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アクション審議会って?-鉄強プレーヤーからの問題を解く-後編

※この記事は後編です。前編を読んでいない方はそちらから御覧ください。


6.3つのヒントを頼りに再検証


アクション審議会で出題された際、解答時間の後半に3つのヒントが与えられました。


1.FlopのBTNの戦略は33%高頻度CBか、それとも33%と75%の混合戦略だろうか?それによってBBがx/rするレンジは変わるだろうか?

2.TurnのBBの戦略は33%高頻度Betだろうか、それともハンドによって複数サイズを使うだろうか

3.Riverの時点でお互いのレンジはどうなっているだろうか。そのなかでBBのハンドとして、ツーペアやセット、フラッシュ、ナッツフラッシュなどをそれぞれどうプレイしたいだろうか。複数サイズを使うとしてどのように使い分けるだろうか。Checkや33%を使った場合に、相手にベットやレイズをされたらコールするだろうか、それとも3betしてオールインするだろうか。この場面で、人間のプレーヤーである相手はブラフするだろうか。


実際にこのヒントを踏まえ先程の検証を振り返ってみます。


1.FlopのBTNの戦略は33%高頻度CBか、それとも33%と75%の混合戦略だろうか?それによってBBがx/rするレンジは変わるだろうか?

→先程の検証ではx,33%の設定で検証しましたが、x,33%,75%の戦略に変えて再検証してみます。

再検証前の予想ですが、BBのx/rレンジは変わると思います。同じサイズのbetだったとしても単一戦略のものか混合戦略のものかでレンジ構成が異なるので。ただ、それはあくまで相手の戦略がはっきりと分かっている状態でsolver上での話にすぎないので実際テーブル上で相手の戦略を瞬時に推定することは難しいと思います。また、戦略を組む上でサイズを複数用意して完璧な戦略を取れば得られるEVは増大しますが選択肢が増えれば増えるほど再現は困難となりEVの損失が生まれるので相手は手軽にGTO戦略に似た戦略が取れる簡易戦略を用いるのでは無いかと思います。


○BTN33%高頻度戦略

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・BTN33%bet

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○BTN33%,75%混合戦略

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・BTN33%bet

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・BTN75%bet

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左からRaise/Call/Fold

33%(単一)bet→11.8%/60.7%/27.4%

33%(混合)bet→17.5%/53.1%/29.4%

75%(混合)bet→10.7%/42.6%/46.7%


予想通り同じサイズのbetでもBBの取る戦略は異なるものとなりました。

BTN側は混合戦略を完璧に再現しても単一戦略とEV差は1%(0.06)ほどしかなく人力では再現不可能なバランスだと考えます。仮に相手が混合戦略をとってきた場合はハンドの選定に何かしらのリークが発生しそうです。

1.の結論としては、相手は基本的には単一戦略を取るものと考えます。もし、複数のサイズのbetを用意していた場合は、Exploitの余地がある可能性があり、x/rレンジは相手の戦略、レンジ構成によって変わります。

余談ですが、仮にBTN側の立場であれば相手をExploitするために複数のbetサイズで攻撃するのもアリだなと思いました。(例えば、バリューハンドでのみ大きくbet)


2.TurnのBBの戦略は33%高頻度Betだろうか、それともハンドによって複数サイズを使うだろうか

→先程の検証では1.と同様にx,33%の設定で検証しましたが、x,33%,75%,150%の戦略に変えて再検証してみます。


想定ライン:(Flopx,33%→Turn?)

○BB33%高頻度戦略

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○BB33%,75%,150%混合戦略

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両者の戦略を比較すると、高頻度でCBを打つ戦略よりも複数のサイズを用いる戦略のほうがCheckの割合が高いという結果になりました。複数のサイズを打つ戦略において大きなbetサイズが用いられるパターンが少なく、150%に至っては使用しないと言っても過言ではない割合です。


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前編でもでてきましたが、TurnのEQ分布を見るとナッツ級である左上の部分が互いにほぼ同じであるため大きいサイズのbetはあまり用いいられないのではと考えます。

複数サイズを用いる戦略の中でも、大きなサイズ(75%)はややポラライズした構成となっており、マージナルな部分は小さいサイズ(33%)でのみbetを選択しています。

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高頻度33%と複数サイズ75%に対するBTN側のディフェンスレンジを比較してみると、高頻度33%は殆どFoldしませんでしたが、複数サイズ75%の方は高頻度33%に比べ2倍強Foldしています。サイズが大きくなったのでFoldの割合は上がるのは当然ですが。h無しのトップヒットミドルキッカーやOPEDが主にCall→Foldに変化しています。

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今回BBが持っているAh8dというHandはどちらの戦略でも小さいサイズである33%betが推奨されています。Ah8dがマージナルなHandであるからと予想します。同じAhの中でもGDの付いたA5,A4が複数サイズのbetを用いる場合に大きいサイズのレンジに組み込まれます。

TurnのBBの戦略に関しては互いのEQの分布と、どのようなHandが大きく/小さくbetするのに適しているかを理解していれば、複数サイズに分ける戦略も使用できると感じました。


