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molbio08先生がレプリコンワクチン(自己増殖型とご理解ください)を解説している

自己増幅型ワクチンに関して、少し詳しく説明します。この前紹介した論文のタイトルが「Self-amplifying RNA vaccines for infectious diseases」というものでした。これを直訳すると「感染症のための自己増幅型RNAワクチン」ということになります。そこで、この前のスレッドでは自己増幅型ワクチンと書きましたが、自己増幅型mRNAの構造を見ると、これは自己複製するための要件を満たしています。そのため今後はレプリコンmRNAワクチン、あるいはレプリコンワクチンと呼ぶことにします。レプリコンと言う言葉は「複製するもの」という意味です。自己増殖型と呼んでもいいでしょう。 レプリコンワクチンと言えど、基本はmRNAワクチンです。また感染症用であれば外来の病原性の細菌やウイルスの抗原遺伝子を細胞内に導入することになります。外来のウイルスの抗原タンパク質を産生する細胞は免疫系から見れば感染細胞として認識されます。そのため従来型のmRNAワクチンの問題は解決されるわけではなく、より長期的に副作用が起きる可能性が想定されます。また体液性免疫(抗体を産生する免疫)と細胞性免疫には、いずれも免疫記憶がありますので、免疫が確立した時点以降の抗原産生は不要です。やたらと長期間、抗原産生を持続されることは望ましいことではないでしょう。 また、ブレーキの機構がないのも問題で、長期的にmRNAの複製が持続するようなものを人体に接種することには大きなリスクがあります。エクソソームはmRNAを運搬できることは早くから知られていました。細胞間の情報伝達の仕組みとして最近注目を集めているのがエクソソームです。細胞間の伝播がおきるのは当然ですが、個体間の伝播の可能性が否定できないものを実用化することには強く反対します。

細胞にレプリコンワクチンが導入された後にどのような反応がおきるかについて、少し詳しく説明します。前回紹介した論文のFigure1をもう一度掲載します。Figure1の中央に示されているものがレプリコンワクチンです。アルファウイルスのnsP1-4遺伝子のmRNAと抗原のmRNAが連結されており、これが最初に細胞内に導入されます。細胞内で最初に合成されるタンパク質はアルファウイルス由来のRNA合成酵素であるnsP1-4と抗原タンパク質です。ヒト細胞にはRNAからRNAを合成する酵素はありませんが、nsP1-4、これはRNA依存的RNA合成酵素です。RNA依存的RNA合成酵素とはRNAからRNAを合成する酵素です。 これができあがると、mRNAの複製反応がスタートします。この反応はRNAを複製することになりますので、この酵素はレプリカーゼと呼ばれることもあります。Fiogure1のB)に示されたRNAはそれ自体から翻訳反応、つまりタンパク質合成が可能であり、これはプラス鎖と呼ばれます。プラス鎖を鋳型にして合成されるRNAをマイナス鎖と呼びます。マイナス鎖はプラス鎖を生産するためにもっぱら使用されます。RNAの両端には名前がついており、左側が5‘末端で、右側が3’末端です。この表記はDNAでも同様です。DNA合成酵素、RNA合成酵素ともに合成反応の方向は5‘から3’方向です。したがって最初に合成されるマイナス鎖はプラス鎖の3‘末端つまり、右端から左端に向かって合成されます。このときに必要な配列が3’CSE部分です。この部分にはRNA合成が開始するのに必要な配列があります。マイナス鎖ができると次にマイナス鎖の左端にある5‘CSE部分にRNA合成酵素が結合してプラス鎖の合成が始まります。こうして細胞に導入されたmRNAは複製されて増えていきます。

