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我が名はG(ジェネリック)

※最後の方まで読むと2024年7月発売のチャンピオンREDに掲載された『海皇再起』第10話のネタバレが出てきますので一応注意してください、念のため。


去年の話ですけどツナ缶ちゃん、知り合い何人かと飯を食った時に、友人の文筆家氏が次の単著を出すならどんなのにすべきかって話題になり、チミはホラあれだよエヴァブームの90年代末から今世紀初頭ぐらいに出た、いわゆるポストエヴァ的と評する他ない近隣ジャンルのアニメ作品群について関係者インタビューを交えて総括するやつ早くやれよ、タイトルはそうねジェネシックガオガイガーならぬジェネリックエヴァンゲリオンでいいんじゃないの、早くやらないとガサラキ星人が来て人類の心と体がひとつに溶け合っちまうぞ(要約)なんて話をしていたんですけど、さておきそういったヒット作が持つ、業界に新たな流行ジャンルを築き多数のフォロワーを生むエポック性ーーエヴァにおいては「衒学的ガジェットや、過剰に陰鬱だったり過激だったりする描写で高年齢マニア層を狙う厄介テレビアニメ」であったようなーーというものについて言えば、まさに星矢というのはその約十年前に「美形鎧戦隊モノ」という概念を定着させた寵児だったわけでして、代表的なフォロワーとしてはトルーパー、シュラト、ボーグマン、メタルジャック、ダグオン、超者ライディーン、装着変身こそしないけどガンダムW…等々、いやいや女の子向けのセーラームーンだって単に鉱物マニアの直子先生がスーパー戦隊とポワトリンを足しただけじゃああはなるまい、五人組の性格付け、星のさだめ、必殺技のノリ、仲間が次々散っていく耽美的なラストバトルといった諸要素に同じ東映作品たる星矢が一切参照されてないわけがなく、更に言えば先に名前の出たエヴァンゲリオン、あれのメインキャラたちはセーラームーンと庵野秀明の接点抜きに生まれようがなかったというのはもはや常識でありますから、要するに星矢と全く無関係に存在できる流行作品なんて世の中そうそうないんだぜ…とまで言うとやや牽強附会とも取られましょうが、時が流れれば面白いことも起こるもので、聖闘士星矢Ωが光牙の装着バンクでトルーパーの武装烈火のオマージュをやり返したなんて微笑ましい悪ノリも、もうだいぶ懐かしい話でありますし、そもそも元祖星矢とて、車田先生が前作の挫折を糧にジャンプ漫画としては異例のマーチャンダイジング的発想を発揮し、ファミコンだガンプラだと当時の流行を大いに意識した結果生み出された代物、銀河戦争のTVゲーム風演出や最初期のメカニカルな聖衣デザインにもそれは明らかであり、かように因果は巡るもの…というのはちょっと綺麗にまとめ過ぎかもしれませぬ。

…とまあ今回、いつにもまして何の話?と思われたかもしれませんが、要するにツナ缶ちゃんは『天空戦記シュラト』のシュラトが降三世明王トライローの逆転生で記憶を奪われ人間界に送り返されるエピソードが子供の頃から何故か大好きでありまして、ドラマCDでトライローがあんなキャラにされてるなんて露知らないまま「ワンレン片目隠れハイレグ姐御いいよね…」「いい…シャイナさんに匹敵するかもしれない…」などと日々審議していたわけですけど、海皇再起でバイアン達が平行世界に飛ばされるくだりはあれのオマージュなのです、ほらテティスとヴィシュヌ様の役割も一緒だったでしょ?、という話がしたかった。
ここまで長かった。
敵の謀略による異世界流しとか記憶喪失とかはファンタジーにおける一種の定番エピソードではあるし、伝わりにくかったかも…いや別に伝わる必要もないのですが一応、と思ったので、こうして書き残しておきます。

ところでシュラトといえば聖衣(クロス)ならぬ神甲冑(シャクティ)をまとって戦うわけですが、ここで問題ですシャクティにあって聖衣にないものは何でしょう? 答えは「獣の顔」。八部衆でいえばリョウマ、レンゲ、ダンは肩に、他五人は胸に、モチーフとなる獣の顔がついています。主役のシュラトは獅子ですね。このいわゆる「胸ライオン」、スーパーロボットのデザインとしては1979年のアニメ『未来ロボ ダルタニアス』を端緒とし、特撮では1988年の『超獣戦隊ライブマン』ライブロボ、アニメでは1990年の『勇者エクスカイザー』というフォロワーを経て、のちの定番となっていくものです。人型のシルエットに鳩胸の雄々しさと動物の愛嬌を宿す、皆様ご存じのとおりたいへん優れた意匠なのですが、原作星矢の鎧デザインにはありそうでなかったんですよね。モチーフとなる星座には獣や怪物が多いものの、装着時には収納したり折り畳んだりで、目鼻のある顔をそのままドーン!はやらない。これは結果として「子供のオモチャ」的なキッチュさを抑え、当時の数多ある男児向けキャラクターと差別化する効果があったと思います。(それゆえに唯一、臆面もなく白鳥の首がピョコンと飛び出したキグナスが「おまる」呼ばわりされるという悲劇も生んだわけですが…)(なおアニメになるとペガサスとドラゴンは動物感そのままのヘルメットになりますが、これはそれこそキャラクター玩具として各々分かりやすい個性を求めた結果でありましょう)
それを踏まえて、今回スキュラの真鱗衣で、あえて「胸にクマ」というルール破りをやってみました。胸にクマというとカクレンジャーの隠大将軍が印象深いですが、さておき、ペガサスヘルメットをオマージュした真シーホースの横に立つと、アニメ星矢風とシュラト風が並ぶという仕掛けです。仕掛けてどうする。

ついでに言えば女神ネメシス、じつは彼女の見た目も「ラクシュが星矢に出てきそうな女神のコスプレをしている」というイメージであったりしますが、これについてはツナ缶ちゃん、そもそもラクシュのせいで薄緑色のボリューミーな髪を両側でどうにかしているキャラ全般が大好き(と書いてソーマっち I love youと読む)なので、今回にかぎらず気づくとキャラデザ的な仕事でそういう女の子を描いていることがままあります。
なぜ? どうしてそうなの? と同時期の水谷優子ソングで今回は〆。

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