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美術入門

美術入門もデザイン入門と同じく2日間(2日目は午前中のみ)のスクーリングで1単位です。
こちらは油絵学科の先生3人+通学の先生1人による講義でした。
もちろん人気があるので抽選になると思います。でもスクーリングの日程が合うのなら、絶対おススメです。受講者数は200人でした。

①三浦明範先生(絵画)

・この世界は歪んだ非ユークリッド空間
・目が球だから歪んで見える
・それぞれが「見た」ものを探究していく、物の見方を提議する
・私にしか見えない世界が見える=最高の到達点

先生が描きながら考えてきたことを、具体的に作品を例示しての話でした。
影の表現(西洋は明暗=存在が本質で色彩は装飾、日本は色彩こそが本質で
陰影は移ろうもの)/遠近法(知識や経験で見方が変わる)/写真(世界の再現ではない)と絵についてなど、わかりやすくて、すごく面白かったです。
特に歪みについては最も実感しているようで、画家として「見ること」を追求する姿に圧倒されました。

②吉川民仁先生(絵画)

・美術作品は氷山の一角、目に見えない大きな世界(文化・動機・表現)に支えられている
・自身の内面的な意識が物質的変化を選んで表出したもの(先生の大学院までの作品について)


三木成夫(解剖学者)(身体の内側と外側=主観と客観)や九鬼周造(哲学者)(偶然と必然)などの研究を挙げて、作品を制作することについて理論的に考察している、知性的な先生でした。三浦先生とは違う角度から、画家としての精神性の奥深さを感じました。
偶然はあまりないと思っている、と何度も言っていたことも印象的でした。


③元田久治先生(版画)

・どういう展示にするか考えながら制作する(額の有無、印刷範囲など)
・箱庭的風化表現


元田先生の作品は多くの人が目にしたことがあると思います。いろいろな版画の技法を説明したあとに、先生の作品も紹介していました。
取材時の写真と作品を照らし合わせて見せてくれたため、作品化するための制作過程を垣間見ることができたのが興味深く、その発想力に見とれました。
写真はムサビのHPに載っている元田先生の作品《Indication-Harbour Bridge(Sydney)》です。


④重松啓治先生(日本画)

・日本画は描きたいものを描く、遠近法にとらわれない
  洛中洛外図 上部も遠近法で小さくせずに大きく描く
  燕子花図 イメージする形を描く、写実ではない
  丸山応挙 室内から屋外への一体感、自然を取り入れる
・日本画は影を描くのが大変、色の変化で表現する


日本画の特質を西洋と比較し、一方共通性を感じさせる作品としてジャクソン・ポロック(余白の美)やデ・クーニング(線と色の組み合わせ)などを挙げていました。日本画独自の価値観や材料に由来する特徴の解説は説得力があり、面白かったです。
重松先生も人による見え方の違いについて言及していました。そして自身の作品について、抽象っぽい具象と表現し、再構築して理想の自分の形にする精神だと話していました。抽象的表現に対する大きなヒントをもらった気がします。


こちらも最後にレポートを書きます。内容は講義の感想です。PC、スマホ、電子辞書は禁止でした。こちらのレポートは書きやすかったです。

講義の内容はどの先生もすごく濃くて、本当に受けることができて良かったです。贅沢なスクーリングでした。

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