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宮沢和史+永積タカシ (極東ラジオ・アーカイブ 2002年5月)

極東ラジオ・スタジオレポート
DJ=宮沢和史 ゲスト=永積タカシ(SUPER BUTTER DOG)
(2002年5月25日放送)

スタジオに入ってまず宮沢、永積さん、そしてスタッフで行なったのは、できあがったばかりというSUPER BUTTER DOG「五十音」のビデオクリップの鑑賞会。幼稚園での演奏シーンが収録されているのです。番組での話題もまずそのビデオのことから。

ビデオクリップ「五十音」は幼稚園でのライヴ収録

宮沢 さっき一緒にビデオクリップを観たんです。
永積 凄かったスね、もう(笑)。面白かったですよ。
宮沢 あれ、子どもたちの声とかがウワァって入ってるけど、音はどうなってるの?
永積 ビデオは「五十音」のライヴ音源(ライヴアルバム『ラ』に収録)と、(撮影中の)幼稚園での音をミックスしてます。僕のヴォーカルは幼稚園で録った声を、使ってるらしい(笑)。
宮沢 そうだよね。なんていうの? あの、教室みたいなとこで園児がたくさんバンドメンバーと絡みまくってて。子どもたちの声も、永積くんの「次はなんだ、行くよー」みたいな声も全部入ってる。斬新ですね、このビデオは。
永積 そうですね(笑)。
宮沢 ねえ。普通(ビデオクリップの音)は、CDからの音になるじゃない。最初からこういうアイデアだったの?
永積 いや、録った後に、そのアイデアが出た。
宮沢 もういいから、これでいいじゃん、みたいな?
永積 うん。
宮沢 なぜに幼稚園だったんですか?
永積 いやもう、ビデオクリップは、うちのベース(TOMOHIKO)のヤツがだいたいアイデア出して撮ってるんですけど。
宮沢 あ、そうなんだ。へええ。
永積 この「五十音」自体がTOMOHIKOの曲なんですよ。で、作ったときから、なんか「子どもの曲」みたいなイメージを言ってて、ずっと。なんで、ビデオ撮るってなったときに、「絶対に幼稚園で録る」って(笑)。
宮沢 最高だね。最高ですよ、ハジケてて。バタードッグっぽいし。
永積 はは(笑)。
宮沢 ね。ちょっとオレも負けず嫌いだから、今度お年寄りと一戦交えようかなと。
永積 (笑)とげぬき地蔵かなんかで?

永積タカシの作詞方法

宮沢 歌詞はどうやって作ってますか?
永積 歌詞ですか。歌詞はもう、追い詰めて、追い詰めて、追い詰めてですね。
宮沢 そうだよね。
永積 「五十音」とか「ウーロン茶」は池田(貴史)くんと一緒に、共作だったんですけど。
宮沢 「FUNKYウーロン茶」ね。
永積 そうですね。あと「LOVERS法」とか、ちょっと軽躁状態な詞がバタードッグってけっこう多いんですけど、インタビューとか受けると「ラクに歌詞作ってそうですね」みたいなこと言われるんですよ。
宮沢 ああ。
永積 でも泣きながら作ってますからね、僕。「う~これ、どっちの言葉がいいかなぁ」っていうののせめぎ合いじゃないですか。
宮沢 ノリで作ってるんじゃないかと思うだろうけど、違うよねぇ。
永積 そうですね。

宮沢 いい言葉がふたつ浮かんじゃったとき、困るでしょ。どっちにしようって?
永積 あははは!
宮沢 うれしい悲鳴っつうか。で、もうこれもったいねーな、っていうんで2番で使ったりすると、すごく複雑になって、覚えられなくなっちゃって(笑)。
永積 わかる! わかる!
宮沢 あるんだよね。
永積 ありますね。あと、メロディー作ってても、同じコード進行でいいメロディーがふたつできるときとかもあって。
宮沢 うん。そうだよね。
永積 そういうのも困りますよね。
宮沢 うん。やっぱり自分のコピーはしたくないから、そうなったらもう捨てるんだけど。
永積 え? 捨てるんですか!
宮沢 いや、どっちか一個にしてね。こっちのこのコード進行のメロディーもいいな、と思いつつも、同じコード進行ってわけにいかないからね。そういうのありますよね。
永積 あります。

