A.ボイセンJr:カークパトリック・ファンファーレ

アンドリュー・ボイセンJrはイーストマン音楽学院で博士号を取得し、イーストマン・ウィンド・アンサンブルのアシスタントコンダクターも務めた。
イリノイ州の高校バンドの指導を経験し、その後、インディアナ州立大学の准教授を経て、現在はニューハンプシャー大学の准教授としてウィンドシンフォニーの指揮や指導、作曲、管弦楽法などの講義を受け持っている。また、クリニシャン・客演指揮者としても広く精力的に活動を行なっている。
作曲家としては全米の多くの大学バンド・高校バンドからの委嘱を受ける他、クロード・スミス記念作曲コンテストでは、1991年に「アイ・アム」が、1994年には「オベイション」が1位を受賞、2000年にはインターナショナル・ホルン・ソサエティコンテストで優勝するなど気鋭の作曲家であり、日本においても「ジョイライド」「スーザの主題による変奏曲」「ジャズマンの憂鬱」「首なし騎士の伝説」「フレンジー」などの作品を演奏される機会が増えている。2013年、日本管楽合奏指揮者会議(JWECC)より委嘱を受け、モートン・グールドの生誕100年を記念して作曲した、「ディス・イズ・ザ・ドラム」が完成、同年3月31日に東京で初演された。
この曲は、1999年に総工費3000万ドルをかけて落成されたセントラルミズーリ州立大学内のジェームス・C・カークパトリック図書館の落成式のために、同大学より委嘱を受けて作られた。図書館の名前になっているカークパトリック氏は、同大学の名誉卒業生で、ミズーリ州の州務大臣を長年務めた。
フレームドラムの土俗的なリズムに導かれてフルート(楽譜にはティン・ホイッスルでも可としてある)が演奏するメロディは、「ダニー・ボーイ」の名でお馴染みのアイルランド民謡「ロンドンデリーの歌」である。この作品は、この「ロンドンデリーの歌」のフレーズを使用したミニマル・ミュージック(音の動きを最小限に抑え、パターン化された音型を反復させる音楽)で、終盤のクライマックスで「ロンドンデリーの歌」の後半のフレーズを使用した金管楽器によるコラールが始まるまで、ひたすらこの「ロンドンデリーの歌」の前半のフレーズを使用している。これによって曲を通して緊張感を徐々に高めていき、クライマックスの効果を高めている。
この事について作曲者は「推進するリズムと情熱的な金管のフレーズが、演奏者と聴衆を同様にドラマティックにさせる」と語っている
 
 
 
【出版:ウィンガート=ジョーンズ社/グレード4/演奏時間3:00】

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