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青春有你2という沼

ちょっと見てみるつもりがいつの間にか沼に沈んでいた。

よくある現象ではあるが、私にとってそれはとても久しぶりの感覚だった。

学生時代はそれなりに同人活動をしていたおたくだったのに、社会人になってからのこの5年ほどは活動という活動をしていない。

好きだな、くらいはあっても、四六時中そのことを考えては幸福を感じるレベルの沼に落ちることはなかった。

それが、ある時突然、中国のオーディション番組という沼に落ちてしまった。それが青春有你2だ。

その沼は日本では知る人自体があまり多くない。

なぜなら日本語字幕が付いていないからという言語的な問題で、日本語字幕がついていたら絶対に人気が出ると私は思っている。

(英語字幕はある )

私がその番組に出会ったきっかけは、たまたまTwitterを開いたタイミングでまわってきたRTだった。

当時、私は長い間Twitterを開いておらず、そのRTを見れたのは本当に偶然だった。

そのRTはよくあるアイドルサバイバル番組の一部であり、舞台の上の参加者に審査員(メンター陣)が質問をしているシーンだった。

参加者は番組が始まる前、ネットで炎上した女性だった。

彼女はガールズグループにはそぐわない経歴の持ち主だからという理由である。

審査員は、その話を彼女に振った。

それは嫌味的な振り方ではなく、辛かったのでは、という旨だった。

彼女は泣きながらも、批評には負けずに前に進むと言った。そして、それを聞いていたほかの参加者たちが声援を送ったのだ。

女性であるが故の苦しみを、その場の女性が理解し、声援を送る。

ガールズグループのオーディション番組でのその流れに、感動すら覚えた。

「ガールズグループに望まれる女性という枠から出たグループを作りたい」と女性の審査員(メンター)は言っていた。

新しい女性像を作るのだと、自分の魅力をここで見つけてほしいと。

すべてではないが、私はいくつかのオーディション番組を見てきている。

今までとは違う番組だ、と私はそのRTを見て思った。

女性へのエンパワメント性がとても強い番組ではないか、と。

それからすぐ、実際に動画を見に行った。

彼女が言った通り、参加者は個性豊かだった。

ボーイッシュな女性や、まるで幼い子のような女性。強い女性も、甘い女性もいた。

女性のアイドルグループ、ときいてイメージするのとは違う舞台が繰り広げられる。

一つ一つの舞台がとても楽しくて、驚きだった。

何かすごいものを見ているのでは、と思った。

それが出会いだった。


その番組に出会ってから、私の生活は変わった。

学生時代に中国語を勉強し、留学までしていた私は、社会人になってから一切中国語に触れなくなっていた。

5年もブランクがあれば単語などはほとんど忘れているし、聞き取りだってほとんど出来ない状態だった。

それが、この番組に出会ってからは中国語漬けになった。

週に2回、2時間ずつ配信される番組は、もちろんすべて中国語だ。

中国の番組は中国語の字幕がつくから、私はひたすら中国語をむさぼった。

聞いて、見て、情報収集のためにweibo(中国のtwitter)に登録し、ファンの集いに参加した。

1話の時点ではぼんやりだった中国語の理解は、いつの間にかずいぶん向上していた。

ファンの書き込みの意味がわからなければ辞書で調べ、それでもわからなければ相互学習サイトに行って質問をする。

推しの動画を何度も見ては、同時に何度もリスニングをする。

たまに字幕が付いていない短い動画があれば聞き取りに集中し、学生時代にすらあまりやらなかったリスニング練習はかなりの強度になっていた。

朝は彼女たちの歌を聴きながら通勤し、家に帰っては動画をみたり情報収集をしたり。

好きで仕方がない舞台を繰り返し見て、歌詞をノートに書きだして練習する。

彼女たちが懸命に練習する主題歌のダンスを見て、

そんなに大変なの…?と不思議になって生まれて初めてアイドルのダンスコピーをした。

実際難しく(というか覚えられず)挫折しそうになったが、同じことを体験してみたい、という思いで練習を続けた。

1日10分くらいの地道な練習を二週間も続けたころには、1番は踊れるようになっていた。あまりにも小さい成功体験ではあるが、もともと私は出来ないと思ったことはすぐに投げ出すタイプの人間で、また継続して少しずつレベルアップするということも苦手だった。というか一回やって出来ないことは練習しても出来ないというイメージがなんとなくあった。

