カメレオン
ここは「白黒の世界」。
すべてのものが白黒でしかなく、「色」という概念がありません。
1羽の小鳥がいました。この小鳥はその一生に飽き飽きしていました。普段のように空を飛び、食べ物を探している時、ふとあるものが目にはいりました。それは1匹のカメレオンでした。そのカメレオンはこの世界で唯一「色」を持っていて、それはそれは鮮やかでした。小鳥は「なんだこれは」と思い、おそるおそる近づきます。すると、カメレオンが話しはじめました。
「色のある世界にようこそ。」
カメレオンは小鳥の体に触れました。するとなんということでしょう。小鳥の視界には一気に色とりどりな世界が広がりはじめました。小鳥は感動しました。
「なんだこれは。これが世界か!」
空は青く、草は緑、鮮やかな花たちが視界をいっぱいに埋めつくします。そこでカメレオンが言いました。「皆には内緒だよ。もし話したら、君は色を失う。」しかし小鳥はすぐに飛び立ち、青い空を飛び回りました。ある1匹の鳥が「なんだか楽しそうだね」と話しかけます。「聞いてくれよ!」なんと小鳥はすぐに話してしまいました。その瞬間、小鳥からは色が抜け落ちてしまいました。するとその色は世界中に広がりました。小鳥が色を失った代わりに、世界中が色を手に入れました。小鳥は希望を失いましたが、周りから称えられ、1人だけが白黒の世界で幸せに暮らしました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?