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【シチュボ・声劇台本】山奥のふたりだけの秘密基地

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あ……おはよう。
よく眠れた? なんて、愚問だね。
だって、よく眠れるようにしたんだもん。

ふふ……まだ寝ぼけてる?
寝起きのぼんやりした顔、とっても素敵だね。
これから、その表情をひとりじめできるなんて
うれしいなぁ……

どうしたの? きょろきょろして。
眠ったときと違う場所だから、おどろいてる?

ここはねぇ、ふたりだけの秘密の場所
秘密基地
どう? すごいでしょう!
ここを手に入れるために、がんばったんだから。

といっても、探せばけっこう手に入りやすい価格で
見つかるもんだねぇ。

都会だとか、交通の利便性だとか
そういうものを考慮しなければ
古民家とまではいかないけど、
古い物件をそこそこな値段で買えたよ。

かといって、不便すぎるのも困るからね。
きちんとインターネットとかライフラインとか、
通じている範囲ではあるよ。

きょとんとして……かわいいなぁ
現状が把握できていないって、顔に書いてる。
そういう、素直なところ、大好きだよ。

じゃあ、わかりやすく説明してあげるね。

昨日のことは、覚えてる?
一緒に、ご飯を食べに行ったこと。
そのあとで、すっごく眠たくなったって言って
近くの公園のベンチで休んだところまでは、記憶にあるかな?

そこからねぇ、君をここまで運んだんだよ。
ふたりの、秘密基地。
子どものころ、秘密基地って、あこがれなかった?
誰にも見つからない、自分たちだけの、大好きなもので囲まれた
ワクワクとドキドキが詰まった、最高の場所。

ここが、これから、そうなるんだよ。

小首傾げて、納得いっていないって感じだね。
まぁ、いきなり順応しろってほうが、難しいか

くわしいことを説明する前に、
顔を洗って、身支度をしておいでよ。
朝ごはんを食べながら、これからのことを話そう

旅館みたいな部屋って……正解! よくわかったね。
ここは昔、旅館だったらしいよ。
そこを買い取って、ちょっと改造したんだ。
といっても、そんなに規模が大きいものじゃないよ。

おじいちゃんが若かったころは、
みんな浮かれて、お金をたくさん使う時代だったんだって。
その時にね、キャンプとかもはやったらしくて
キャンプに来る客を目当てに
この周辺に、ちいさな旅館がいくつかできたらしいんだ。

そのうちのひとつを買って、ふたりの秘密基地にしたんだよ。

部屋数は5つしかなくって、そのうちのひとつを
君専用の部屋に改装したんだ。
部屋の中にはトイレもお風呂も洗面所もあるし
畳だった部屋をフローリングに替えたから、過ごしやすいはずだよ。
それとも、畳のままのほうがよかったかな?

家具も、ベッドと机、パソコンだって、用意してる。
あぁでも、インターネットにはつながらないよ。
ゲームソフトとか、ほしいものがあったら
持ってきてあげるから、なんでも言ってね。
情報は、プリントアウトして、持ってきてあげる。

別の部屋に、ネットにつながっているパソコンがあるんだよ。
ケータイの電波も入るから、通販だってできるんだ。
窓の外の景色は、山の風景しか見えないけどね。

窓の鉄格子? 必要だから、つけたんだよ。
君を奪いに来る誰かが、侵入できないように。
部屋の扉の前にある鉄格子も、おなじ理由。
僕(私)以外が、入れないようにしているんだ。

誰にもじゃまをされない、ふたりだけの秘密基地って言った意味
わかってくれた?

部屋は、軽い運動ができるくらいに広いし
風呂もトイレも洗面所だってあるんだから
不自由は、まったくないでしょう?

時々、外に散歩にも連れ出してあげる。

SE:鎖の音

これ? 散歩用のリードだよ。
君が誰かに奪われないように、
外に出るときは、これをつけるんだ。

野生のシカとかイノシシとかが出るみたいだし
山の中ではぐれたら大変だから
命綱みたいなものでもあるかな。

自然豊かな山奥だけど
必要なものは、ネット通販で手に入るし
50キロくらい離れたところに、
大型のスーパーみたいなところがあるから
そこで買い物をすれば、不自由はないよ。

どこって……地名のことが知りたいの?
そんなの、どこだっていいじゃない。
君と僕(私)さえいれば、場所なんて……ねぇ。

あぁ、やっとこうして、誰にも邪魔をされず
最高の人生を歩んでいけるんだよ。

都会の喧騒とかわずらわしい人間関係とか
いっさい関係のない、大自然の中
のんびりと、四季を感じて過ごせるんだ。

君と僕(私)だけの世界が、はじまるんだよ。

どうしたの? 顔色が悪いね。
もしかして、睡眠薬の量が多かったのかな?
君を連れてくるために、こっそり料理に混ぜたんだけど
君には効きすぎたってことなのかな?

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