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紡いで編む*UraUe plain

もうすぐ2023年になるという慌ただしい2022年の年末、やっと念願の「自分で紡いだ糸でのウェア」が完成しました。
準備から2年の月日で、道のりが長かった1着です。
もちろん2年間まるまる掛かって作ったわけではなく、合間をみては少しずつ進めていたらこんな年月が掛かってしまったというものです。
少し長い記録ですが、ゆっくり大事に作った毛糸の話にお付き合いいただけたら嬉しいです。

羊毛から自分で作る毛糸=手紡ぎ糸、というものに魅せられて、2021年の初め頃から糸紡ぎを始めました。
少しずつ道具を買い、見よう見まねで挑戦しては、その難しさに凹んだり。
でも、続けるうちに段々と糸らしくなってきて、自分で作った糸で編むという楽しさを得られました。
イビツだけれど素朴で味のある風合い。
染め糸とはまた違った形で色が混じりのが新鮮でとても面白いと感じ、更に手紡ぎを知りたくさせました。

最初は羊毛フェルト用や専門店の羊毛を購入し材料としていました。
ゴミは綺麗に取り除かれ、毛の向きも綺麗に揃ったとても状態が良いものです。
それはそれで、紡ぎ易かったり気軽に使えるものなんですが、紡ぎの世界を眺めていると毛刈りしたままの毛を買い洗っては、ナチュラルでクリクリした毛を活かすような素敵な糸を作られれいる方も多いということを知りました。
ナチュラルな毛刈り羊毛は、自分で洗いやゴミ取り等の作業が必要となるのですが、安く油分もたっぷりで糸にした時に風合いが全く違うそうです。
それはぜひ手に取ってみたい‼︎と、また興味がグッと湧きました。
しかし、洗うなんて温度管理の難しそうな事が、果たして自分1人で出来るのだろうか?
この点が非常に不安だったわけですが、タイミング良くSNSで羊毛の洗い方をオンラインで教えてくださる「吉田麻子羊毛店」さんに出会うことができました。
手順良くしっかりと教えていただき、無事に羊毛の手洗いという難関も超える事が出来ました。
(その話はリンクからどうぞ)

そんな経験を経て、復習も兼ね再度「吉田麻子羊毛店」さんで2回目の羊毛を購入しました。
コリデール種の羊毛300g。
これを講座を思い出しながら洗い、綺麗になったところで3色に染めて、それからひたすらゴミ取りをしました。
これが進まない進まない。
絶対にやりたくない!という程の作業ではないのですが、丁寧に丁寧に作業するといくらでも時間が溶けてしまいます。
紡ぐ時に小さな屑も混じっていない方が紡ぎ易いと分かっているので、ひたすらゴミ取りをし続けてしまいました。
実際にはカード掛け(毛の向きを揃える工程)や紡ぎの際でも、自然とゴミは落ちるのでこんなにも気を張る必要はなかったかもしれませんが、このくらいでいいという判断が出来ないので性格が悪影響となりました。
洗った段階で200gちょっとだった羊毛なのですが、仕事の合間をみながら染め糸を作り、またその合間をみてゴミ取りをするといった状態ですから、2〜3ヶ月は軽く掛かってしまう始末。
ウェアを編むにはまだまだ羊毛が必要なのに、これは私だけの力では何年も掛かってしまいます。
刈り取った羊毛からウェアを作って着るという夢と現実に、ぎゅうぎゅうに挟まれ悩み、決心をしました。

それは「羊毛を買って合わせる」です。
奥に見える緑と青が私が洗ってカードした羊毛およそ100gで、手前のグレーがお店で購入したウールスライバーです。
綺麗に整えられたウールスライバーなら、もう後は色を混ぜて紡ぐだけになります。
本当は全部自分でやりたかったです。
でも、それは今ではないのだと一旦あきらめて、まずは目標を「自分で紡いだ糸でウェアを編む」に変更しました。
無理をするよりも楽しく作ったものでありたい。
そう考えたので、技量の無い今は妥協して進める事にしました。

均等になるよう重さを計り、割合を合わせて色を混ぜます。
色が混ざり切らないようにザックリです。
紡ぎ出す時の加減で3色がそのままだったり、少しずつ混ざり合ったりと変化を出したいです。

