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【詩の森】660 働くことと稼ぐこと

働くことと稼ぐこと
 
客さえ集められれば
生命保険会社が
よもや潰れることはないだろう
集めたお金以上に
支払うことはないのだから―――
 
返す見込みのある
優良な借り手がいれば
銀行が潰れることはないだろう
信用創造で無から
お金は作れるのだから―――
 
絶対に潰れない
絶対に儲かるものは他にもあって
かつて宝くじは富くじと呼ばれていた
生保は安心を売り
銀行は夢を売るというのだろうか
 
ややもすると
汗水垂らして働くのは馬鹿らしい
となりかねないが
実体経済を遥かに超える資金が
金融経済を動かしているという
 
政府が音頭をとれば
猫も杓子もNISAに群がる世相である
しかし素朴な疑問だが
汗水垂らして働くことと
株や債券で儲けることは同じなのか
 
人が汗水垂らして働けば
その労力は何らかの形で社会に還元されるだろう
誰かが提供した製品やサービスを
他の誰かが受け取ってくれるだろう
それこそが社会の紐帯ではないのか
 
しかし株で儲けるために費やした労力は
いったいどこに還元されるというのだろう
それはカジノと同じように
お金を掛けたゲームに過ぎない
ゲームには勝者と敗者がつきものだ
 
働くことと稼ぐことは同じではない
仕事をすることで人は社会に繫がり
居場所を確保することができる
自分を価値あるものと認めることができる
それが職業に貴賤なしということなのだ
 
ところで実体経済の何十倍もの資金は
誰がどのように工面したのだろう
資本主義国で通貨発行権を握っているのは
中央銀行と市中銀行だけである
これを特権といわずして何といおう
 
金融経済を潤した資金が
マネーゲームを加熱させ
実体経済を脅かしているのではないだろうか
労働の対価とゲームコインが同じだなんて
世の中どうなっているのだろう
 
そんな由々しき事態なのに
国を挙げてカジノだNISAだと浮かれている
現に金融市場に流れた資金が
株価を下支えし不動産バブルを引き起こしている
僕らは玩具にされているのだ!
 
2024.6.21
 
 

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