02:将来社会に出て働くつもりの現役外大生に向けた「大人語講座」

<大人語講座の心構え>

「大人語講座にお越しいただき、誠にありがとうございます。大人語講座は事前にご案内している通り、ご参加いただいている皆様が活発に意見交換をしながら、正解が無いところに答えをクリエイティブに創る方法を体得していただく講座です。つまりは講師が一方的に何かをお伝えする類のものではありません。そうは言っても、流石に最低限の自己紹介はしなくてはいけないと思いますので、冒頭簡単に講師の自己紹介をさせていただこうと思います。皆さんと同じ大学を卒業した先輩達が、卒業後どんな人生を歩んでいるか、参考までに面白半分で、リラックスして聞いていただければと思います」

という講師の話から、大人語講座はスタートします。いつもは詳細に卒業後の講師のキャリアを説明していただくのですが、ここは講師が変われば内容も変わりますし、毎回同じとも限りませんので書籍版では割愛します。ただ、全ての講師に共通しているのは、全員バリバリに世界で活躍されているということ。所属組織のトップランナーであること。そして、そのレベルに達するまでに10年近い年月がかかっていること、です。

最後のところがポイントです。トップランナーになれていることは素晴らしいのですが、そこに至るまでに時間がかかりすぎているのです。これは即ち、講師陣は社会の即戦力として卒業できなかったことを表しています。その結果、思うのです。

「あの時、アレをやっておけば良かった」

と。

ある講師は、その「アレ」を現役学生時代に学んでおけば、スロースターターの自分でも10年を4年程度に短縮できた、と語ります。4年というのも長い年月のようですが、言語をやっている皆様ならお分かりのように、仕事にせよ芸事にせよ、技術モノというのはある一定のレベルに達するにはやはりそれなりの時間が必要です。それも、ただ時間をかければ良いというのではなく、正しい方向性の努力と時間が必要になります。多くの講師が、現役学生時代にその努力の正しい方向性というものを誰からも教わらなかったと言います。だから10年近く時間がかかってしまったと。

一方で、講師陣の新卒時代は、10年かかっても良かったんだな、とも言えます。社会がそれだけ長い時間、待っていてくれていたとも言えます。ところが2020年、時代の流れの速さは留まるところを知りません。恐らく4年でも長いでしょう。下手したら、その間に、大人語を話せないというただそれだけの理由で、人材として淘汰されてしまうかもしれません。社会で活躍するための技術、即ち大人語を駆使できるようになるまでの期間は、短ければ短い方が良いです。スピードは重要です。そして限りなくその期間を短くすることは可能です。大人語講座では今の現役学生が新卒時代の講師陣と同じ状況にならないように、これから先の社会で外大生が人材として淘汰されないように、必要なことを全て教え、具体的に必要となってくる技術の習得を目指していただきます。

まえがきでも触れていますが、大人語というのは「正解の無い問いに対してクリエイティブに答えを創る技術」であり、卒業生が考える、社会で活躍するためのノーススターです。

図1

多くの現役学生の主な生活圏は多磨であり、大人との交流が少ないことが災いし、このノーススター、即ち「正解の無い問いに対してクリエイティブに答えを創る技術」という技術の「存在」すらも知覚できていないケースが散見されます。知覚できていないから将来に不安を持ちますし、じゃあどうすればその不安を解決できるのかという解決策も当然見えてきません。最悪の事態として、外国語は話せるんだけど大人語を話せないまま卒業してしまいます。結果、人材として淘汰されるということが起こり得ます。

ちなみに、そんな残念な目に遭ってしまったのは大人語講座の講師陣だけかと言うと、決してそんなことはありません。実は、ちょっと古い調査ではありますが米ギャラップ社の調査ではこんな結果が出ています。