紡ぐとこんな色になりました。
毛糸は1本の単糸のままでは弱いので、2本作って撚り合わせ双糸にします。

これが毛糸1本の太さです。
バラツキが大きいですが、太い部分でも並太よりちょっと細目。
この後、撚り止めをする為にカセに巻き取りました。
このボビン1本でおよそ250gあります。

カセに巻いたらパンパン!
玉巻も迫力のデカさ!
250gが全部繋がってるってすごいですよね。

均等に紡ぐというのはまだまだ勉強が要る状態です。
相変わらず一定の太さから、時々極端に細くなってしまう癖があるみたいです。
続けて練習しないからなんですが、もう少し上手く出来るようになりたいな。

でも!ここからが最大のメインです!
糸に似合いそうなパターン候補はすでに選んでおいたので、出来上がった糸の太さや長さから考えて決めました。

選んだのはNatsuko Iidaさんの「UraUe Plain」です。
普通丈のセーターととても悩んだのですが、やっぱりこのラインの綺麗なベストを編みたいと思いました。
断然ロング丈です!
ゆったりしたサイズで重ね着をしたいですね。
糸は間違いなく余ってしまいますが、足りないかもと不安になるより無難な判断かと思いました。

Iidaさんの作品は以前も編みましたが、肩の編み方がとても綺麗なんです。
編んでいる時はちょっと釣れてしまったかしら?と心配になったりもしますが、着ると重さで下りとっても良い丸みになります。
今回もドキドキしましたが、やっぱり肩に合わせればスルリとなだらかになりました。

一度袖ぐりまで編み終えましたが、どうしても襟周りが小さいような感じがしたので、解いて最初からやり直しました。
もっと早く直しなさいなと自分でも呆れますが、やっぱり直すべきだったと気になったまま着るなんてもっと論外です。
2回楽しめたと考えることにして、さっさと編み直しました。

形で選んだパターンなので、ご覧の通りのメリヤス砂漠です。
糸の色が引き立って欲しいし、年末は忙しいから砂漠ぐらいが丁度良いと思っていました。
でも、なんだか手が進まない。
頭が疲れてるところへ単調な繰り返しだったので、逆に息抜きにならなかったのかもしれません。
もう少し手を動かすような模様の方が夢中になれて効率が上がったのかなと思います。

無事に編み終えて、水通し後の陰干し。
晴れていたものの冬の陽気では気休め程度にしか乾かず、結局は室内の除湿機で乾燥です。
そして…

やっと完成!
2年越しの夢の手紡ぎ服です。
ロング可愛いです。


とっても軽くて柔らかで、袖はないけれど全く気にならないくらい暖かいです。
そしてウール100%なのにちっとも痒くない!!!
チクチクに関してはそこそこ気になる方なのに、いくら触っても刺さるものがないんです。
きっと羊毛がまだ必要な油分を保っているんでしょうね。
手紡ぎ糸って本当に凄いです。

カットソーと合わせて、こんな感じで着ます。
袖ぐりが大きくスリットもしっかり入ってるので、バタバタ動いても安心でした。
緑や紺のシマも、目立つ違いのものがなくて一安心でした。
概ね考えていた通りの色あいと柄です。
染め糸はある程度予測が出来るようになってきましたが、糸紡ぎでの色の出し方は紡ぎ方や双糸の際の合わせ方でも違うので、まだ全然把握できていないです。
一つ一つやってみないと身につかないので、これもまた少しずつ覚えていきたいと思っています。

じっくりと時間を掛けて材料を用意し、大事にしたいと思えるものに作り上げていくというのは、予想以上に根気が要るものだったなと経験をして深く実感しました。
そして、出来上がったものを考えても、これは相当に価値のあるものだったと思えました。
自分で作る。
何にも代え難い宝物です。

1回目は2年も掛かってしまったけれど、もちろんまた初めからやりたいです!
自分のペースで最初から最後まで、好きなものを好きなように作ろうと思います。
そうそう。
育てた綿もあるのだから、綿の服も作らねば。
楽しみいっぱいで、忙しいなぁ。

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