文字通り、こうしてレプリコンワクチンは増えていきます。問題はこの反応がどのような仕組みでいつ止まるのかということです。RNA合成の量的なコントロールはどうなっているのか不明です。この構造では緑で示されたRdRP(RNA依存的RNA合成酵素)もどんどん増えていきます。抗原タンパク質もたくさんできるのですが、RdRPのたくさんできるため、mRNAの増殖は続いていきます。mRNAがエクソソームによって他の細胞に運ばれると、その細胞でもmRNAは増殖していきます。 RdRPに高温感受性変異を導入して体表付近でしか増えないように工夫しているものもあります。具体的には、体表付近は温度が低いためそこだけで増殖できるものの、温度が高い体幹では増えなくしようというものです。しかし、RdRPによるRNA合成反応はゲノムのDNA複製よりも変異の確率が高いのでRdRPbに導入された変異の復帰変異がすぐにおきるものと思われます。 哺乳類細胞の温度感受性変異株の復帰変異率は10のマイナス7乗程度です。RdRPによるRNA合成反応では、これよりも変異率が高いことを考えると高温感受性変異の復帰株はすぐ出現し、しかも復帰変異株の方が増殖優位性がありますので、すぐ優勢になるでしょう。かくしてブレーキのない複製マシーンは細胞から細胞へと広がっていきます。個体間伝播までおきると悲劇を招くでしょう。抗体がIgG4化されてウイルスを除去できない体になり、むしろ接種することでウイルスに対して弱くなってしまう。このレプリコンワクチンの実用化はすぐに止めるべきだと思います。


molbio08

@molbio08
J Antibiot (Tokyo). 2022; 75(2): 60–71. Published online 2021 Dec 21. doi: 10.1038/s41429-021-00491-6 PMCID: PMC8688140 PMID: 34931048 The mechanisms of action of ivermectin against SARS-CoV-2—an extensive review このレビュー論文の表に次のような記述がありました。IVMの作用機構です。アルファウイルスを含む多様なウイルスのRdRPに結合して阻害するという論文が引用されています。その説明が以下です。 B. Action on host targets for viral replication Level 4: Action as an antiviral IVM has antiviral properties against other viruses including the RNA viruses such as Zika virus (ZKV), dengue virus, yellow fever virus (YFV), and West Nile virus (WNV), Hendra virus (HEV), Newcastle virus, Venezuelan equine encephalitis virus (VEEV), chikungunya virus (CHIKV), Semliki Forest virus (SFV), and Sindbis virus (SINV), Avian influenza A virus, porcine reproductive and respiratory syndrome virus (PRRSV), human immunodeficiency virus type 1 as well as DNA viruses such as equine herpesvirus type 1 (EHV-1) and pseudorabies virus (PRV) この論文のリンクを貼っておきます。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7290143/

Ivermectin: a systematic review from antiviral effects to COVID-19 complementary regimen

molbio08

@molbio08

mRNAをシュードウリジン化しておくと分解されにくくなってしまい長期間細胞に保持されます。シュードウリジン化されたmRNAから複製されるmRNAはシュードウリジン化されていない通常のmRNAと同じ性質を持ちます。したがってコピーされてできたmRNAは寿命は短くなります。それが他の細胞にエクソソームで伝播した時に、分解される速度が速いのかあるいは複製される速度が速いのかで結果は変わると思います。アルファウイルスのRNA合成酵素の複製反応と細胞内のRNA分解酵素の競争になるわけです。 複製阻害は効果はありそうですが、レプリコンワクチンを投与したマウスに事前にイベルメクチンを飲ませておくといった実験結果がないので、現段階では何とも言えません。RNAワクチンそのものが問題の多い技術ですので、研究開発を進める意味はほとんどないと思います。

molbio08

@molbio08

アルファウイルスのRNA依存的RNA合成酵素がなぜ選択されたかというとアルファウイルスのRNA複製酵素はRNA分解酵素による分解にめげずに元気にどんどん複製するからです。というわけで、アルファウイルスのRNA依存的RNA合成酵素を用いるとRNA分解酵素による分解よりも複製の効率の方が高いことは容易に想像できます。したがってエクソソームによって他の細胞に届けられたmRNAはシュードウリジン化されていなくても増殖のサイクルに入ることができると思います。やはり、リスクは高いという結論です。

#レプリコンワクチン
#自己増殖型

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