フリーランスには「キャラクター性」が必要である


よお人類。いつもお世話になっております。月見ねぎとろです。
もひゃ―という変な鳴き声の変な生き物、一応「どらごん」の、月見ねぎとろです。
もっとわかりやすく言うと、「羽鳥ぽぽぽ」ちゃんや「ユメノセカイ」ちゃんの担当モデラーの月見ねぎとろです。
なんか、先のa2seeさんのエントリでVNOS設立の片棒を担いだみたいに言われている事を些か解せぬ…とは思っている月見ねぎとろです。

あ、a2seeさん先のエントリというのはVNOS Advent Calendar 2019という企画に基づく話です。他のアドベントカレンダーとちょっと毛色が違って面白いですね。他の記事も逐次公開されていくと思いますので、ぜひよんでください。

羽鳥ぽぽぽ


ユメノセカイ

……改めて並べると絵のギャップが酷い。


……まあ、a2seeさん先のエントリでは御苑で密会してたとか、延々と飲むタイプとか散々な言われようですが、ぼくは別にお酒が好きなわけじゃなくてお酒が飲める口実があればどこにでも行く生き物なので……酒飲んで話をしましょうと誘われただけで、九州から京都まで移動したり、関西から関東に移動したりをよくしているだけなので……ぼくを呼びつけたい時はお酒をエサにして下さい(?)

まあ、そんな中で出てきた酔っぱらいのたわごとがいつの間にかa2seeさんや他のVNOSのエンジニアさんやデザイナーさん達の力で徐々に形として固まって行き、凄く中身のある技術者コミュニティとして結実した、というのは素直に喜ばしい事だと思っていますです。もひゃー。


とかいいつつ、

ぼくはここまで一度もVNOSの所属です、
と明言したことが無いんですけどね。

まあ、ぼくは月見ねぎとろはフリーランスのグラフィッカーですから、
これに関してはそれこそa2seeさん先のエントリで少しだけ言及していた、エンジニアやグラフィッカーの産業構造に起因するところもありまして…

ぼく自身がフリーランスとして生きているのは、他に漫画家家業があったり、やりたいことがあったりで会社員よりは自由な時間が欲しいからなのですが…。


フリーランスって漠然としたイメージはお持ちの方が多くても、具体的にどういう形で仕事をする人なのかわかりづらい、その割に、VNOSの根幹部分でもある気がするので、ここではフリーのグラフィッカーの仕事の取り方と産業構造を軽く説明させていただこうと思います。

まず、この世にはみんなが知っているようなビッグタイトルなゲーム会社が幾つかあります。
任天堂やスクエニやカプコンやSEGAや…、まあ色々、皆さんもご存知かと思います。

ただ、これらの会社が自社タイトルをすべて社内で内製しているか、というと多くの場合そうでもありません。
ゲームの開発というのは、作るゲームの内容によって必要な人数が変わってきますし、クリスマス商戦や夏休み商戦といった商戦期にリリースしたいとか、新ハード発売に合わせてタイトル数を用意したいとか…。
様々な事情で時期によって開発する量感にばらつきがあります。

そういう事情ですので、企業からしてみれば全て社内で開発してしまうと、
社員に「暇な時期」が出来てしまい、開発のコスパが悪くなってしまいます。

そこで他の「ゲーム開発」を行っている中小企業に開発を委託して、
ゲーム開発の時「だけ」人員をお借りする、ということが日常的に行われています。
このあたりの会社まではゲームそのものにも、開発元とか、開発協力としてクレジットがされることがあります。

で、この産業構造ですが、他業種の類にもれず、孫請け、ひ孫請けというのが延々と重なっています。
ですからその末席にフリーランスのモデラーというのが平然と割り込む余地があるのがこの業界だったりします。

と業界全体を俯瞰したマクロな話はやめて、もう少しフリーランス個人に近い話をしましょう。

仮にスタッフ10名程度の株式会社MOHYAという小企業があるとして話をすすめます。
株式会社MOHYAはゲーム開発を自社タイトルとして開発するほどの社員数はない会社で何ならスタッフの何割かは正社員ですらありませんし、
ひょっとしたらオフィスとは名ばかりの物置しかない会社かもしれません。

株式会社MOHYAのような会社はゲーム業界には星の数ほどあって、
大体何処かのゲーム会社とかから独立した人が建てたりした会社です。
そういう経緯の会社ですのでゲーム業界とはそれなりにコネや繋がりがあるったりして、あちらこちらの開発元に今、人手は足りてますか?と、常々営業をかけていくことができます。
この時の人手の事を「人月」と言います。つまり、1ヵ月人が働く分の労働力という意味ですね。で、開発元であるA社で人月が足りないとなると、そこに、多くの場合はスタッフを丸ごと貸し出します。

