『神様のビオトープ』凪良ゆう
静かで穏やかな日常の中に見える人間の、愛着のような感情を柔らかに鋭く描いた物語。
他の人には理解されない感情。その痛みは本人だけのもの。愛する感情も本人だけのもの。
愛の形は人それぞれだから本人が良ければ良い。
人が想う愛の形について問いかけられている気がした。
人間の在り方とは何なのか。
様々な感情がこの箱庭のような世界(ビオトープ)に息づいている。
それらは不器用に曲がりなりにもきれいに整っているとはいえない。
いびつに歪んでいるからこそ人間なのかもしれない。
完璧に美しい人間なんていなくて、それぞれが自分の望む世界を愛している。そして、懸命に生きている。蜘蛛の糸のような、砂糖菓子の城のような、薄氷のようなもの。そんなものの上に成り立つ脆いものでもいいから信じていたい。
消えないように。信じることで心を保っている。
うる波を始め、何かを信じていないと人間は生きていけない。
亡くなってしまった愛する夫の影に想いを馳せて。
愛し続けても良い。気持ちが本物なら。
幸せの形は人それぞれだから。
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