図2

興味深いデータです。大学の経営者は社会の即戦力を育てているつもりかもしれませんが、受け入れる側の企業経営者の肌感とは大きな差があるようです。しかも、大学の卒業が日本よりはるかに難しいと言われるあのアメリカでその状況なのです。実際、企業経営者にはこのギャップを指摘する人達は多く、有名どころで言うとアメリカで生まれたミネルヴァ大学はまさにこの問題意識が創立のきっかけとなっています。日本の有名どころではマッキンゼーの日本支社長を務めた大前研一氏がBBT大学を設立したり、ビジネスの世界で知らない人はいない日本電産の永守重信氏も同様に自分の大学を設立する動きを見せており、やはり同じ問題意識からきています。

もちろん、この手の議論には昔から賛否あるものです。「大学は学問をする場所であって、社会の即戦力になるための場ではない。大学を就職予備校か何かと勘違いしているのではないか!?」という声が、特に大学関係者から聞かれるのは事実です。大人語講座ではそのような言説の存在は当然認識しつつも、それでも社会に出ていく準備を大学でするべきである、という立場を取っています。理由としては、以下のようなデータがあるからです。

図3

大学に進学する人の多くが、というかほとんどの人が、より良い就業機会を期待しているのです。また、日本のデータになりますが、こんなデータもあります。

図4

卒業後、大学以外の組織に就職する人は77.1%と、ほぼ8割というデータです。相当多くの人が、というかほとんどの人がより良い就業機会を求めて大学に進学し、卒業し、実際に就職していくのです。大学って、誰からのお金で経営されてますでしょうか?もちろん国のお金も多いわけですが、社会で活躍したいという志を持つ学生(もしくはその親)のお金と、学生時代にアレをやっておけば社会の即戦力になれたのに…と後悔する卒業生の寄付がかなりの比重を占めているというのは否定できない事実です。だとしたときに、それでも「大学は社会の即戦力になるための場ではない」と言い続けることができるのでしょうか。もちろん気持ちはわかりますし、そういう言説があることは理解しています。そこで「大学は学問の場です」という誰も否定のできない結論で終わってしまうと思考停止になり、何も始まらないですし、今までと変わらない。実際に社会で使い物にならない人材を量産してしまいますから、大人語講座に参加している時間だけは「社会の即戦力を目指す」というところまで、試しに思考を振り切ってみていただきたい、というのが我々の考え方です。つまり、こんなイメージです。

図5

「大学は学問の場である」という考えに固執する人達は「社会の即戦力となるための学びと、大学での学びは両立でき、むしろ相互に良い影響を与える」という事実に気付いていない恐れがあります。実際に社会で働くことで、自分に足りていない学問が何なのかということに気付くことができ、大学での学問がより充実したものになっていくのです。大学での学問が充実すれば、それはそのまま社会で生きてくるのです。リカレント教育が脚光を浴びているのはまさにそのためでしょう。なお、このサイクルを回すための起動スイッチは、論理的に考えれば社会での学びが先になります。このサイクルを回す起動スイッチとして、是非社会で働いている先輩達と沢山話せる大人語講座を活用してほしいのです。

<大人語講座後に受講者に期待する変化>

過去複数回の大人語講座実施の経験上、または受講希望者への各種アンケート結果から、受講者の皆様が様々な不安を抱えて学生生活を送っているということを認識しています。その不安を少しでも軽減することができたら我々としては非常に嬉しいことです。不安が軽減されている状態というのは、以下のような状態をイメージしています。ここでは本講座を受けるにあたって皆様が解決したいと仰る代表的な悩みを記しています。

図6

議論に苦手意識を持っている人もいらっしゃるかもしれません。そもそもなかなかそういう経験を積める場も少なくて不安という話も聞こえてきます。これを否が応でも実感させられるのが就活の場面で、明らかに議論慣れした他大生とのグループディスカッションの場面で撃沈していく外大生は数知れず、です。特に慶應SFCの場慣れ感と頭の回転の速さの前に、外大生は太刀打ちできません。これは実にあるあるで、頷く就活経験者も多くいらっしゃいます。実はグループディスカッションにも理論があります。その理論さえ知っていれば、何も知らないよりはかなり楽に戦えるようになります。この講座後は、グループディスカッションの技術を習得し、積極的に自分の価値を発揮する術を持ち帰っていただきたいですし、異なるバックグラウンドを持つ人達と協業・成果を出す技術を是非習得していただきたいです。ちなみに経済学部、経営学部、商学部といった学部を持つ他大の学生はこのあたりのことは勉強してきています。だから議論慣れしているのです。究極的には場数が必要にはなりますが、少なくとも理論的な部分は是非理解していただければと思います。