ある業種の社会人の方々はピンとくるかと思うのですが、
この貸し出す、というのはたいていの場合、客先常駐という形態です。

守秘義務が厳しいゲーム業界においては、基本的にデータの持ち出しは禁止なので、株式会社MOHYAスタッフを毎日A社に出勤させ、株式会社MOHYAのスタッフはA社で仕事をして帰ります。
これが前述した、株式会社MOHYAにオフィスらしいオフィスがない場合の主たる理由です。
株式会社MOHYAのスタッフは、株式会社MOHYAで働く必要がないのです。

で、株式会社MOHYAのスタッフが足りてるときはそれでいいですが、スタッフが足りない事もあります。そんなときに、株式会社MOHYAが探すのが、

そう、フリーランスです。
フリーランスのグラフィッカー。
フリーランスのモデラー。
つまり、月見ねぎとろです。もひゃー!

月見ねぎとろは自分で言うのもなんですが中々に便利なやつで、
大抵は何処かの酒場のカウンターの隅の暗がりでチビチビと安酒を飲んでおり、
「マスター、ジャックダニエルをロックでアイツに出してやってくれ。」
と酒を奢れば、こちらに視線を向けてくるタイプの荒くれもので、
最初は「失せな!お前のツラなんか見てると酒がまずくなる!」等と唾を吐きかけてきますが、
「俺だってお前に頭なんか下げたくはないが…あんたにしか頼めねぇ炎上案件があるんだ」と言うと、
ニヤリと笑って…「話を聞こうか…」みたいな感じです。
嘘です。大抵のやり取りはメールです。


かくして、守秘義務契約と案件受諾に関するやり取りをつつがなく終えた月見ねぎとろは、ゲーム開発元であるA社に「株式会社MOHYAの月見ねぎとろです!」と挨拶をし客先常駐で働き始めるのです。


ということで冒頭に戻って、これがぼくがこれまでVNOSの所属だよ、と明確に名乗ってはこなかった理由の一つでもあります。
ぼくが所属を名乗る時は原則として現在案件を受けているよ、という意味になりがちなので、VNOSから仕事を受けていないのにVNOSの人を名乗るのはおかしいのではないか?とそいう言うのがあったのです。ただまあ最終的に、VNOSはそれ自体が法人としてではなく、ギルド、あるいはコミュニティとしての形に落ち着いて、法人として株式会社ブイノス(カタカナ表記)というのが別途できたので、そろそろVNOSの所属として名乗っても問題なさそうですが、ぼくがVNOSの名前を最初に聞いた時には、まだそのへんがふーんわりとしていたので…そんなこんなしてたら名乗るのが遅れに遅れてここまで来てしまった、と。
というわけで改めまして、よお人類。VNOSの月見ねぎとろです。

とまあ、そーんなふんわーりからVNOSは色々な試行錯誤の元で徐々に形になっていったのですが、そこは他のライターさんにお譲りしましょう。

それでは、ちょっと話を戻しましょう。
何百、何千というスタッフが関わる開発の現場においてわずか一人の力の大小というのはさして影響しないのですが、小さめの案件や株式会社MOHYAくらいの規模の会社にとって、コンスタントに1人月以上のスペックを出せる人間というのは希少です。
というか下手すると、1人月出せなくても案件毎にガラリと変わる客先でうまくやっていくコミュ力と適応力があるだけで十分希少です。

自画自賛するほどじゃないですが、ぼくもFlashの頃から数えるとなんかもう15年くらいこの業界とはつかず離れず仕事をやってきましたし、
専業ではないとはいえ、3Dモデリングももう10年以上やってますから、2,3年持てばいい方と言われるこの業界では、まあそこまで悪い人材でもないと思います。
(15年前ってお前何歳だよってツッコミ、正解です。今思うとめっちゃ搾取されてました。)
現場で出した最大の人月で3人月強くらいを3ヵ月ほど維持したこともあります。マウス操作、ペン操作が基本の3DCGではあまり時短が出来ないのでなかなか出るスコアじゃないと思いますが、気が付いたら周りの人が出社してこなくなってて…仕方なく…うぅっ…。
以後、ホントに炎上案件専用の人みたいに言われてます。うん。おまえら。やめろ。もひゃあ。