宮沢 歌詞を作るってレコーディングの中でも、いちばんしんどい時間じゃない? 俺、そうなんだけど。
永積 うーん、そうですね。録ってるときは、もうスポーツみたいなものじゃないですか。僕もどっちかっていうとこう、歌ってることが一番好きだし。
宮沢 歌ってる瞬間がね。
永積 そうそう、汗かいたりしてるような瞬間が一番楽しいから。ひとりで(詞の世界に)入っていくのって、先が見えないから、すごい不安になってきたり、自分で戦わなきゃいけないのが、たいへんですよね。
宮沢 なんか出口のない部屋に入って、真っ暗けで。そのうちピッて光が、窓が見えて、「あ、あそこが出口だ」っていうのが見えるまで、見えたらいいんですけど、見えないんだよね。煮つまるとどうするの?
永積 煮つまると……煮つまると、寝ますね(笑)。
宮沢 あ、奥田民生と一緒だ。
永積 ほんとですか?
宮沢 曲作るときに、ギターを抱えて、床に大の字になって、寝てしまうんだって、そのまま(笑)。
永積 それ、そうですね。僕、気分転換がヘタなんですよ。宮沢さんとか、釣りやりますよね。そういうものが、なくて。ずっとインドア、麻雀ぐらいしかなかったんですよ。どっかアウトドアがいいなって思ってたときに見つけたのがバイクだったんですよ。
宮沢 なるほどね、バイクね。今日もバイクで来ましたね、スタジオまでね。
永積 最近すごくバイクにはまってて、風景が変わっていくと気持ちが変わるじゃないですか。
宮沢 バイクってさ、目的地に行くための手段じゃないんだよね。そのための、その過程が全部、目的っていうか。
永積 そうなんですよね。ずーっと続いてるんですよね。それがすごくよくて。

バンドとソロの違い

宮沢 あの、風の噂ではですね、今、リリースは目白押しなんだけど、バンドがライヴをちょっと休んでるっていう時期だそうで。
永積 そうですね、うん。
宮沢 永積君は、ソロっていうか、ひとりで録音してると。
永積 そうですね。ひとりで録音してて、まぁ曲作ったり。友達と一緒にやったりという感じで。こないだも、高野寛さんのイベントにひとりで出させてもらって。そうですね、今はけっこうひとりで録ってるのが、多いですね。
宮沢 で、この放送が始まる前に、永積君が持ってきてくれたMDを、今作ってるものを少し聴かせてもらったんだけど、SUPER BUTTER DOGでは、やっぱりちょっとシニカルじゃないですか。
永積 はい。はい。
宮沢 ね。で、照れもあるんだろうけど、照れ隠しと、わざとズラすっていうか。本音はちょっとしまっておいて、ヒネって、本音も伝わるんだけど。でもやっぱりソロの方は、違うじゃない。
永積 そうですね。もう、ストレートですね。
宮沢 素ですよね。
永積 うん。もうなんだろ、なんかなんでも書けちゃうっていうか(笑)。その、なんなんですかね?
宮沢 使う脳が違うの?
永積 ちょっと違いますね。なんか、キャラクターがやっぱあるような気がしてて、バタードッグの方は。
宮沢 なるほどね。
永積 それをどう崩さずに作るかっていうのを、意識的にじゃないんですけど感覚的にやってる感じはしますね。で、ソロの方もなんか、どっちかっていうと普段の自分ていう感じなんですね。今も自分で作ってて、自分で考え中って感じなんですけど。けっこう恥ずかしいこととかもガンガン言えちゃうんですよね。照れくさいことも。
宮沢 どうしてだろうね?
永積 なんでなんですかね?
宮沢 周りに人がいないからかな? 単純に。ひとりぼっちだからかな。
永積 あぁ……どうなんだろう。
宮沢 やっぱり「バタードッグにおける永積タカシ」っていう、与えられたキャラっていうのがあるじゃない。
永積 そういうのも、どっかであるかもしれないですね。それを無意識に意識してるっていう感じなんですかね。

