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快楽革命オデパン(文春文庫)カタクリの花🌸

引用:快楽革命オデパン(文春文庫)

「カタクリの花びらが落ちました」   
庭に出ていた恵美がこちらを振り仰ぎながら、透明感のある淡紫色の花びらを差し上げた。午後の陽射しが恵美の顔を斜めに横切り、縁側の方に長い影を伸ばしている。  
「カタクリほど育ちの遅い花もないですよねえ。種をまいてから花が咲くまで、十年近くもかかるんですから」   
恵美の手の中で、カタクリの花びらはしんなりとしていた。一枚一枚は幅が狭くて細長い向きになった花茎の先端に花がつくため、花弁はそろって外側にそり返る。シクラメンや彼岸花と同じだが、どれよりも清楚に見える花だった。  
「来週にでも、日陰に移しますね」   
真織はうなずき、バルコニーから室内に入った。  
「カタクリが散ったら、もう春も盛りね。十年もかかって咲いて、あっという間に散って、春の盛りには葉まで姿を消してしまう。なんてはかないんでしょ」   

📝
かたくりは多年草で7~8年を用し、花を咲かせるまでには長い準備期間が必要であり、花を咲かせた後も長く生き続け、環境さえ良ければ数年花を咲かせると言われています。

カタクリの花びら
カタクリの花びら

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