中国の動画サイトに踊り方を細かく教えてくれる動画があり、それを見てやったのだが、流れてくるコメントは最初の10分で「難しすぎる」「覚えられない」「もうやめたい」といった内容で、海を越えて同じ気持ちを共有しているのだなあと消極的な方向に感動したりもしていた。

それでも推したちと同じ動きをしてみたいというおたくの執念で続けられたこと、成功体験になったことは思わぬギフトだった。

また、踊れるようになったことで推したちのダンスの見え方が変わった。

青2には(というかアイドル文化?)自拍という、一人ずつをアップにした動画があるのだが、今まではそれを見てもかわいいな~くらいの感想しか持てなかった。

それが、自分が苦労して習得(?)した後に見ると、動きのキレや癖、表現の仕方や角度など、各個人の個性を理解できるようになった。

それと同時にメンターとして参加しているBLACKPINKのLISAのダンスのすごさもわかるようになった。


更には、ウクレレを始めた。

理由は簡単で、沼が音楽のジャンルだったからである。

スポーツジャンルにはまればジムへ行くし、外国のジャンルにはまれば外国語を勉強する。推しと何かを共有したいタイプのおたくが故に割となんでもやるが、音楽ジャンルは正直手の出しようがなかった。

絵が描けたら絵で表現できたのに、絵も描けない。

楽器では唯一ドラムは叩けるが叩く曲はない。

中国語で熱く語れるほど達者でもない。

かくなる上は新しく始めるしかないが、ピアノなどはこの年から頑張るモチベーションはない…。

困っているところに出会ったのがTEDの「何かを習得するには20時間かかる」という動画であった。

何かを習得するのには1万時間かかるといわれているが、それはプロレベルの話であって、ある程度のところまでは20時間で到達できる、といった内容で、話者が20時間でマスターしたものがウクレレだった。

ウクレレといえば楽器の中で一番簡単、などと言われたりする、比較的マスターが容易な楽器のイメージがあった。

簡単だからと言ってちゃっちい音色かというと全くそんなこともなく、一時間ほどネットで調べた後、ウクレレを購入した。

ウクレレも一日15分を一週間続けた現在、なんとなく簡単な曲っぽいものが弾けるようになっている。

ちなみにどうしてもやりたいのが、推しがやっていた有点甜という曲だが、調べてみたところ、どうやら割と初歩的なコードで出来るようだ。

歌詞も早口な部分はないし繰り返しが多く、三か月後には出来るようになっている予定である。(続くといいな…)

あまりの熱の入れようにこれが友達だったら正直ちょっと引く。

けれど、それだけ好きになれる作品(番組)に出会えたことにただただ感謝の日々を送っている。


なぜそこまで好きなのか。

とにかく推しが好きで仕方がないというのも理由の一つだが、それ以外にも番組自体がとても好きだ。

青春有你2という番組は、とにかくエンパワメント性が強い。

オーディション番組なのだから出来ない子目立たない子にはバツがつけられるかと思いきや、この番組はそれとは真逆である。

自分らしさや他の人と違ったところを受け入れ、それを自分の魅力にする。

他者の言うことに引きずられず、自分らしくある。

自分の好きなことをする、好きなものを着る。

そんなメッセージが、とにかくあちこちに散りばめられている。

自己肯定とはこういうことなのかと理解させてくれるのだ。

番組の主題歌のセンターの衣装は、ショートパンツだ。

今までのどの番組も、みんなミニスカートだったが、青春有你2では参加者がどちらを着るか選ぶことができる。

それがこの番組の在り方を語ってくれているような気がする。


このタイミングでブログを書き始めたが、番組が始まってから2か月がたち、残りの放送はもう一か月もない。

また、先日の結果発表で一番の推しの脱落が決定した。

推しはグループでデビューすることはないし、今後この番組での新しい姿を見られることも少ないだろう。(週遅れで+αの動画が見られるので、まだ少し新規動画はある)

この番組で初めて彼女達に出会った私にとっては、この番組で見る彼女らの姿がほぼ全てだが、彼女たちの活動はこれからも続く。

長い道のりの中の一部だと、私の推しは言っていた。

その一部を見せてくれてありがとうの気持ちでいっぱいだ。

いつか彼女が舞台に出る時、それがどこであれ見に行けたらと思う。

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