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【詩の森】615 デジタルデータ

デジタルデータ
 
ある時パソコンが壊れて
保管していた画像データを
一瞬にして失ってしまった―――
そこには
僕がこれまで趣味で撮り溜めた
数年分の花の写真も含まれていた
時間のかかるバックアップを
後回しにしていた僕が悪いのだが
後の祭りである
それにしても跡形もないのだ
呆気にとられたような
この喪失感はいったい何だろう
僕が撮影のために費やした時間と労力は
いったい何処に消えたのだろう
これが
フィルムや印画紙なら劣化するだけで
人の寿命ぐらいは存えてくれるだろう
しかしデジタルデータは
そうはいかない
まさに無に帰してしまうのだ
 
それだけではない
デジタルデータは狙われやすい
なぜならネットに忍び込むだけで
居ながらにしてデータを奪えるからだ
一頃より格段に減ったが
それでも僕のパソコンには
数件のフィッシング詐欺メールが
毎日のように送られてくる
送信国はアメリカ・中国・台湾など様々だ
これもサイバー攻撃の一つだろう
そんななか政府は
マイナカードの推進に躍起になっている
もしそのデータが流出したら
どんな事態になるのだろう
マイナカードには
個人の医療・税務データまで紐づけされている
マイナンバーを管理する国は
個人の生体的弱点や収入まで
手に取るように分かるのだ
それが悪用されないと誰がいえるだろう
 
確かにマイナカードには
たくさんの便利が詰まっている
その便利と引替えに
僕らは何を手放すのだろうか
そこが問題だ
僕らの資産や健康状態まで国に把握されたら
僕らは完全に監視されることになるだろう
そこに個人の自由や尊厳はあるのだろうか
今でさえ電子決済情報は
どこかのサーバーに全て記録されているのだ
デジタル社会とは
僕らの個人情報が国に掌握されることなのだ
僕らは家畜にされかねない―――
ここ百年ほどの間に同様のシステムを試みた国に
イギリス・アメリカ・ドイツなどがある
しかしいずれも失敗に終わっている
その最大の理由は
セキュリティの問題を解決できないこと
仕組み自体が全体主義的だということだ
ドイツではナチの再来とまでいわれたという
 
さらに一元管理の怖さは
それが盗まれたり破壊された場合である
個人情報の保護が叫ばれ
個人情報が入手困難になればなるほど
それは高値で取引されるだろう
それを見越したかのように
ソーシャルメディアは無料の謳い文句で
人々の個人情報をかき集めたのである
いまやソーシャルメディアで
日々やりとりされる僕らの情報は
AIによって分析され企業に売り渡されている
それが彼らの莫大な収益源なのだ
もし予定通りマイナカードに情報が一元化されれば
サイバー攻撃の格好のターゲットになるだろう
仮に医療データが人質にとられれば
莫大な身代金を要求されるかもしれない
すでに電子カルテでは
そのような被害が発生しているのだ
むしろ一元化より
分散化こそ望ましいのではないだろうか
 
ネットの世界が
どんなに悪意に満ちているか
フィッシング詐欺メールの対処をしながら
僕はうんざりするほど感じている
それでも政府が
いわば強引ともいえる手法で
マイナカードを推進するのはなぜだろう
二万円ものマイナポイントを付けて
カードを作らせるのはなぜだろう
企業と同じやり方までして―――
しかもそれとて僕らの税金なのだ
マイナカードの説明書をみても
あるのはメリットばかりで
デメリットには一切触れられていない
そこが限りなく怪しいのだ
逆に政府が国民の資産を全て把握できたら
何ができるか考えてみるといい
もしかしたら新税を創設して軍事費を賄い
あわよくば借金を減らそうという
魂胆なのではないだろうか
 
2024.4.1

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