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スピたち

今回は海皇再起の敵、英魂士(スピリット)についてです。
本作は東映まんがまつりがモチーフになっているので、敵組織はこじんまりまとめようというコンセプトでした。また「大ピンチから鱗衣をパワーアップして逆転」という段取りを海将軍7人分こなすにあたって、7対7で7回同じことをやるのは、描く方も読む方も流石にしんどい。敵をメチャクチャ強くする代わり人数は5人くらいに絞り、チーム戦で攻略させるのが妥当だな、となりました。
しかし一応ポセイドン軍では黄金聖闘士のポジションにある海将軍たちです。彼らが実力や気合いでは追いつかず、神の血でパワーアップしなきゃ勝てない敵とはどういう連中なのか。黄金魂の感想で「星矢たちが倒した神闘士くらい、ノーマル黄金聖衣で倒さんかい」という意見をしばしば見ましたが、たしかに我々読者にとって神聖衣はタナトスのような神を相手取って初めて必要なもの、という意識がありますから、人間だとちょっと役者不足という感覚が拭えません。
…というところから逆算して生まれたのが、神話の英雄たち本人そのまんまというキャラクターだったのでした。以前も書いたように『聖闘士星矢』という作品は元ネタであるギリシア神話との距離感が絶妙で、神や英雄を神話通りに血の通った存在としては登場させていないんですよね。今回の試みはそのレギュレーションを破るわけですから、結構心が痛みました。いっそ全員神にするか?とも思ったのですが、オリンポスに敵対するティターン神族はエピソードGでガッツリ使い切られていますし、他にネメシスの言うこときいてくれそうなランクの神々となると、日常的なものを司っていたりであまり強そうじゃない…。やはり英雄で行こう、となりまして、星矢以外のそれ系コンテンツの影響で検索汚染があんまり進んでないメンバーの選抜が行われました。100人の英雄をくじ引きで世界各地に送り出し、生きて帰ってきた10人をさらにグラードコロッセオで闘わせまして、一軍に残った5人が無事出演決定。それぞれ神話にちなんだラテン語の肩書きを付けて、
銀翼(アーリス)のベレロポーン
幻奏(ムジカ)のテレプシコラ
竜牙(ドラコデンテ)のカドモス
天寵(グラツィア)のアイネイアース
…残り一人は未登場なのでまだ秘密ですけど、そういう形になったわけです。

鎧については、全盛期の肉体のデータが記録されていていつでも再生可能という設定から、ヤドカリの貝殻みたいということで殻衣(シェル)と名付けたのですが、漢字表記が今ひとつ締まらないな~と悩んだ末に、憑依をもじって憑衣というところに落ち着きました。
この憑衣、なんかディテールが甘くてあまりカッコ良くないと思われる方も多いと思うのですが、言い訳させてもらえるなら本作は当初、原作の絵柄に近づけて描く予定ではなかったんですね。Ωの馬越さんのデフォルメをベースにしようと考えていて、憑衣はΩ式の身体にフィットして凹凸の少ない、いわゆる布クロスの系譜としてデザインしていました。絵柄を切り替えた時にデザインも変更したらよかったのですが、なんとなくそのまま始めてしまったので、両者の間に少々齟齬が生じる結果になってしまいました。ま、考えようによっては原作星矢のバランスの人体にΩの布クロスを着せるとどうなるかという無謀な実験ができた、と前向きに捉えることも可能かもしれません。…何かしら今後に活かせたらラッキーと思いましょう。

ちなみにメンバーは各々「神との関係」というのが特色になっていまして、
神に挑んだ者(ベレロポーン)
神の座を捨てた者(テレプシコラ)
神を恐れる者(カドモス)
神に愛された者(アイネイアース)
…と来て、5人組の金ピカの奴が誰なのか、そのへんから推理していただくもよし、知らんがなと鼻ほじりながら読んでいただくもよし、お好みのスタイルで楽しんでいただければ幸いです、かしこ。


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