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夏10あとがき

こんにちは、月山です。
珍しく前回からあまり日を経たずしてブログに顔を出したのですが、今回も例に漏れず作品についてお話させてもらおうかなと思います。

「この夏、やり残した10のこと」という作品についてです。
未読の方のために、一応あらすじをば。↓

『高校一年生の遥香は人見知りで引っ込み思案。だけれどこの夏、どうしてもやりたいことがあった。 友達をつくって遊びに出掛けたり、憧れているあの人と時間を共有したり。夏休みを存分に謳歌して、思い出をつくりたかったのである。しかし、彼女にとってそれは大事な意味を持っていて――。
これは、まばゆい、ひと夏の物語。』



【以下ネタバレ注意⚠️】



今回は初めて中編という長さのお話になりました。
もともと長編として書くつもりだったのですが、プロットを練っているうちに「これは短編にできそうだな」と思いまして、結果的に中編になっていましたね。(は?)

それはいいとして、このお話は、結構長いこと温めていたものでした。
青春ものを書きたいな、と思ったのもそうなのですが、やはり夏に執筆したいなというのはすごくありまして、今年の七月はほぼ今作に捧げました(汗)

今作のヒーローである霧島斗和くんは、以前私が書いた作品に登場しているキャラクターです。とてつもなく脇役だったので、普通に読んでいて覚えている方は皆無だと思います。もしお暇があれば、ミッケもしくはウォーリー感覚で探していただければ(?)

そろそろ本題に入りますね。
私は常に、重たいテーマをなるべく親しみやすい味付けをして、いろんな人に読んでいただきたいなあという、非常におこがましいことを考えています。
「命」、「生と死」も重たいテーマの一つですが、いつか書きたいとずっと思っていました。

主人公の遥香が余命わずかである、という設定で当初はプロットを立てておりまして、いわゆる「思い出作り」のお話になる予定でした。
なんですが、それだけだとどうにも軽率だなあ、というか、遥香の命をただ私の創作欲に利用しているだけだなあと思ってしまいまして……。
それにプラスして、やはり読了後に「そうだったのか!」となるような作品を作りたいとすごくすごく思いまして、遥香は既に亡くなっているという設定になりました。

執筆する上で大変だったのは、主人公が亡くなっているため、他の人からのリアクションを得られないということです。
遥香は誰からもその姿を目視されていないですし、その声を聞いた人もいません。もちろん触れることもできません。
基本的に物語というのは主人公と他者との関わり合いで進行していくので、会話も成立しないというのは非常に難しかったです。

作中で遥香と誰かの会話が成り立っているように見えるところがあるかもしれませんが、そこは遥香のセリフがなかったとしても成立するようになっています。むしろ物語全体を通して、遥香の言動がなかったとしても、進行上問題はありません。

たとえばアイスを食べるシーン。ソフトクリームを五個買っていましたが、当然遥香は食べられません。雫が「遥香の分、もらえば」と言っていましたが、薫が遥香の分も食べた、つまりソフトクリームを二個食べた、ということです。
ラジオ体操の公園で出会ったおばあさんに飴を貰うシーンも、おばあさんには遥香が見えていないので、四つしか飴を渡さなかった、ということになります。

その他にも色々と、結末を知った上で読み返すと味わいが変わる要素を各所に散りばめているので、もしよろしければ……という気持ちです(汗)

主人公が成長する、というよりも、主人公を原因にして周りの人物が変わっていく、というお話に仕上げました。
自分の中でとても大事な作品になりましたし、こういったものを書いていたいなと思った夏でありました。

そして今作のテーマソングは、ヨルシカさんの「花に亡霊」でした。
書きながら泣きましたし、書き終わっても泣きました。遥香は既にこの世を去っていますが、このお話を終わらせた時、本当の意味で彼女がいなくなってしまったような気がして、とても寂しかったです。

それとですね、テーマソングとは別に、もうひとつ聴いていた曲があります。
脳内でこのお話を映像化した時、エンドロールに流れるのは絶対にこれだな!となった曲なのですが、これもヨルシカさんで、「雲と幽霊」です。
遥香がいなくなった後、というか、私が勝手に決めたこの物語のラスト以降、薫や他のみんなが強く健やかに生きていく様が自然と浮かびました。きっとみんな笑っていますね。泣くこともありますけれど、きっと元気です。

最後に、タイトルについてお話させて下さい。
物語の中で描いたのは、遥香が「この夏、やりたかったこと」でした。そして最終的に全て「やり尽くしたこと」となって、物語は終わります。
なのですが、客観的に見て、遥香は亡くなっています。遥香の「やりたかったこと」は、「やり残した」状態になっていたわけです。
タイトルを「やり残したこと」にしたのは、あくまでも"亡くなった遥香"は薫たちの中だけでの存在であるという暗示であり、他の人からしたら、「やり残したこと」以外の何物でもない、ということを表したかったのです。
それともうひとつ、一番最初に目に入るのがタイトルですので、読者の方も「やり残したこと」を遥香の視点で、薫たちと一緒に「やり尽くしたこと」へ変えていく、そんな夏を描ければいいなと思いました。

思い入れが強すぎてまた長々とお喋りしてしまいました……大反省。
とにもかくにも、ちょっと切なくて愛おしい夏をお届けできていれば嬉しいなあと思っております。

最後まで目を通していただいた優しいあなた様、本当にありがとうございます。
そもそもこんなところまでお越しくださったのが嬉しいです。いつもたくさん愛しています!

それでは、この辺で終わろうと思います。
また何かのお話でお会いできれば幸いです。

2021.08.27

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