハイクをしているのは端から見れば完全に不審者だ。それでも心配して声を掛けて乗せてくださり、本当に心優しい方だった。

福島~郡山

乗せてくださったのは20代のご夫婦。名取へショッピングに行った帰りに僕を見かけて、一度通り過ぎた後わざわざ戻って声を掛けてくださった。しかもご自宅は福島市にあり、郡山まで行った後はまた福島まで45分以上かけて戻られるという。そこまでして乗せてくださったのは、僕のことを家出少年ではないかと心配してくださったからだそうだ。実際、旦那さんは家出青年だったらしい。21歳のときに福岡のご実家から消息を絶ち、仕事もないまま北海道へ飛ぶ。そして今はご結婚されて福島にいるというお話をあとでお聞きした。思いがけず騙したような形になったことと、わざわざ郡山まで往復していただくことに、申し訳ない気持ちと感謝の気持ちが終始心の中で渦巻いていた。

ご夫婦にはたくさん人生相談にのっていただき、特に社会人としての在り方について多く学ぶことがあった。
まず、仕事をする上で誠実さや素直さは欠かせない。具体的には、挨拶や報連相を怠らず、言われたことはきっちりとやることだ。また、人からどのように見られるかを常に考えて行動しなければならない。自分が裏切らない人であることを示して安心してもらうことが自分に対する信頼にも繋がると仰っていた。これはヒッチハイクも同じだ。ご夫婦から指摘されるまで自分が家出少年や殺人犯と思われることは想像していなかった。自分は割と物事を客観視できる方だと思っていたが、まだほとんどの事を自分主体で考えてしまっているのだろう。

さらに、社会人になると色んな肩書きがついて自由に行動できなくなるから、今のうちにやりたいこと、特に羽目を外す経験はやっておいた方が良いとも仰っていた。これについては旦那さんの路上ライブ計画のお話もある。千葉に行ったときに路上ライブの演奏にふと心を奪われて、そこから路上ライブにはまり、ギターも0から始められたらしい。今でも練習を続けており、いつかは会社に見つからない首都圏近辺で単発的に路上ライブをやろうと画策しているとのことだった。チャレンジ精神と行動力の塊のような方だ。
自分のやったことをいかに活かせるかが大切だというお話もしていただいた。学生時代に様々な経験をしても結局”今の自分”につなげられないとただの楽しかった思い出になってしまう。行動した結果何を学び、どんな力を新しく身に着けたのかを説明できる状態になることで、ようやくその経験が自分の血肉になるのだろう。

このような話をしているうちに郡山のネットカフェに到着した。到着後にはネットカフェが満室で入れなったときのことを考えて、部屋があるかどうか確認が終わるまで駐車場で待っていてくださった。
赤の他人に対してどうしてここまで親切にしてくださるのか。ご夫婦のことをとても尊敬するし、自分も将来たくさんの人に手を差し伸べられる人間になりたいと感じる時間だった。

ネットカフェにて

1週間前に友人から、一人旅でネットカフェを利用した話を聞き、改めて憧れを持っていたネットカフェをついに利用することができた。
料金が安い分店員さんもコンビニやカラオケのようなアルバイトの方がメインなのかと勝手に思っていたのだが、ホテルとも遜色ない丁寧な対応をしていただいた。受付の方に初めての利用であることを伝え、マニュアルに沿って快活クラブのアプリを入れ、改めて部屋を確保した。

21:30過ぎに入室。部屋に入ってからはとりあえず見よう見まねで目隠し用にブランケットを扉に掛け、PCの操作方法やwifiの接続方法、各種設備の利用方法などを確認する。そして、忘れないうちに記録しておこうとその日車に乗せていただいた方とのお話を簡単にメモをした。また、自分がヒッチハイクを理由や実際にやってみた感想を改めて書き出してみたりした。納得するまで思ったことを書き留め、ひと段落したのが23:30過ぎ。その後、シャワーに入り歯を磨き寝る支度を整える。就寝時は、部屋にあった座椅子を枕代わりとし、リュックに入れていたマスクを着用し、シーツや肌掛けの代わりにフード付きのコートを着て就寝した。コートを目元までずり上げることでアイマスク代わりにもなった。結局寝たのは深夜1:30頃だった。

ネットカフェで明かした一夜は想像以上に快適だった。まともに食事をしていなかった影響もあってか僕にはやや寒かったのと、睡眠時にとれる姿勢が限定されているため腰痛にはなった。しかし、貸し出されているブランケットや枕を確保できればそれらも改善されるだろう。また、当初心配していた店内の音楽は気にならなかった。むしろ自分にとっては睡眠導入剤だ。安く夜を明かす場所として今後も候補の一つに入るだろう。

予定通り6:00頃に起床して、2日目の身支度を始めた。

~続く~





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?