というわけで、どこの業種でもそうだと思いますが、人よりも働ける人は素直に重宝がられます。
これが、先のa2seeさんと新宿御苑の密会で盛り上がった、
「属人性が高く『人』に仕事のかなりの割合が依存するのに、それを評価し報酬に結びつくようなシステムになっていない」
という話です。
こうした構造はa2seeさん曰く、ITエンジニア業界でも同じ、であり、
孫請けひ孫請けの産業構造ですが、会社なんて中身はスルッと入れ替わっちゃうし、守秘義務でがんじがらめで自分がどんな案件に関わったかすら、口にする事が出来ないのが基本です。

これは会社にとっては良い事かもしれませんが、2,3人分の仕事をこなす技術者にとっては、あまり嬉しい状況とは言えません。
また、これは業界の負の側面なので、あまり言いたくない話ですが、A社も過去に何をやってきたか判然としない人物を社内に迎え入れるので色々思うところはあり…時として、入ってきた人をを試すようなことをしがちです。まあA社の管理職も何か理由を付けて株式会社MOHYAへの値切り交渉の材料とか手に入れられるなら越したことはないですし、とりあえず圧迫面接してみたり、あることない事文句付けたり、色々…。酷い所はひどいです。まあ、A社管理職もそれで株式会社MOHYAのスタッフがボロを出して値切り交渉が出来たなら、儲けものですから、やり方はともかくやりたいことはわかります。となると、株式会社MOHYAから仕事を頂いてる身としては、意地でも株式会社MOHYAに損をさせるわけにはいきません。
ですから、フリーランスはなんとかして自衛する能力と、有無を言わせない技術力と、強靭なメンタルと、ぼろを出さないしたたかさと、コミュ力が不可欠になるのです。

と、言うような話は、根無し草の技術職には日常風景で、あまり話題にすら上がることはないはず、だったのですが…。

そんな折に出てきたのが、「バーチャルのじゃおじ狐娘youtuberおじさんのねこます」さん、でした。
これは当時かなり興味深い出来事で、もちろん「のじゃおじ」のキャラクターも面白いのですが、「のじゃおじ」としての活動によって、「ねこます」さんという技術者に興味がわく、という一つの象徴的な事件として、ぼくもa2seeさんも捉えていたように思います。


さて、さっきの自衛の話ですが、ぼく月見ねぎとろは、
漫画家としてちゃんと商業出版で本が出ています、とか。
大学や専門学校で、3Dモデリングの講座をさせていただいております、とか。
TV局に放送用の映像を作らせていただきました、とか
そういった出版社や教育機関とのやり取りの実績が、ある種の自己の証明として大変役に立ってまいりました。

が、しかし、TVで流れた映像や講座はその日限りですし、本も数年たてば絶版になります。
われわれは日々こういう商材というか自己の証明を忙しい合間を縫ってし続けねばならず、それはもう、たいへんです。もひゃー。
自分に興味を持ってもらう、というのは他ならぬ、営業です。

だから、もし「自分自身」を「キャラクター」として、運用できたなら?
「キャラクター」や「コンテンツ」や「芸風」に興味を持ってもらえて、
そこから自分という技術者に興味を持ってもらえたなら?

ゆるふわーと、ふーんわり形になってきたVNOSですが、
元々の起点はそこにあったと私は思っております。

VRやVtuberの技術の発展で、ぼくたちの仕事は変わるのか?
これからのフリーランスには興味を持ってもらえるようなキャラクター性が不可欠である。

…と。どの程度バズるかとかファンがつくかとか売り上げれるかとか、そういうことをさておいて技術的な面だけなら、コンビニでバイトしていたのじゃおじが出来たことなのだし、他の技術者が出来ないハズは無いわけで、需要があるとわかれば手軽にできるソフトとかの技術は発展するし、やり始めるなら今だよね、…と。

まー、まさか、こんなにキャラ然としてるキャラがいっぱい集まるとは思ってなかったけど。

でまあ、ぼくの記事なんで、モデラー志望の学生さんとかが、なんか役に立つ情報はないかとか思ってぼくの記事を読んでても嫌なので、一応役にたつかたたないか解らないけど付け加えておくけど、こういう業界構造だから実力さえあれば就活しなくても全然フリーランスとして業界にもぐりこめるぞい!
まあ、そういう方法があうか合わないかは人それぞれだし、オススメはしないけれども…。


さて、柄にもなく真面目な長文を書いてしまったので、皆さんがちゃんと内容を理解しているかの確認もかねて、

ここで問題です。
ぼくはここまでで何回「月見ねぎとろ」と言ったでしょうか?


キャラクターとしての設定はふーんわりしていてイマイチ固まってないので、名前だけでも覚えて帰ってください。
以上でした。

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