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まるで合宿(人工股関節日記その12)

以前にも書きましたが、私は個室希望でした。
(差額ベッド代を覚悟の上……)


人生初の入院でどんな感じなのか想像できなかったからです。「どんな感じなのかわからない」というのは自分の入院生活そのもの以外に、他の患者さんとの関わり方についても、です。

初めての入院、手術でただでさえ緊張しているのに周りに気を遣わなくてはいけないのか……というのが正直な気持ちでした。
しかも、病院のパンフレットでは「2人部屋」や「4人部屋」もあるらしいのに、よりにもよって「6人部屋」ですよ?
入院手続きの際、目の前が暗~くなったのを覚えています。


さて、そんな大部屋に「新入り患者さん」として入りまして。
最初の数時間はなるべく物音を立てないように、息も潜めてじっとしておりました。

ああ、10日間くらいじっとしていればいいのか……と、半ばあきらめのような気持ちになったとき、お向かいのベッドの方に「ここから夕陽が見えますよ」と声をかけていただきました。

私が入院してこの部屋に来たお昼ごろにはけっこうな雨が降っていました。
しばらく雨が降るのを眺めて過ごしていましたが、夕方になりいつの間にか雨が上がっていました。

声をかけていただくまで夕陽に気付かなかった私。立ち上がって窓の外を見るときれいなオレンジ色の夕陽が見えました。

その濃いオレンジ色の夕陽を見ながら、緊張感がほぐれていくのを感じていました。


声をかけてもらえて嬉しかった。
じっとしていればいいやと思っていたけど、やっぱり誰かと話すのって温かくて穏やかな気持ちになるんだな。


そう思いながら、自分から声をかける、挨拶する、という発想がなかったことに気が付きました。


翌日、手術から戻ってこられた同室の方に挨拶したところ、
「入院中はいくらあっても困らないから」とミネラルウォーターをいただきました。

手術後に滞在するリカバリ室への持ち物として「お水」も自分で用意しておくのですが、そのいただいたミネラルウォーターを持っていくことにしました。

手術後、全身の痛みと熱で苦しい中でも、そのミネラルウォーターを飲むたびに「まだ会ったばかりなのに励ましてもらえたこと」の嬉しさを感じ、頑張ろうって気持ちになっていました。



その後、何人か新しい患者さんが入院され、お部屋がにぎやかになっていきました。
みなさんとても良い方で、お話しするのが楽しかったです。

私は入院も手術も初めてだったので、様々な情報を教えていただけることも良かったです。

2回目の手術の方もいらしたので、「1回目の手術後・退院後にどんな風にリハビリしていったのか、どんな風に生活(仕事・趣味など)しているのか」や「2回目の手術をどう決めたのか」などを詳しくお聞きできたのは本当にありがたかったです。今後についてイメージできるようになったことも安心につながりました。

杖や靴についてどんなものを使っているか、などについてもお聞きできて良かった。
ウェブで検索して調べるよりも、究極の口コミですよね。

「リハビリでこんなことした」と共有したり、痛いとき苦しいときには励まし合ったり、アドバイスをもらえたり、お互いにできることが増えて刺激になったり……。


誰かが「合宿みたいだ」と言っていましたが、本当にそうだなと思いました。
50も半ばでこんな楽しい合宿生活ができるとは!


途中で看護師さんから「個室空きましたが移動しますか?」と2回聞かれましたが、このままで、とお願いしました。
もう個室にする理由がなくなっちゃったから。

しかも「差額ベッド代なし」ですよ?

入院時はお先真っ暗な気持ちでしたが、今思えば個室が空いてなくて私は超絶ラッキーだったのだと、後で夫に話したのでした。

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