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読んでみた → 和田靜香 小川淳也『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』

去年の夏、和田靜香さんが書いた記事を読んで興味を持ち、ドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』を観に行きました。政治ライターではない、ふだんは相撲や音楽を追っかけてる和田さんがなぜ? でもこの国会議員には確かにカメラを回したくなる、文を書きたくなる魅力がある。

その和田靜香さんが約一年かけて衆議院議員・小川淳也さんと話した内容が一冊の本になるという! 政治ライターではない和田さんだからこそ切り込んだ政治本になってるはず。『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』(左右社)

章立てが左右社のサイトに載ってました。
そうか、和田靜香さんと国会議員・小川淳也さんとの「政治問答」なのか。話題は生きづらさ、生活苦、税金、差別、原発、沖縄の基地など多岐に渡る。そしてこの表紙。熱も圧ものっぴきならない緊急性も伝わってくる!

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予告映像もある。このPVは映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』監督らが制作と、これ以上の適任はないね。小川淳也さんとの「政治問答」がどんな様子で行われたかがわかる!

予告編を見て興味があれば、無料公開されてる「はじめに」を。最高のプロローグ。なんといってもいきなり永田町の駅に降り立つのだ。書名通り「国会議員に、直接聞いてみることにした」のだ!

和田靜香さんが約一年かけ対談した小川淳也議員。その人物像を和田さん自身がこちらの記事に書いている。

小川さんは時に筆者のあまりの理解力の低さに、「和田さんに分かるように話すのが至難の業だ」と汗をかき、「和田さんに分かるように話すことは国家的課題だから、政治家がやらなくてはいけないことだ」とまで言い出した。国家的課題?! マジかっ? ブッ飛んだが、政治の何が何やら分からない1ライターが理解できるように語るということは、その先にいる読者という日本に住むあらゆる人々への理解へつながるのはもちろんのことで、国の代表者たる国会議員の小川さんは、主権者である私たち皆へ向け、必死になって全力で、国家が抱える問題、それを一体どうしていくべきか?を語ったことになる。「何が問題か見えること。そこに向かって半歩でも歩き出した時点で最大の解決となる」というのが小川さんの考え方の基本にあるそうで、とにかくまずは問題が何か、それを分かってもらいたいと言い続けていた。

いやこれ、はなから政治が専門ではないライターの和田静香さんだから、帯曰くの「建前なしの政治問答」になったのだろうし、「私激昂。議員号泣。」という、対談相手の小川淳也議員曰く「デスマッチ」になってるんだろうね。

と、ここまでが近所の友人、和田静香さんが本を出すというので興奮気味に紹介した文章。9月4日、実際に手に入れ、読み始め、次第に驚きが増してくる。

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西早稲田のブックカフェ「NENOi」で、和田靜香さんの『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』(左右社)を買いました。本は通りに面した窓側にディスプレイされていました。手に取ると280ページのずっしりした重み。これから読みます。

(p45まで読み)未来を考えるのに例えば人口構成図の推移まで頭に浮かぶ人が政治家で、そうではない人が普通。和田さんがこの本でうまく橋渡ししている。和田さんが「わからない」ので、そこで小川議員が立ち止まって説く。それを「わかる」ように(なった)和田さんが伝える。

読み進むにつれ「橋渡し」だけではないことに気づいていく。

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いま、ようやく付箋の位置まで読み進めた。これから第三章「税金」。「はじめに」で突撃系YouTuberみたいと思った人がいたら反省を。はい、反省します。いや、この授業(対話)に落ちこぼれたら自分はもう一生、落ちこぼれのままだと思い、わからないところを飛ばさないで読んでます。

第三章「税金」を突破しました(最初は読み飛ばしてもいいと、文中にもそう但し書きがあるほど難関)。和田さんが「わからない」立場から国会議員である小川さんにレクチャーを乞うという本書の構図(予想)はここで覆される。ベーシックインカムのくだりでの住宅扶助。和田さんが反論する。

単身女性であり、年齢、収入のことから住まいの不安を長年抱えている和田さんは、住宅問題を最重要な社会問題と認識すべきと。小川議員も考える。ここからの二人の対話が素晴らしい。ここには希望がある。そしてこの対話こそが民主主義であるという気づきがある。正直、ちょびっと泣いたよ。


「先生と生徒ではなく、取っ組み合いで一緒に考える」

第四章「労働」。正規非正規、最低賃金、雇用構造、女性の働く環境。後半は和田さんが小川議員に語る。すごい。足を運んでいた入管法改正案への抗議運動から移民、難民の話も熱く。小川議員から、この対話は「先生と生徒ではなく、取っ組み合いで一緒に考える」ものに、という提案。グッとくる。

第五章「原発」。グレタさんのスピーチから気候変動、環境問題へ。主張が違っても、小川さんは誤魔化さない。「見えないように隠すだけの政治はイヤだ」と正面から話す。

最も心を動かされたのは章終わりのコラム。和田さんの問いに小川議員が示した答えに(帯にもそのときの様子が書かれてる。「議員 号泣。」と)、政治家がみんな小川さんのように人に寄り添う言葉を持っていたらいいなと思えた。本書のハイライトかも。

第六章は辺野古、高江の基地問題から「自分を考える=日本を考える」。民主主義について二人で語る。最後のテーマは幸福について。見出しには「不安をそのままにしないための政治」とある。280ページ、これにて、読了。

和田さんの食らいついていく粘りと成長はすごい。いや、そんな謎の「上から目線」は不要だ。和田さんは最初のインタビュー時、〈小川さんがくりかえし何度も、「あきらめない」という言葉を語り、とても驚いた〉と書いているが、「あきらめない」のは小川さんだけでなく、和田さんもだ。そこにこそ自分も学ばねば。そして、どんな問いにもいつも真摯に受け止め答える小川さんの素晴らしき実直さ(と思慮深さ)。読みながらこちらも成長していくような、稀有な読書体験でした。



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