いとうせいこう「ミャンマー軍事政権に抗議するポエトリー・リーディング」(2008年4月9日 )

いとうせいこうさんのポエトリーリーディングが、演説が、説法が、あー、なんでもいいや、とにかく彼の言葉がDJ BAKUのビートに乗ってそこまで来たとき、僕らはたまらず立ち上がり、ステージに駆け寄り、ダンスした。声をあげた、手をあげた、少し泣いた。

ボ・ガンボスの日比谷野音、ニューエストモデルの渋谷公会堂でもこういうことがあったなと一瞬思い出したけど、あの瞬間のいとうせいこうさんの、あえて言うならば「挑発」に無抵抗でいることはできなかった。応答する。


映像を観てもらえるとわかるけど、彼の小説『解体屋外伝』(1993年)からの「暗示の外に出ろ。俺たちには未来がある」というフレーズが引用されている。また、後半は、DJ BAKUの最新アルバムにせいこうさんが参加した曲「DHARMA」に繋がっている。

私はここに『善のネーション』の設立を宣言する。
『善のネーション』はありとあらゆる衝動的な善を肯定する。
『善のネーション』は自己の破滅をおそれずに、善を行う。
あたかも悪を行う者が自己の破滅をおそれないように。

最高のアクトだった。一生もの。生涯忘れられないライヴ。もし僕が忘れたら誰でも僕を殴打してよし。
その「声明」は、まったくシンプルなメッセージの反復だ。韻なんかひとつも踏まない。途中までせいこうさんだって椅子に座り、譜面台に貼られた声明を読み上げている。でもそれがビートに乗り、圧倒的な説得力で、僕らに応答を呼びかける。

「暗示の外に出ろ。音楽には未来がある」とも言った。僕は思う。言葉にも未来がある。力がある。パティ・スミスの「PEOPLE HAVE THE POWER」という言葉も連想する。

だから対話せよ! 対話せよ!
そして、対話のためにこそ伝え合え!
言論の自由と、報道の自由はこうして、威嚇と殴打と投獄と殺害を防ぐためにある
対話せよと言い、伝え合えと訴えることは、威嚇と殴打と投獄と殺害の目の前に立ちふさがることだ

(追記) その11年後、2019年のツイート。

(追記) 2021年のアースデイ。



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