時の流れとは

わたしが初めてライブハウスで観たバンドは東京のバンドだった。当時そのライブハウスはお客さんが全然いなくて、そのバンドお目当てのお客さんも5人くらい。でも今では全国ツアーができるほど大きくなって、もちろん箱も大きくなって、歌い方も変わって、もはやわたしの知っている彼らではなくなっていた。
でも、最近、わたしが初めてライブハウスに行ったあの日に初披露していた未だに盤化していない曲の歌詞が公開された。この曲が初めて披露された時は10人くらいしかフロアにいなかったから、その思い出を独占できている優越感と、私たちだけが共有していた唯一の秘密がなくなってしまう寂しさと。

自分だけのものだと思っていたものが実はそうではなくて、なんなら他の人からの方がもっと愛されていて、いつの間にか一歩引いてしまっている自分がいて、そしていつの間にか身を引こうとしている自分がいて。「誰一人置いていかないよ」とか「きみのために」とか「あなたのおかげで」とか言う言葉を聞く度に自分一人だけ置いていかれたような気がして。自分が知っている気になっていた彼らのことなんか全然知らなくて。

元からそんなに知らなかったなと寂しくなる。

「俺らが売れて離れていくのが寂しいってよく言われるけど、俺らが近づいた覚えはないよ」って私の好きなバンドのメンバーが言っていた。とても辛辣だと思ったし、そこまで言わなくても良くない?とも思ったし。でも今思えば、確かに知った気になっているだけで、毎日曲を聴いているから勝手に身近だと思っていただけで、実際大した話してないし、プライベートのことなんかも知らないし、SNSの彼らの投稿を見てプライベートを知った気でいるけど彼らが辛くて悲しくて涙を流す夜なんか知らない。

いつかあのバンドもメジャーデビューをするのかしないのかは分からないけど27歳くらいになったら脱退するメンバーがいて、一人でも欠けたらこのバンドじゃないからとかいって解散して、メンバーの数人は音楽活動続けて、辞めた人はSNSの波に飲まれて消えて。
ずっとそばにいてくれるのが当たり前だと思っていた人が亡くなって。
今仲良くしてる友人もいつか結婚して子供を産んで私の事なんて構ってくれなくなる。

時代の変化が時にとても恐ろしく感じる。
デジタル化で2050年はどうなる!というニュースに心を躍らせる一方、もうこの頃には身近にいるあの人は、テレビで毎日見ているあの人は、もうこの世に存在していないのだろうなあと思うととても悲しくて辛くなる。

抗うことも出来ずただただ受け入れるしかない自分の無力さをとても痛感している。

それでも頑張っていきなければならない。

時に生きる意味を見失う。

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