3.Riverの時点でお互いのレンジはどうなっているだろうか。そのなかでBBのハンドとして、ツーペアやセット、フラッシュ、ナッツフラッシュなどをそれぞれどうプレイしたいだろうか。複数サイズを使うとしてどのように使い分けるだろうか。Checkや33%を使った場合に、相手にベットやレイズをされたらコールするだろうか、それとも3betしてオールインするだろうか。この場面で、人間のプレーヤーである相手はブラフするだろうか。


・前編までのおさらい

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RiverのEQ分布はポラライズしたものとなっている。


・ヒントを見たときの筆者の疑問

Checkや33%を使った場合に、相手にベットやレイズをされたらコールするだろうか、それとも3betしてオールインするだろうか。

→EQ分布がポラライズした場面で小さいbet(33%)を用いることが利益的になる場面があるのだろうか?(ブラフインデュースする時?)

仮にあるのであれば、なぜ複数サイズ(x,33%,75%,150%,AI)の計算をした際に小さいサイズをほぼ使わないのか?


想定ライン:(Flopx,33%→Turnx,33%→River?)

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先程のTurnで複数サイズ使う場合と似たような感じで強い/弱いハンドほどbetサイズが上がり、マージナルに近づくにつれbetサイズは小さくなっていっています。Turnと違う点は、EQ分布がTurnはポラライズしていませんでしたが、RiverはポラライズしているのでCheckの割合も上がっています。ツーペアやセット、フラッシュ、ナッツフラッシュなどそれぞれの強さに応じてbetサイズを決めても良いと思います。


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ポラライズした場面で小さいbetを用いることが利益的になるのか検証するために、BBのbetのレンジ構成をほぼ変えずにサイズを33%に全て変更したものを用意しました。50%以上の頻度でbetするものは頻度100%に、50%未満の頻度でbetするものは頻度0%にしたのでややbet頻度に差異があります。


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EQ分布を見ると分かる通り殆どのBTN側のHandの殆どは負けています。でも、約92%のHandはFoldを選択しません。bet額が安すぎるためにCallEVがマイナスになっておらず5回に1回勝っていれば良いのでほとんど負けていてもCallせざるを得ません。Qh+のフラッシュを持っている場合はバリューのRaiseを選択しています。

BB側も折角ナッツ級のHandをたくさん持っているのに、少ししかチップを奪えないので複数サイズ戦略に比べこの戦略はEVが低いのではないかと予想します。


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ちなみに、先程のbetに対する主なブラフレンジです。身近にいる相手の人間プレーヤーはこんなことやってくるでしょうか?

疑問の答えとしては、極端な例だったが基本的には複数サイズのbetのほうが得られるEVが多そう。あくまで相手がこちらの戦略を把握した上で完璧なGTO戦略で対抗してきた場合の話。相手が互いのレンジを理解せず安いbetに対して過剰に攻撃してくるのであればこういう戦略を用いれば全てのチップを簡単にpotに入れることができそうです。


7.Lillianさんの解説


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主に、「TurnでBTNがどういう戦略を取ってくるのか?」「Riverのb/r戦略の可能性」「RiverのExploitの余地」について解説されてます。

アク審の解答としてはx/c寄りでb33%/fが有力。x/rも悪くないと仰っています。

b33%/fのラインは個人的には通常の検証(前編でやったやつ)だけでは見当もつかなかったラインですが、先程の検証で見る限りAh8dに負けているにも関わらずCallしてくれるHandが多数あるとわかったので有力な戦略だと感じました。

※筆者の解釈によりLillianさんの解説の意図と相違があるかもしれませんのでご了承ください


8.終わりに


1Handのレビューでしたが2つに分けるほど熱心なレビューをすることが出来ました。改めて、問題を提供していただいて使用許可をくださったLillianさんありがとうございました。アク審という素晴らしい文化を教えてくださったWhimsの諸先輩方にも感謝です。

私は当日のアク審でも今書いてあったようなことを理解しながら議論できていた....というわけではなく、当日はずっとわからんなーって首捻ってました。自宅でGTO+を用いてゆっくり時間かけて考えながらなんとか自分なりのレビューを完了することが出来ました。当日紙とペンしかなかったあの場でめちゃめちゃ議論できてた方々は本当にすごいです。

ポーカーで強くなるためには日々ハンドレビューの繰り返しだと思ってます。最初から全て完璧に分かる人なんていませんし、全て分かった気になったらそこで成長は止まってしまうと考えます。日々、わからないことを探しながら、考えながら地道に強くなっていけたらなぁと思ってます。

座学をしていてわからない物事がわかる瞬間も好きですが、普段なんとも思わない物事がわからない物事に変化する瞬間はもっと好きです。そういう物事を見つけるために最近ポーカーやってるまであります。

最後に、長くなりましたがここまでnoteを読んでいただいた方ありがとうございました。

今回はこのへんで。では。


Lillianさんのnoteはどれもとても勉強になりますので興味がある方は是非購入して座学に使用してみてください!



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