見出し画像

虹色あとがき

こんにちは、月山です。
こちらのブログも随分とお久しぶりですという感じになってしまいましたが、ようやく「虹色のキャンバスに白い虹を描こう」という長編を完結させましたので、今回もあとがきのようなものを記します。

あらすじはこちら↓

『ある理由から美術部を去った高校二年の航は、色弱であることを周囲に隠しながら生活していた。誰からも好かれる自分でいるため、笑顔で物腰柔らかに人と接していたものの、ある日突然現れた新入生・清により、調子が崩れていく。航の絵を見て同じ高校を志した、と語る清。しつこく付きまとう彼女にうんざりしながらも、航は少しずつ本来の自分をさらけ出せるようになる。しかし、彼女もまた色覚障害を患っていることを知り――。
トラウマや過去と向き合いながら痛みを分かち合った二人の青春ドラマ。』



【以下ネタバレ注意⚠️】



今回は初の青春長編に挑戦しました。去年の夏に初めて青春ものを執筆したのですが、その時は中編という長さでお話を締めたこともあって、青春ものを書いたなー!という気持ちがまだ足りなかったというか、もっと書きたいなと思ったところがきっかけだったかもしれません。

月山にしては珍しく、今作はタイトル先行のお話です。もともとこのタイトルで何かしら書きたいと思ってメモしていたのですが、この爽やかさは絶対に青春もののタイトルだ、と己の第六感が言っていました。

私は創作をしていく上で常に考えなければいけないと勝手に自分に課していることがありまして、それが「テーマ性」です。いやもうなんか言うだけで恥ずかしいんですけどもね。すみません、ただのド素人一般人が偉そうに……。
自分が書いたものって少なからず誰かしらに影響を与えてしまうんだな、ということを日に日に実感しまして、それならやっぱり、こんなへなちょこ物書きでも伝えたいことをちゃんと伝える必要があるな!と思ったのです。
難しいとかとっつきにくいとか言われているテーマを、ちゃんと拾っていこう!と常々思っています。

今作のテーマはお分かりの通り、「色覚多様性」でした。書きたいというか、向き合いたいというか、ずっとそういう感じでもだもだしておりました。
青春ものを書くぞ!このタイトルで書くぞ!と決めた時点で、美術部の人たちのお話なのでは?とぼんやり思っていて、そこでこのテーマを取り入れようと固く決意しました。

主人公の航は、私が以前執筆した「能ある狼は牙を隠す」(以下、オオカミと表記します)という作品に登場するキャラクターです。本作は彼を救いたくて書いたお話でもあります。
男の子を主人公にそえるのは初めてだったのですが、このお話のプロットを作成している段階で、絶対に航目線で書いた方がドラマチックだ!と確信したのでこういった形になりました。

正直、オオカミ執筆時は航のことをあまりよく分かっていなくて、「なんだこいつイカれてんのか?」と本気で思っていました。
今作のテーマは決して簡単に扱うべきものではなく、それと同じくらい難しかったのが、犬飼航という人間の思考回路の解剖です。何度もオオカミを読み返しながら、きっと彼はこういうスタンスだな、と自分なりにもう一度落とし込んで書き始めました。随分と世界に対して捻くれた考え方をしていますが、過去パートを書き始めるまではずっと私自身「これちゃんと彼に向き合える?大丈夫?」と不安で、ひょっとするとお蔵入りでは?と懸念していたほどです。書き終えてようやく彼のことが理解できました。

そして作中に登場するスイミーなのですが、このスイミーの名言といえばあれですよね、そう!
「ぼくが、目になろう」

今作は色覚がテーマでしたが、つまりは「目」が一つの大きな指針でした。
実は執筆時、スイミーを例に出したのは本当に偶然というか、私が自分の中で一番印象に残っていた教科書のお話がスイミーだったんですよね。なのでなんとなく採用しただけだったのですが、あとからきちんと調べて上記のキャッチコピーが出てきた時、冗談抜きに泣いてしまいました。これは一体どんな素晴らしい巡り合わせだろう、と思いましたね。

前半はかなり重苦しい感じで、これは爽やかな青春ものと呼んでいいのか……?と疑問が残る展開になってしまいましたが、そのぶん「苦しい」「辛い」「悲しい」といった感情や、人間の負の部分などにしっかりとフォーカスできたかなと思っています。
後半はかなり青春っぽくなったかと思うので!許して下さい!(泣)

何はともあれ、航を幸せにできて本当に良かったなあと今はすごく安心しています。どうしても彼に笑って欲しくて、心から大切だと言えるような人と出会って欲しかったのです。
あんなに捻くれていた彼が、最後に躊躇なく「君に会えて良かった」と伝えた時は私が泣いてしまいました。成長したね、変わったね……。

二人の後日談を書こうかと思っていたのですが、やっぱり余白を残して終わります。
このあと二人がどんな道を歩んでいくのか、関係性に変化があるのか。その部分は、皆様のご想像に委ねます。
これも常々言っていますけれど、キャラクターは私が勝手にエンドマークを打った後も、生き続けていますので……。

そして最後の方に登場したカメラマンのおじさんですが、苗字は適当につけたわけではありません(笑)
実は同じ苗字のキャラクターが以前書いた作品に登場しています。同じように、眼鏡をくいっとしながら。
でもこれは私の個人的なお遊びで自己満足なので、スルーしていただいて全く問題ないです!現時点では!(←?)

さて、思い入れが強すぎてあとがきがとんでもない長さになっていますが、あと一つだけ。
今回のテーマソングは日向坂46さんの「JOYFUL LOVE」でした。歌詞が全体的にぴったりで泣けるのと、MVの衣装が虹色で非常に素敵なので是非!

今作は本当にお気に入りといいますか、思い入れが強くて……。テーマ性もそうなんですけれど、微炭酸(もはや強炭酸)のような青春が書けたかな?と思っていますし、かつて自分が生み出して苦しませてしまったキャラを救うことができたので、ものすごく大切なお話なのです。
そういうわけでして、犬飼航の成長を最後まで見届けて下さった方がいらっしゃいましたら、心の底から御礼申し上げます。

しまった!また喋りすぎてしまった!
こんなお喋りに最後までお付き合い下さり、本当にありがとうございます。画面の前のあなたに幸あれ、BIGLOVEです。

それでは、さすがに終わろうと思います。
また何かのお話でお会いできれば嬉しいです。

2022.03.26

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?