学生のうちに外大出身として確実に学んでおくべきことを知りたい、という声も頂きました。これについてはまさに大人語ということになりますが、もう少し今の皆様がお持ちの素養と照らして、外大出身の人間が身につけるべき知識をブレイクダウンして発見していただき、習得への道筋を明らかにできればと思います。

将来に関する不安として、卒業後のキャリアをどう作るか漠然としている、あるいは就活の見通し含め、将来の進路が決まっていないという声。やはり大人語を学ぶことで、自分のアピールポイントの見つけ方を知っていただき、自力で進路を切り開く力を習得していただきたいと思います。

これらの変化は、大人語を自在に操れるようになれば、意識的に起こせるようになります。

<大人語講座のテーマと流れ>

さて、ではどうやって大人語を習得していただくか、というお話に入っていきましょう。繰り返しになりますが大人語講座で習得を目指す技術は「正解の無い問いに答えをクリエイティブに創る技術」となります。そのために「正解の無い問い」を皆様に投げかけ、その問いにグループで取り組んでもらうことでこの技術を体得していただくフローを一緒に踏んでいければと思います。ということで、本日のテーマはこちらです。

図7

受講される皆様が本講座に期待していることを参考にし、有意義だと思われるテーマを選びました。5年後と言えば、1年生は早ければ働き始めている頃です。4年生は社会人生活に慣れ始め、願わくば成果を出し始めている頃です。その時に、皆さんがどんなスキルを駆使しているべきなのか、考えていきます。このテーマの真のゴールは、5年後を見据えて今から取り組むべきことを描くだけでなく、どのようにしたら自分はそれらを実行できるのか?個人としてどのような手段があるのかを考え、きちんと受講後の行動化にまで落としていくことです。

ゴールに向けて、以下のような進め方で参ります。

―外大生の強みと弱みとは?
―5年後の変化の兆し
―5年後の外大生に必要なスキル
―マイアクションプランの策定

この進め方は、大人語を習得すれば自ずと導き出すことができるようになるのですが、最初なので講師陣の方で流れを示している次第です。なぜこの流れなのか、という点については講座が終わる頃にはお分かりいただけるようにしていますのでご安心ください。

では、まずは外大生の強みと弱みの議論に入っていきましょう。

<外大生の強みと弱みとは?>

実は最初の議論に入る前に、リアル講座ではチームビルディングの時間を設けています。グループは初めて会う人達同士です。なので、どうしても最初はぎくしゃくしてしまいます。そこでお互いのことを知っていただくために簡単な自己紹介や、チームビルディングゲームをすることで、議論をしやすい状態を作るようにしています。この数分間で皆さん驚くほど打ち解けます。今回は書籍ですからそのパートは割愛し、最初の議論に入っていきます。

最初の議論は「外大生の強みと弱みとは?」です。この議論の狙いは、

ここから先は

24,230字 / 14画像
多磨という僻地で主専に忙殺され、都会の他大生との交流で自分から社会性が失われていることに気付く外大生は、何を意識して学生生活を送れば良いのか。似た気持ちを味わってきた卒業生達から、現役学生に余すことなくお伝えします。分量は20万字超で、一般的な200ページの書籍2冊分以上のボリュームとなっています。

卒業後すぐに必要となる「正解の無い問いに対してクリエイティブに答えを創る技術(=大人語)」を、世界でバリバリに働く卒業生から現役外大生に教…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?