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【詩の森】476 カミと出会う

カミと出会う
 
教育学者の大田堯(たかし)さんは
いのちの特性は
違う、変わる、関わる
ことだという
そしてこの三つは相互に
深く関連していると―――
 
僕らがモノをよく見るのは
関わるからだ
信号の色はよく見るのに
いつLEDになったかなんて
だれも
気にしてはいない
 
自分の部屋にあるモノだって
おなじだろう
見えていても見ているとは
かぎらないのだ
僕らが一生のうちで関わる
人・モノ・場所―――
 
何かに深く関わった時間を
僕らはきっと覚えているだろう
あっ、おっ、と言葉を洩らすのは
いまその瞬間に
立ち会っている証拠なのだ
それを俳句的瞬間ともいう
 
詩人の山尾三省さんは
たとえば海が与えてくれる、善いもの、
広がりがあるもの、美しいもの、
なぐさめてくれるもの、
それらをほかに呼びようがないから
カミというのだという。
 
カミに出会った
わずか十七音の記録を
僕らは俳句と呼んでいるのかもしれない
それができたとき
わけもなく嬉しいのはおそらく
その確信が押し寄せているのだ
 

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