宮沢 永積君のソロ名義での初の音源が実はありまして。5月22日リリースの『HAPPY END PARADE』というはっぴいえんどのトリビュートアルバムなんですが、永積君がこの「春らんまん」を選んだのはなぜなんですか?
永積 えーと、はっぴいえんどの曲って、むずかしいんですよね(笑)。
宮沢 むずかしいね。むずかしい(笑)。
永積 それで「春らんまん」が一番弾き語りしやすかったんですよ。弾き語りでやるときに、自分ってギター弾きながらだと、歌の方にどうしても気がつくと集中しちゃって、難しいことできなくなってくるんですよ。で、「春らんまん」が一番スリーコードでやりやすかったっていうのが(笑)。
宮沢 弾き語りでやろうとは思ってたんだ?
永積 そうですね。当初から、パッとできるもので作ってみたいって思ってて。それでアイデアを出してくれる仲間をひとり誘おうと思ってて、ポラリスのギター、ヴォーカルのオオヤユウスケくんに頼んで、オオヤユウスケくんちの自宅の台所でレコーディングしました(笑)。
宮沢 へええ。
永積 レコーディングってなると、すごくきちっとしたところで録る、っていう風に決まってるものを、一回全部、取っぱらってみたいなぁっていう発想があって。で、台所でちょっと録ってみようぜって。自分らでいろいろああでもないこうでもないとマイクを動かしたりして録りましたね。
宮沢 空気感がこの曲にぴったりなムードで録れてるよね。
永積 そうですね。

「サヨナラCOLOR」に見る「強さ」

宮沢 いい曲ですよね。あのね、これ聴いてて前に思ったんだけど「永積くんの方が俺より強えな」と思ったんだよね。
永積 え?
宮沢 “さよならから始まることが、たくさんあるんだよ”―――俺、こう書けないもんね。“さよならから始まることが、たくさんあるはずだね”とかなるんだよ、俺が書くと。「あるんだよ」って言えるっていうのはね、強い人ですよ。
永積 いやー。そんな(笑)。
宮沢 うん。そう言っちゃってもいい、言い切れる、言い切ってやっちゃう優しさ、っていうかね。俺はちょっとそこで逃げちゃうかもしれない。「あるはずだね」とかね。そのぐらいになっちゃうかなぁ、と思いながら聴いてました、最初に聴いたときに。いい曲ですよね。
永積 はい、ありがとうございます。
宮沢 たくさん良い曲書いてくださいね。
永積 はい!
宮沢 期待してますから。
永積 (小声で)はい、がんばります。
宮沢 (笑)
永積 ハハハ(笑)。

ゲストコーナーが終了して

宮沢 バンドを続けていくっていうのは、本当たいへんなんですよ。みなさんが思ってる以上に。毎日、顔をつきあわせてね、やってくわけだから。刺激が無いとやっぱり、次の日を迎えたくないなぁ、なんて思っちゃうし。会って楽しくなかったら「なんで俺、音楽やってんだろう?」って思うしね、正直に言うとね。どれだけお互い刺激しあって、アイツと、コイツと出会ってよかったな、っていうような日々を送れるかどうかっていうのは、やっぱり時にはみんなと顔合わせるのをやめたりとかね。で、違うものを見て、その見たものを「あぁやっぱバンドのみんなに見せてやりたいなぁ」とか思うわけだし。今、バタードッグはライヴを休んでると言ってましたけど、その間にいろいろみんなやってるということで、僕の経験から言うと、その後のパワーっていうのが増すんだよね。それ以前よりもね。いいんじゃないかなと思います。永積君もこうやって話してみると、すごく元気そうだし、曲もいっぱい書いてるし。ね。バタードッグの7月のライヴに、ぜひみなさん、いらしてください。

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