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考えまとめコラム ポ編終盤の速さ、光速か?って話

バトル漫画で巨大な敵との激しい戦いのさなか、その裏に隠された陰謀、真の黒幕みたいのが暴かれる展開、しばしばありますね。まあ暴くのは誰でもいいです。主人公がメインプロットを進めるかたわら、別動隊の仲間が謎解き方面に行くとか。とはいえ大体、そこで暴かれた重大な真実というのは最終的に主人公側に適切なタイミングで共有され、ストーリーの中心に躍り出るのが定石だと思うんですね。それによって真のラスボスが浮かび上がってくるインフレ的な展開もあれば、新事実の発覚によってそれまでの仲間に新たな対立が生まれてもいい。あるいは全てが終わった後に「実は裏にはこんな真実が隠されていたんだ」と分かって余韻を生むパターンとかもあっていいでしょう。ま、やりようは様々だと思います。

ここで聖闘士星矢ポセイドン編の終盤の話をしますと、カノンの野望について知ったのは一輝、ソレント、貴鬼の三人。
うちラストバトル中の星矢に合流するのは一輝ですが、状況的に一番肝心な「アテナの壺の存在とその在処」以外の話をしてる暇は全くありません。結果として主人公である星矢はカノンという男の存在すら最後まで認識せず、ホントに最後の最後、「うわっなんか知らん奴がいきなり飛び出してきて沙織さん守った!あれっコイツここ来たとき最初に会ったきりのシードラゴンてヤツじゃ敵なのにどうしてエッ名前カノンっていうの沙織さんなんで知ってんのウワー水だ逃げろーッ」ザバー…で終わっています。
この終盤のスピード感がですね、何度読んでも神がかってるんですね。車田漫画の真骨頂とすら思います。一輝ソレントの「戦うに値しない」宣告2連発からの、主人公星矢がけっこう重要な真相に完全ノータッチで終わる流れ。思いきりが良すぎる。
ご存じのとおり次に星矢とカノンが顔を会わせるのは冥界第一獄、その時点で星矢はカノンの素性をしっかり把握しています。どこかのタイミングで誰かからひととおり聞かされて、そりゃあ衝撃の事実だったでしょうけど、全部飛ばして「こんな心強いことはないぜ」となってしまう。細かい経過を飛ばしたからこそ、星矢という人間の気持ちよさ、おおらかさが見事に表現されている。これも最高なポイントです。
ちなみに星矢の一番好きなセリフは「いくら衝撃の事実を聞いたからって女にライトニングボルトはないだろう~~」です。ほんとに?

変な言い方しますが、このへん凡百の漫画だったらもうちょっと丁寧に扱ってしまいますよ。作劇的に、主人公がこんな何も知らないまま終わっていいのかな?って不安になっちゃう。で、上の方で書いたような納得度の高いパターンに嵌めてしまうんじゃないでしょうか。

…という、ポ編の好きなところメモその1でした。
王道外しを恐れずテンポを最優先するの、憧れますけど自分でやろうとするとついつい腰が引けちゃうんすよね。人間一生勉強っす。おわり。

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